2021年6月27日日曜日

「そして、バトンは渡された」に学ぶ仲間外れにされた時の対処法

 



 「そして、バトンは渡された」については、以前にも紹介したところですが、今回は作中でも教訓になると、印象に残ったエピソードについて、重点的にお話ししたいと思います。ストーリーなどにも触れていきますが、ネタバレにならないように、かなり端折って説明します。

 その印象に残ったエピソードとは、主人公の優子が学校で仲間外れにされてしまう場面です。ふとした出来事がきっかけで、優子は友達から無視され、仲間外れにされてしまいます。しかし、優子はこれまでの人生経験がハードですから、多少戸惑う事はあっても思い詰めるということもなく過ごしていきます。その出来事に対する優子の考え方がとても参考になると思いました。小説なのではっきりと項目立てて解説されているわけではないので、私の勝手な解釈ではありますが、ご紹介します。

 友達に無視されても乗り越えていくための3つのポイント

  1. 自分の大事なものに優先順位をつける
  2. 世界を広く捉える
  3. 解決してくれるのはあくまで時間

自分の大事なものに優先順位をつける
 人間が生きていくためには、お金や道具、人間関係、環境、機会など、色々と必要とするものがあります。友達は最上位に位置するほど大切なものだとは思いますが、今、このタイミングで、最優先するべきかどうかは、検討する余地があります。本作品の中で優子は、友達とのトラブルには困りますが、優先順位は目の前の定期テストと割り切り、優先順位の高いものに集中していきます。優先順位をつけることで、友達とのトラブルは自分にとってそれほど大きな問題ではないと認識していくのです。

世界を広く捉える
 これも、上記の内容と被るところはあるかもしれません。人間はあらゆるシチュエーションの中で生きています。家庭での生活をベースに、学校での生活、近所の知り合いとの付き合い、親戚付き合い、SNS上の友達、ソシャゲの中での自分など様々です。例え、学校との友達付き合いの中でトラブルがあっても、数あるシチュエーションの中の一つが炎上したにすぎません。標準的な学生で有れば、家庭と学校が自分のシチュエーションの中で、かなり大きな比重を占めていることでしょう。しかし、その一つが炎上した後となっては、それにこだわることなく、他のシチュエーションの比率をあげていくべきだと思います。本作品の中で優子は、父親の森宮さんから、スタミナをつけていじめを克服するよう、毎日のように餃子を作ってもらいます。そして優子は、学校生活では一人だけど、家庭では深い愛情を注がれるという、シチュエーションに支えられて過ごすのです。学校生活だけで生きている人はいません。学校生活のトラブルが原因で思い詰めるなど、視野が狭くなっていく事が問題のように思います。

解決してくれるのはあくまで時間
 これは、一番大事なことなのしれません。人間関係のトラブルは時間が一番の薬になることです。人間関係のトラブルにおいて、どちらが正しくてどちらが間違っているという事例など存在しません。もちろん、法律的に正しい正しくないとか、倫理的に正しいとか正しくないとかの判断基準は存在し、巷での評価としてあいつが正しい、あいつは正しくないという評価が存在しているのは事実です。しかし、一対一の人間関係において、それが全てを裁いてくれることはありません。結局お互いが自分の言動について振り返り、相手に歩み寄れるようになることでしか、人間関係の修復はできないのです。本作品から優子の考え方を描き抜きます。「同年代が集まる中では、時々、誰も悪くなくても、たいした理由もなくいざこざが起こってしまう。〜中略〜 だいたいのことは、どう動こうと関係なく、ただぼんやりと収束していくのだ。」このように、優子は、相手も自分も責めることなく、ひたすら時間が解決するまで日々を過ごしていくのです。

 いかがでしたか?この原稿を書く際に、何度か本作品を拾い読みしていましたが、何度も物語に引き込まれそうになりながら書き上げる事ができました。また、今秋には映画版が封切りとなるようです。まだまだこれからも話題になりそうな本作品、何度読んでも、素敵な読書体験ができる快作と思います。是非ご一読ください。




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