2020年12月31日木曜日

村上 世彰 生涯投資家 (文春文庫)

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編237日目


 今年もあとわずか、皆さま大変お世話になりました。今年はコロナ禍により色々と史上初が連発しましたが、私も様々なことを始めた一年となりました。筋トレ、ダイエット、七輪、家計の見直し、投資信託と、まさにターニングポイントになる年でした。来年は一年遅れの東京オリンピックの年です。明るい一年になるよう祈っています。


 さて、今日お勧めする本は、悪名高き村上ファンドについて、決してマスコミでは報道されることのない一面に触れることのできる一冊です。


 本書は村上ファンド元代表村上世彰氏ご自身による半生記です。私には、村上ファンドといえば、金のためなら何でもやるという悪役のイメージしかありませんでした。しかし、本書を通じて著者から伝わってくるのは、適正なお金の流れができるように変えないと、日本はダメになるよ!という憂国の叫びでした。


 著者の主張は、コーポレート・ガバナンスと言われる、株式会社であれば株主の利益を最大限に実現できているかどうかにより企業経営を管理監督する仕組みを、当たり前のこととなるように普及する事です。そのコーポレート・ガバナンスを大切にして、株主重視の企業経営を徹底することが、資本のながれをつくり、経済発展の元になるため、日本の未来に絶対に必要と言う事です。


 株価が上がれば株主は当然儲かるため、ファンドを運営する著者が一石二鳥と考え、それを重視するのは当然の事です。しかし、世間には著者の儲けという片方だけに歪められて伝わったため、強烈なバッシングと誤解を受けることとなりました。


 私も著者を金儲けの権化として毛嫌いしていましたが、本書のおかげでそれは自分の視野狭窄によるものだと気付くことが出来ました。


 著者はすでにファンドの運営から離れ、金儲けに責任を負っているわけではありません。しかし、日本の未来を思うゆえの、コーポレート・ガバナンスの導入と金融業界の健全性に対する想いは、昔も今も変わっていない様子が、文章から伝わってきました。


 明日新しい年を迎える今日、ぜひみなさんにお勧めしたい本です。



2020年12月30日水曜日

野口 悠紀雄 「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編236日目


 年賀状を出した後は、いよいよ大掃除の開始です。今日はまず水回りから始めました。そして本棚などの整理に手をつけていきます。本棚の整理はついついパラパラとページを捲り、時間を奪われてしまい終了です。最近はもっぱらkindleで書籍を購入しているので、本棚のメンツは代わり映えしませんが、それでも、手を出さずにいられない。


 さて、今日お勧めする本は、書類や資料を頭を使わず機械的に整理ができる方法について指南するものです。


 本書の主旨は、資料を分類するのではなくて、淘汰が起こるような仕組みを作れば、整理は簡単にできるよ。ってことだと思います。


 書類など資料を整理しようとする時、ほとんどの人は内容ごとに分類して整然と並べようとしてしまいがちですが、著者はそれが間違いの元であると喝破します。そして、書類は使った単位でひとまとめにして封筒に入れ、使った後は本棚の左端にしまう。これを繰り返す事で常に新しい情報が左側、右にいくほど古く不要な情報が固まってきます。


 書類の整理で不要な資料を捨てる時は右から順に捨てていけば常に必要な資料が残るこの整理法を押し出しファイリングと名付け、その利点を説きます。紙の資料だけではなく、パソコンのデータなど、広く情報の取り扱いに話が発展していきます。


 1990年代の本ですが、今でも学ぶべき点も多いと思いますので、ぜひご一読をお勧めします。



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2020年12月29日火曜日

石持 浅海 カード・ウォッチャー (ハルキ文庫 い 18-1)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編235日目


 年末年始の休み初日は、年賀状を書いています。キチンとした人はクリスマス位には出しているのでしょうが、ズボラな私は毎年このタイミングです。最近は出さない人も増えて来ているようですが、私は親戚や恩人、友人に向き合えるこの習慣に豊かさを感じて、やめられません。


 さて、今日お勧めする本は、事件の解決が目的では無い、ちょっと変わったミステリーです。


 本作の探偵役は、労働基準監督署の北川。物語の舞台は塚原ゴムという会社の研究所です。そこは、少ない職員で業務をこなすため、恒常的にサービス残業が行われている部署です。


 ある日、そこで職員が座る椅子が壊れ、怪我をします。労働基準監督署で問題視され、臨検のため職員が派遣されます。それが北川。


 臨検に備える最中に、塚原ゴムの職員八尾が研究所の倉庫で死んでいることが見つかります。


 そこに臨検で訪れた労働基準監督署の北川が、名探偵のように謎を解いていきます。その登場人物たちの発言から真実を見抜いていく謎解きの様子が実に軽妙で楽しめました。


 ミステリーとして、十分面白いのですが、そもそも労災とはどういう事か?会社のためにと思って当たり前にやっている事は実は労働基準法違反じゃあないのか?など、労働基準法の基本がよくわかる、いわゆるタメになる小説です。


 舞台となった塚原ゴムのようにサービス残業を強いられても必死に働いているサラリーマンが現実にたくさんいるだけに、このような小説はもっと読んでもらってもいいと思います。


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2020年12月28日月曜日

荻原 浩 神様からひと言 (光文社文庫)

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編234日目


 今年もあとわずか、今日御用納めという会社も多いのでは無いのでしょうか?今年も色々とありましたが、私の仕事で言えば、長岡に転勤になった事が最大のニュースだったと思います。転勤が決まった時は単身赴任するつもりでしたが、今では新幹線通勤を悠々と楽しんでいます。こうやって、毎日ブログをアップする時間を作ることもできました。本当に便利な世の中です。


 さて、今日お勧めする本は、リストラされそうになっても頑張るサラリーマンを描いた小説です。


 主人公は、大手広告代理店を辞め、「珠川食品」に再就職した佐倉凉平です。佐倉は入社早々、販売会議でトラブルを起こし、リストラ要員収容所と恐れられる「お客様相談室」へ異動となります。


 「お客様相談室」では、クレイマーからのクレームに対して、お詫びセット

を持って、形だけの処理をしているようなまさにオワコン状態の部署ですが、佐倉は公園でホームレスの神様と出会い、その言葉から自分の見方を変えていきます。


 そうして見えて来た、同僚たちの長所に気付き、佐倉は変わり始めます。どんなに不遇な環境になっても奮闘する佐倉を神様は見てくれているのか?お客さんと腐った会社の間に挟まれ頑張るサラリーマンに元気をくれる一冊です。 


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2020年12月27日日曜日

竹内 薫 99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編233日目


 納得のいかない幕切れだったのではないのでしょうか?バスケの全国高校選手権に出場し、順調に勝ち進んでいた新潟県代表の開志国際高が、初戦の対戦校の関係者から新型コロナウィルスの感染者が出たため、主催者から棄権するよう指示され、途中棄権となったそうです。それも、対戦校の陽性者はベンチ入り選手でも監督でもなく、開志国際高の関係者の隔離は不要との事。チームに感染者がいないのに、棄権させられるなんて、酷い話だと思います。


 さて、今日お勧めする本は、科学の常識を鵜呑みにしないよう警鐘を鳴らす本です。


 本書の主旨は、タイトル通り、科学的に説明されている事のほとんどが仮設に過ぎないよ、って言う事です。


 本書では、初めに飛行機が飛ぶ仕組みが実は科学では解明されていないことから説いていきます。そこから、今では常識的に語られている科学的説明のほとんどが仮説に過ぎず、科学的な常識が明日にも覆る可能性を示唆しています。


 そして、天文学などこれまで研究が進んでいく過程で常識が覆る様々な科学的トピックスを紹介して、常識に縛られず新たな仮説を受け止めることのできる、真に科学的な「ものの見方」を理解することを推奨しています。


 何が正しいかどうかには拘らず、科学の歩みがとても面白いと思いますので、ぜひご一読ください。


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2020年12月26日土曜日

久繁 哲之介 競わない地方創生 ―人口急減の真実―

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編232日目


 今日の新潟日報に今年の関越道の立ち往生を受け、NEXCOが躊躇なく通行止めするという対応策を発表したようです。これは本当に歓迎すべき対応策なのか、私は大いに疑問に思っています。大雪が降って、立ち往生したのは道路管理者のせいというのは、一部は正しいようで、反面怖いことと思います。なぜなら本来、そんな雪の日に移動することは自己責任という考え方もあると思うからです。こうやって、世の中は安全性と引き換えに自分の選択肢を放棄していきます。私には辛いトレンドです。

 さて、今日お勧めする本は、地方創生のための地方公共団体の施策をビジネスモデルに還元してわかりやすくダメ出ししてくれるものです。

 本書の主旨は、地方創生はどこにも真似されないブルーオーシャンを目指しましょうという事だと思います。

 本書を通じて語られるのは、「地方創生と地方自治に、ビジネスの基本を活かしたほうが成功すると思いますよと言う主張です。

 成功事例としてあげられた「ますがた荘」は地元の好きなお店だったので、それが全国区のビジネス本で絶賛されている様子は、我が事のようにうれしく思いました。

 一方、地方公務員へのダメ出しには耳が痛いのですが、首尾一貫して語られる顧客目線については大変勉強になりました。役所のとるべき戦略は、大企業向けの効率戦略、いわゆるファストフードの価格競争ではなく、地元の食材や人材を活かしたスローフードのような、人のつながりの価値を売る交流戦略であるべきとのことでした


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2020年12月25日金曜日

有川 浩 フリーター、家を買う。 (幻冬舎文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編231日目


 家計の見直しをガンガン進めていますが、とうとう住宅ローンの借り換えの検討を始めました。キッカケは今借りている住宅ローンの3年固定金利見直しが来年2月にあると銀行からのお手紙。そこに書いてあったのは、年率1.7%。超低金利時代の今、少し高すぎるようです。色々調べてみると、借り換えには諸費用がかかり、安くなるかどうかのラインは借入残高1000万円以上、10年前から借りているローン。私のところは十分検討の余地があるようです。


 さて、今日お勧めする本は、フリーターが一念発起して成長していく物語です。


 主人公は就職先を3カ月で辞めて以来、自堕落気侭に親の臑を齧って暮らす誠治です。最初はダメダメな誠治が、母親の病を機に一念発起してバイトに精を出し、バイト先のおっさんに認められます。そこから、初めて小さな自分と向き合う事ができて、成長していきます。


 その成長の過程がこの作品の肝で、誠治は周りから高い評価を受けても決してダメダメだった自分を見失わず、少しずつ経験を重ねさらに成長していくんです。本当にやりたい事とか、自分が夢中になって取り組める仕事は、目の前の事に一生懸命に取り組んで初めて見つけることができるようです。


 本書から私は、人間の成長に一番大切なものは、客観的に自分や周りを見る力なのだろうということに気づかされました。周りのキャラも暖かくとても良い作品でした。



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2020年12月24日木曜日

高杉 良 小説ヤマト運輸 (新潮文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編230日目


 早くも今日はクリスマスイブですね。平成の時代は23日が祝日でしたが、令和になってからは12月のカレンダーは真っ黒です。うちでは、子供へのプレゼントはいつもネット購入していましたので、この時期の宅配にはお世話になっていましたが、ドライバーの皆さんは今日は家族とクリスマスを過ごせるのでしょうか?大変なお仕事に頭が下がります。


 さて、今日お勧めする本は、宅配業界ナンバーワンのヤマト運輸の社史ともいえる小説です。


 本書では、創業社長の小倉康臣氏と、その長男で二代目社長の小倉昌男が、業界の常識や慣習を打ち破るイノベーションを起こし、今の圧倒的なシェアを確立していく過程が描かれています。


 そもそも、宅配便というサービスがなかったところから始まり、それに宅急便と命名するくだりをはじめ、消費者目線でのサービス開発に心を打たれます。


 しかし、運輸省などとの事業認可をめぐる争いなどその道が決して楽では無かった事、その困難を消費者を思う情熱で乗り越えた事が、本書を通じて改めて知る事ができます。


 ネット社会を縁の下から支える大事なインフラの成り立ちを知るために、ぜひご一読ください。



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2020年12月23日水曜日

佐藤 健太郎 「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編229日目


 コロナの第三波が猛威を奮っており、とうとうGOTOトラベルの停止など、残念な状態になっています。コロナ絡みで8万人が失業しているとの報道もあります。どうも世間では勘違いされているように思うのですが、春先の緊急事態宣言からの行動自粛の要請は、感染者数のピークを緩和する事が目的だったはずです。そして、GOTOトラベルをはじめとするキャンペーンは、コロナによる経済的ダメージが深刻であるからにほかなりません。経済活動を健全化するためには、多少の感染者数増加は許容すべきであり、各国の感染状況から考えても、1日感染者数5万人位に対応する準備が必要だったのではないかと思います。今からでも、感染者数1万人時代への備えを進める検討を始めて欲しいです。


 さて、今日お勧めする本は、リスクに対する日本人の気質について警鐘をならすものです。


 本書の主旨は、リスクは「怖い」ではなく、「どれくらい」と言う問いかけが常に必要だよって事だと思います。


 本書では、日本はゼロリスクという幻想に囚われる「リスク過敏症」に罹っており、それが長引く日本の不況の一因ではないかと警鐘を鳴らしています。


 なぜ、リスクに過敏に反応してしまうかと言うと、リスクがどれくらい危ないのかという、定量的評価ではなく、ただ本能的に怖いという定性的な評価で判断をしているから。つまり、「君子危うきに近寄らず」が金科玉条として取り扱われているからのようです。


 原発事故についても、どのくらい危ないのかという議論がないまま、怖いという世論により、莫大な費用を投じる政策決定がなされてきたそうです。


 本書の結論として、目先のリスクに惑わされてゼロリスクの幻を追うのではなく、ある程度のリスクを受け入れること。本能的判断も重要ではあるけれど、リスクを定量的に捉えて広い視野で判断してゆくことも同じように重要と結ばれています。


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2020年12月22日火曜日

東野 圭吾 赤い指 (講談社文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編228日目


 落語家の林家こん平師匠が、今月17日、誤えん性肺炎のため亡くなったとの、ニュースがありました。笑点で活躍していた頃の元気なキャラクターを思い出し、とても残念に思います。御冥福をお祈りします。


 さて、今日お勧めする本は、老人介護などを含めた様々な親子のありかた(特に親不孝)をつなぎ合わせて一つの事件を描いた小説です。


 ある住宅街で幼女殺害事件が起きます。犯人はメインキャラである前原昭夫の息子です。前原は事件を隠蔽するため、遺体を公園に運びます。事件を捜査する刑事は、本作を含むシリーズの主人公加賀恭一郎です。加賀刑事の追及に、もう誤魔化せないと感じた前原は、認知症の母、政恵へ罪をなすりつけます。しかし、前原の嘘を見抜いた加賀刑事は、そこからさらに少しずつ前原を追い詰めていきます。加賀刑事はどこから事件の真相にたどり着いたのか?


 私は、本作を読んで、この容赦のないストーリー展開と描写から、自分の親不孝ぶりを目の前に突きつけられているような感覚を覚え、かなりショックを受けました。しかしラストはぐらぐらと力が抜けていく様に解放されるところもあり、こんなひどい結末にもかかわらず救いを感じます。親不幸している自覚のある方にお勧めします。ガツンときますよ!


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2020年12月21日月曜日

誉田 哲也 あなたが愛した記憶 (集英社文庫)

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編227日目


 昨夜は、お笑い最大のイベントMー1グランプリが生放送されました。放送中何度もコメントがありましたが、コロナ禍で開催した事には、関係各位のご尽力に本当に感謝です。私は毎回録画して一人都合の良い時に観るのですが、今年は家族と生放送を楽しみました。隣で笑い転げる息子を見て、お笑いは家族みんなで笑って観ると何倍も面白い事に気が付かされました。


 さて、今日お勧めする本は、輪廻転生を扱ったホラーサスペンスです。

 

 主人公は、興信所を営む曽根崎栄治です。プロローグでは、いきなり主人公が拘置所にいるところから始まります。


 本編では、曽根崎の前に、女子高生・民代が現れます。民代は、十九年前に突然姿を消した恋人・真弓が産んだ栄治の娘だと言い、二人の人物を探して欲しいと依頼してきます。半信半疑ながら曽根崎が調査を進めるうち、民代は、調査対象者のどちらかが世間を騒がす残虐な連続監禁殺人事件の犯人だと言いだします。


 そもそも、民代とは何者なのか?親子であるから当然のことですが、出会った当初から真弓の雰囲気にそっくりです。


 最後はページをめくるのがもどかしいほど、のめりこみました。他の読者さんのレビューにもあるとおり、ストーリーが途中である程度分かってしまうのですが、先の読める話をどうやって書き進めていくのか興味深く、かえって物語の面白さを引き立てているようで、震えました。 正直、最後にある描写にはちょっと耐えられませんでしたが。そんなことがあっても読んで良かったと思える作品でした。



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2020年12月20日日曜日

谷川啓司 がんを告知されたら読む本―専門医が、がん患者にこれだけは言っておきたい“がん"の話

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編226日目


 今年はインフルエンザの流行が始まっていないとの事。コロナ対策が思わぬ成果を出しています。私は、インフルエンザは季節的なもので、防ぐことは出来ないと思っていましたが、みんな本気を出して感染症対策をとれば防ぐことができるのだと思い知らされました。


 さて、今日お勧めする本は、ガンについて常識だと思っていた事を覆してくれる本です。


 この本の主旨は、ガンになったとしても、あわてないで天寿をまっとうするように生きることができるんではないか?っと言うことです。


 まず、本書で語られるのは、ガン細胞そのものに痛みや苦痛を引き起こす性質は無いことです。ガンの本質は、役に立たない細胞が異常増殖して正常な細胞の働きを阻害する病気だとの事。ガンそのものが苦痛なのでは無く、正常な細胞が機能しづらくなって苦痛をもたらすとの事。


 しかし、いくらガン細胞が苦痛を引き起こさなくても、命を縮める事は確かです。そのガンに対する三大治療、手術、放射線、抗ガン剤についてそのメリット、デメリットについてもちゃんと教えてくれます。その中で、一番大切なのは、治療の目的だそうです。


 本書の評価が分かれる点は、このガン治療の目的という点だと思います。本書では、ガン治療では、時として完全に治ることを目標に設定しない方がいいと説いています。


 それは、ガンを完治させることが現時点では難しい事から、ガンに侵されていても、完治ではなく元気に天寿をまっとうすること、つまり延命を目的にしてはいいのでは無いかという提案です。


 私は、本書の考えに賛成で、とても良い考え方だと思っています。そもそも、ガンが増えてきたのは、単純に他の病気で死ななくなっただけの話で、ガン罹患と老化は同義と言っても差し支えないようです。


 今はかなり身近となってしまったガンに自分が罹った時のことを想定するためにも、ご一読ください。



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2020年12月19日土曜日

百田 尚樹 フォルトゥナの瞳 (新潮文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編225日目


 今日の未明、近所で火事があり、一人暮らしのおじいさんが亡くなってしまいました。巻き上がる火の粉や、炎の勢いに、あらためて火事の怖さを感じました。風は強かったのですが、延焼が無かったのが不幸中の幸いでした。寒い夜、懸命に消火にあたった消防の方々に感謝です。


 さて、今日お勧めする本は、人の死を知る能力をめぐる小説です。


 本作のテーマは、自分の生命は他人のために使うべきか?という事だと思います。


 主人公は、町工場で働く木山慎一郎です。慎一郎は、幼い頃に家族を火事で失い、友人も恋人もなく、 天涯孤独の身で日々過ごしています。


 しかし、あることから他人の死の死期を視る力を持っていることに気が付きます。慎一郎はその能力を活用して何人かの生命を救う様になりますが、それと比例して自分の身体が不調になって行きます。


 そして、ある日自分と同じ能力を持つ黒川という人物に、人の生命を救うたびに、自分の生命が犠牲になることを知らされます。他人の生命を救うために、自分を犠牲にすべきかどうか?慎一郎は、過酷な選択を迫られます。


 感涙のラストに向けて一気読み必至の傑作です。ぜひ、ご一読ください。

 


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2020年12月18日金曜日

渡辺 京二 黒船前夜 ~ロシア・アイヌ・日本の三国志

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編224日目


 関越自動車道では大雪の影響で16日発生した車の立往生が続き、今も解消する見通しは立っていないそうです。一時はおよそ1100台が、立往生したとの事ですから、大変な事だと思います。ドライバーの方々の身体が心配です。


 さて、今日お勧めする本は、北海道から樺太など北の日本史です。


 本書では、18世紀から19世紀にかけて、開国前の日本とロシア、そして両者の間にたつアイヌとの交流譚を史実をもとに伝えてくれています。開国などと言うと、アメリカ、イギリスなどとの歴史は習うのですが、北の方面は習うどころか、知識の空白域になっている方もいるのではないでしょうか?私も本書を読んでその事に気が付きました。


 北海道、千島列島、樺太、アリューシャン列島と広く分布していたアイヌ民族がロシアや日本と交易することで暮らしを成り立たせていたという事や、18世紀始めにはロシアと友好的な国交が開かれる可能性があったという事は興味深い話でした。


 日本の成り立ちを知るためには、必要な内容だと思いますので、ぜひ、ご一読ください。


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2020年12月17日木曜日

朝井 リョウ 何者 (新潮文庫)

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編223日目

 プロレスラー木村花さんがSNSで誹謗中傷された後に死去した問題で、警視庁はツイッターで中傷する投稿を繰り返したとして、侮辱容疑で、大阪府箕面市の20代の男性を近く書類送検する方針を固めたそうです。SNSでの言動が罪に問われる時代になってきました。あたりまえのことですが、匿名であろうが、ネット上であろうが、節度のある言動が求められているようです。


 さて、今日お勧めする本は、就職活動中の学生たちを取り上げた小説です。


 本作の魅力は、登場人物それぞれからのお互いの見え方とその関係性についての考察が生々しく表現されているところです。


 登場人物は、就職活動を目前に控えた拓人、同居人・光太郎、光太郎と別れた瑞月、瑞月の留学仲間・理香、理香と同棲中の隆良の5人。


 5人は就活対策として集まるようになるのが物語の流れですが、SNSでの投稿や、面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、少しずつ披露されていき、最後には大喧嘩になってしまいます。


 最後に明かされる秘密が、今の時代ならではのちょっとした怖さがあって、面白かったです。SNSも取り入れた快作です、ぜひご一読ください。

 


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2020年12月16日水曜日

ジャック・ロンドン 他2名 火を熾す (柴田元幸翻訳叢書―ジャック・ロンドン)

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編222日目


 ほとんど雪の降らなかった昨年とは違い、いつもの冬が戻って来た様です。長岡では12月から大雪になっています。やはり雪が降ると寒さの質が違うように思います。


 さて、今日お勧めする本は、ジャックロンドンの短編集です。


 この作品の魅力は、生きることの生々しさが伝わってくるところです。


 本書には、以下の9篇が掲載されています。雪やボクシングの話がほとんどです。

火を熾す|To Build a Fire 

メキシコ人|The Mexican 

水の子|The Water Baby 

生の掟|The Law of Life 

影と閃光|The Shadow and the Flash 

戦争|War 

一枚のステーキ|A Piece of Steak 

世界が若かったとき|When the World Was Young 

生への執着|Love of Life 


 9つの作品に共通しているのは、とにかく生きるために戦っていること。表題作「火を熾す」では、雪のユーコン川を一人で行く男が、雪を踏み抜き、足を濡らしてしまいます。このままでは、凍傷となり動けず死に至るので、火を熾し乾かそうとする話です。この単純なストーリーがめちゃくちゃ面白く、深い作品となっているのですから、小説の面白さの原点があるのではないかと思います。


 生きているということは、死なないこと、死に抗い続けることという事に気付かされました。なぜなら、今の日本は死に直面することがあまりに少なく感じるからです。死んでるみたいに生きたくない人やこの世が生きづらい人は、まずこの小説を読んで、生と死のダイナミックなコントラストを感じてほしい。そして冬のユーコン川をひとりで歩いてみてほしい。たぶん死ぬけど・・・。



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2020年12月15日火曜日

畝山 智香子 ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想(DOJIN選書28)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編221日目


 新潟日報によると、新発田市の東小学校が、本年度の学校給食表彰で文部科学大臣賞を受賞したとの事です。本年度は、12校受賞した内の一校との事ですから、大変めでたい話だと思います。最近の給食は、私が食べていた頃とは違い、地場食材を活用し、米飯が増え、郷土料理なども取り入れるなど、食育に取り組んでいるそうなので、ありがたい事だと思います。


 さて、今日お勧めする本は、食品の安全基準について、学ぶことの出来る一冊です。


 この本の主旨は、食品の安全性に関するメディアの情報はあてにならないので、煽られない様気を付けて、って事だと思います。


 本書では、残留農薬、食品添加物、発がん物質について、それぞれどんな影響があり、食品として安全とされる基準値がどのように決められているかを、詳しく解説しています。


 特に食品添加物については、安全に流通させるために使用しているものがほとんどなのですが、悪いイメージを持っている消費者が多い事。天然の食品が安全である様に有り難がられているが、実は危険な物もあることなど、著者は訴えています。


 食品に限った話ではありませんが、根拠が歪められ、ニュースとなる様な話には、気を付ける必要がありそうです。


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2020年12月14日月曜日

ひすいこたろう あした死ぬかもよ?

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編220日目


 私は今日誕生日を迎え、いよいよ50代に突入しました。孔子は50にして天命を知ると言ったそうですが、私にはまだ何が天命なのかわかりません。考えてみれば、藤井聡太二冠だって天命は知らないでしょうし、イチローも、ホリエモンも、知らないかもしれません。やっぱりね、「あともうちょっとで、俺も死ぬんだよな〜」って、終わりを自覚するところから、天命を知る事につながって行く様に思います。


 さて、今日お勧めする本は、死を自覚した生き方を勧める本です。


 本書の主旨は、死を遠ざけるのではなく、死と向かい合う事でかえって人生を豊かにすることができますよって事だと思います。


 誰しも、自分が明日死んでしまうかもしれない可能性は、否定できないと思います。それでも、なるべくそう思わず、死を遠ざける事により、人はのほほんと生きる事ができるので、殆どの人はそちらを選んで生きています。


 のほほんと生きた結果、死を前にして後悔する事の無いよう、死と向き合うために、著者は27の質問を投げかけて来ます。


 なぜなら、死をやみくもに恐れるのではなく、死を活用するためです。そして、死は、生を完全燃焼させるための、最高のスイッチにできるそうです。


 27の質問のうちで、私のお気に入りは、「自分のお墓に言葉を刻むとしたら、なんて入れる?」と、「あなたが両親を選んで生まれてきたのだとしたら、その理由はなんだろう?」の二つの質問が良かったです。


 自分の人生をブーストさせるために最適な一冊だと思います。ぜひ、ご一読ください。


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2020年12月13日日曜日

鈴木 るりか さよなら、田中さん

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編219日目


 以前紹介した、『ミッドナイト・バス』の映画が、29日にBSNで放送されるそうです。小説も良かったのですが、映画も県内ロケでいろいろなところが映っていて、すごく良かったので、テレビ放送も楽しみにしています。


 さて、今日お勧めする本は、中学生で作家デビューした鈴木るりかさんの小説です。


 この小説の魅力は、母子家庭でもビンボーでも幸せに生きる主人公花ちゃんのお母さんのセリフが前向きで、優しさと強さが伝わってくるところです。


 本作は、作者が「12歳の文学賞」を受賞した作品を改稿、書き足したものです。主人公花ちゃんとお母さんの母子家庭を中心とする連作短編となっています。


 花ちゃんは、「Dランドは遠い」(作者の初めての作品)で見せた健気さが素晴らしい。友達に誘われたDランドに行きたいのですが、フリーパスは6千円もします。花ちゃんにはお小遣いもお年玉の貯金もありません。そこで、友達と違い塾に行っていない花ちゃんは、有り余る時間を使って自動販売機の釣り銭拾いを始めます。一週間かけて180円しか得ることの出来ない花ちゃんの結論が素晴らしい。


 お母さんは、女手一つで花ちゃんを育てています。真っ黒に日焼けして、土木作業員として働いています。肉体労働からか、犬のようにご飯に食らい付き、たくさん食べても痩せています。そして、学歴はいまさらつかないけど、教養は後からでも身につくと、新聞をよく読み、新聞に書いてあることを絶対的に信じています。好きな言葉は「元が取れる」「買えば高い」「一山当てる」。


 一番のお勧め、最終話「さよなら、田中さん」では、そのお母さんと花ちゃんが、花ちゃんの同級生三上君が橋の上で思い詰めていたところを晩餐に誘います。スーパー激安堂で半額になっていたお惣菜で、ささやかなパーティーです。その時のお母さんのセリフが良かった。「悲しい時、腹が減っていると、余計に悲しくなる。辛くなる。そんな時はメシを食え。そして一食食ったら、その一食分だけ生きてみろ。それでまた腹が減ったら、一食食べてその一食分生きるんだ。そうやってなんとかしのいで命をつないでいくんだよ」


 何度も、涙腺を刺激される素晴らしい作品ですので、ぜひ、ご一読ください。


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2020年12月12日土曜日

伊坂 幸太郎 火星に住むつもりかい? (光文社文庫)

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編218日目

 新型コロナの感染拡大による医療逼迫に対応するため、自衛隊の看護師と准看護師計7名を大阪府に派遣するとの事です。あまりにも少ないと思って調べると、全国知事会からも20人規模で大阪と北海道に応援を出しているとの事。それにしても、全国で120万人も看護師は働いているわけですから、数十人規模の人員派遣の効果が、私には理解できません。いま、医療現場で何がどのように逼迫しているのかは、全く報道されていないのと同じだと思います。

 さて、今日お勧めする本は、昨日に引き続き、伊坂幸太郎さんの小説です。

 この作品のテーマは正義と偽善についてって事だと思います。

 この作品には平和警察と言う、戦時中の特高警察の数倍ひどい組織が登場します。平和警察は日本の治安を守るため、適当な人物をテロリスト等の危険人物としてでっち上げ、拷問して自白させ、見せしめのため公開処刑を行うイカれた組織です。中世の魔女狩りのように、目をつけられたら処刑されると言う状況が続きます。

 実際、平和警察の成果か、犯罪率も下がり、人々もひどい平和警察を容認するようになります。

 しかし、その平和警察に捕らえられた(無実の)危険人物を助けるライダースーツの男が現れ、そのライダースーツの男を捕まえようとする平和警察との対決と言った話になっていきます。

 物語の中盤から、そのライダースーツの男の自戒になっていくのですが、そこで出てくるのが、正義と偽善と言う問題であり、全ての人を救えないのは偽善であり、自分は正義のためではなく、違う意義により決めたルールで人を救うこととします。なぜなら、彼の祖父や父がたまたま行った正義に対して、偽善と非難される事を恐れ命を失った過去があるからです。また、彼の平和警察への抵抗も、たまたま人を救っているだけで、強い正義感に基づく行動ではありません。

 平和警察とライダースーツの男の対決はどんな結末を迎えるのか、作者が描いた驚きのラストシーンまで、一気読み必至の作品となっています。

 私は、作者がしめす、偽善に対するよい意味でのこだわりを感じ、強く共感を覚えました。曰わく、偽善だ偽善だって騒ぐ人はいわゆる良さそうな行いが鬱陶しいだけなんだと。

 確かに人の行いを善だ偽善だと論評するような輩には、善行は期待できないし、偽善となじられることを気にしていては、いざ人のために動くべき時に動けないのではないかと思いました。

 警察が魔女狩りよろしく恐怖政治を行うという、ハチャメチャなストーリーの中で、正義、偽善、生と死など、読書に問いかけられた命題は重いと感じました。


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たんぽぽレストラン 胎内市本郷 

 今日のお昼は、胎内市本郷のたんぽぽレストランで、キンキの煮付けチキンカツ定食を食べて来ました。

 このお店には先週末初めて来たのですが、息子のリクエストで2週連チャンする事になりました。キンキの煮付けが最高に美味しかったです。
地元で人気のお店なのか、お客さんの年齢層は高いのですが、ひっきりなしにお客さんが入ってきます。GOTOイートお食事券も使えるので、助かります。
^_^

キンキの煮付けがプルプルで最高。

 
煮付けとチキンカツの定食850円です。向かいは、ヒレカツ定食180g 1340円


こちらは、先週食べた、モツ煮定食750円

テーブルにコンロも付いていて、焼肉も焼けるようです。

カツの定食は100gと180gから選ぶ事ができます。

2020年12月11日金曜日

伊坂 幸太郎 サブマリン (講談社文庫)

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編217日目


 新聞で読んだのですが、児童手当について、世帯主の年収が1200万円以上の場合は支給をやめるそうです。これは、2022年10月支給分からとの事で、政府はこの浮いた財源を待機児童解消に向けた保育所整備に充てるとの事です。私は、どれだけいるかわかない年収1200万円の人には申し訳ないけど、こう言う改正なら大歓迎です。


 さて、今日お勧めする本は、以前紹介した、『チルドレン』という作品の続編です。


 前作にも増して、型破りな家庭裁判所調査官の陣内が家庭裁判所に送致されてきた犯罪少年たちに対して、痛快に喝破しまくりです。


 陣内は、一筋縄ではいかない犯罪少年に「お前があからさまに法律違反をしているのが分かったら自分たちが叱られるから、表面的にいい子にしていろとは言いにくいけど、頼むからいい子にしてろ」と、言っちゃうような人です。


 最近は、少しでも法に触れた行為が世間に知られると、ネットで袋叩きにあうような、了見の狭い世の中になってます。そんな過剰反応とも言える世論に流されないためにも、陣内のはちゃめちゃな屁理屈に付き合う事は、とても大事な事に思えて仕方ありません。


 本書も前作からブレることなく、少年と犯罪と正義と世間について独特の考え方が展開されていく、爽快感を味わうことが出来ました。


 マスクをしていないと叱られるような、面倒くさいこのご時世。ぜひ、皆さんもこの爽快感を味わってほしいと思います。


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2020年12月10日木曜日

NHK取材班 NHKスペシャル 生活保護3兆円の衝撃 (宝島SUGOI文庫)

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編216日目


 75歳以上の高齢者が医療機関で払う窓口負担の1割から2割への引き上げを巡り、対象者を単身世帯で年収200万円以上とすることで菅義偉首相と公明党の山口代表が合意したとの事です。所得上位30%の約370万人が該当するそうです。先日紹介したお金の大学では、日本の医療保険制度は世界一だから保険は要らないと書いてありました。今回のニュースは、一見高齢者が大変なように見えて、やはり手厚い社会保障の状況が見いたように思いました。


 さて、今日お勧めする本は、一時世間を騒がせた、生活保護についてのルポタージュです。


 この本の主旨は、国の税収の10分の1に迫る生活保護について、国民全体がちゃんと知っておくべきでは無いか?って事だと思います。



 生活保護受給者が2011年7月で過去最高の205万人と過去最高を記録。生活保護費への予算は国の税収40兆円の10分の1の4兆円に迫っています。


 生活保護受給者の中には、高齢者でもなく怪我や病気で働けなくなったわけではなく、働く力がありながら生活保護を受けているという人たちが25万世帯もあるという。


 働く事が出来ず、生活する事が困難な生活保護受給者は大半でしょうが、中には?と思われる人もあるそうです。


 例えば、派遣切りなどで仕事を失った人が次の仕事になかなかつけず、生活保護を受け始めると何もしなくてもお金が貰えるので再び働こうという気力が起こらず、その生活から抜け出せない人もいるとの事。


 本書を読んでいると、明らかに制度設計とその運用のミスでは無いかと思うところが、多々あります。セーフティーネットと言うより、まるで蜘蛛の巣のようで、一度嵌ると抜けられない制度のようです。


 センセーショナルに書いてある事は話半分にしても、知る事は大事と思います。ぜひご一読ください。


 








2020年12月9日水曜日

東野 圭吾 天空の蜂 (講談社文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編215日目


 2030年前半、ガソリン車販売禁止と言うニュースがありましたが、これは政府が正式に発表したものではなく、経済産業省の施策の一部がメディアに漏れたというのが事実のようです。あと10年ちょっとで、こんな大変革が起こる事は難しいとは思いますが、世界的な潮流には逆らえないので、注意は必要かと思います。まずは電力供給ににいての議論が必要だと思います。


 さて、今日お勧めする本は、ベストセラー作家が描く、原発問題に関する小説です。


 本書の主旨は、反原発も原発推進も互いを批判してばかりでは、悲劇しか生まないよ、お互いを許容する事から始めなければ解決の糸口は見つからないよ、と言う事だと思います。


 あらすじは、テロリストにより超大型特殊ヘリコプターのコントロールが奪われます。テロリストは、そのヘリコプターに爆薬を満載し、稼働中の原子力発電所の真上で、無人操縦でホバリングをさせます。テロリストの要求を拒絶したり、ヘリの燃料が尽きると、原子力発電所が爆発して、放射能汚染が広がる大惨事となります。日本国民すべてを人質にしたテロ行為です。この事件解決の中で、原子力行政に振り回された人々が浮かび上がってきます。


 作中、犯人からのメッセージには「沈黙する群衆に、原子炉のことを忘れさせてはならない。常に意識させ、そして自らの道を選択させるのだ」とあります。私はここで反原発か原発推進か選択して終わりとはせずに、常に自分の選択の正当性を問い続けながら、相対する立場の人を許容するロジックも同時に育む必要があると感じました。



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2020年12月8日火曜日

ジョージ・S・クレイソン 他1名 バビロンの大富豪 「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編214日目


 PayPayがハッキングされたとの報道がありました。加盟店の名称、住所、代表者名など2000万件超の情報が流出した恐れがあるとの事です。一方、一般ユーザーの個人情報は流出していないという事なので、かすり傷にも満たない事件に思いますが、どうなのでしょう?だから、ネットは危ないなどと後ろ向きにならない方が賢明な事と思います。


 さて今日お勧めする本は、先日紹介した、漫画の原作です。その中でも触れましたが、しっかり紹介しておきたいと思いました。


 この本の主旨は、バビロンの大富豪の教えは、お金を増やす魔法ではなく、倹約と勤勉を勧める人生訓。って事だと思います。


 漫画の方にもあった、大富豪の7つの教えとか5つの黄金法則とか、キャッチーなのは否定しませんが、この本はお金の事だけで終わる内容ではないと思います。私は大きく三つの教訓を得ました。


 最初の教訓は、自分の収入の9割の支出で生きる事。これは前回も説明した通り、有名な教えです。貯金だけではなく、その範囲で倹約して生きる知恵が大事です。


 次に、本当に信頼できる人を見極め、その人を活用する事。これはいろいろな書き方がされています。例えば、うまい儲け話に騙されるなとか、その道のプロに投資しろとか、金持ちのやり方を真似ろとか、とどのつまり、人間関係を大切にしましょうと言う教えと私は理解しました。


 最後は、勤勉である事が最大の財産である事。本書は、九つの短編からなっているのですが、それぞれの主人公は、楽して儲けているわけではなく、必ず苦労をしています。逆境から這い上がるのは、結局勤勉であることしかないよ。と言う事が著者の一番のメッセージだと思います。


 前回の漫画でも教えの概要は掴めますが、やはりこの作品は原作に触れてほしいと改めて思いました。漫画では、いろいろ端折られている大切な箇所が多いのです。漫画より、昔話のような寓話っぽい感じが増して、教えもありがたく感じます。

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2020年12月7日月曜日

エドワード ハリソン 他2名 夜空はなぜ暗い?―オルバースのパラドックスと宇宙論の変遷

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編213日目


 「はやぶさ2」の、小惑星の砂が入っているとみられるカプセルが、オーストラリアで回収されたそうです。日本の技術力を世界に見せつける、大きな成果だと思います。素直に嬉しい。


 さて、今日お勧めする本は、夜空が暗いという一見当たり前のことから宇宙論の変遷を説く、一冊です。


 なぜ夜空が暗いのか?オルバースのパラドックスから考えるとなんとも不思議な現象だからです。オルバースのパラドックスとは、「宇宙の恒星の分布がほぼ一様で、恒星の大きさも平均的に場所によらないと仮定すると、空は全体が太陽面のように明るく光輝くはず」というパラドックスです。


 乱暴かもしれませんが簡単に言うと、星の数が無限にあるのなら、空一面に星があり、夜空も明るくなる。と言う話。現実として夜空は暗いので、パラドックスなのですが。


 本書では、オルバースのパラドックスについて、宇宙論の変遷に依りながら、説明を進めて行きます。この宇宙論というのが、とても面白い。もともと、宇宙論の発展がキリスト教圏で進められてきたこともあり、宗教と深く関わりながら、議論されてきたことがわかります。


 少し分厚く、手に取りづらい本ではありますが、とても面白いので、ぜひご一読ください。


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2020年12月6日日曜日

ジョージ・S・クレイソン 他2名 漫画 バビロン大富豪の教え 「お金」と「幸せ」を生み出す五つの黄金法則

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編212日目

 私の住む町内では、来年の役員が決まらず、大変な事になってます。主だった人達が、町内会長になる事を固辞しているからです。私にはそれがもったいなく見えて仕方がありません。なぜなら、人は周りに貢献すればするほど幸せになると思っているからです。町内会長なんて、最大級の貢献ですから、こんなにラッキーな籤にはなかなか当たりません。ただ、今回の役員人事は、なんとか解決の目処が付いたようです。

 さて、今日お勧めする本は、お金の勉強の中ではじめの一歩とでも言うべき、一冊です。

 この本の主旨は、収入の10%を貯金し続ければ、大富豪にだってなれるよ、って事だと思います。

 実は、今回は少しイレギュラーです。それと言うのも、私が読んだのは漫画バージョンなのですが、個人的なお勧めは原作である活字バージョンだからです。

 正直言って、漫画バージョンでも、大富豪になるための知恵は得られると思うのですが、できれば活字バージョンを読んでいただきたいと思うのです。

 皆さんも実感していると思いますが、楽して得られるものは少ないです。漫画バージョンを読むことは、簡単でしょうが、中身が薄く得るものが少なく物足りないのです。

 一方、活字バージョンは、若干読みにくそうですが、その分物語は面白く、得られる知識も多いようです。

 本書は、収入の一割を貯金しろと言う教え以外にも、古来の知恵にあふれています。多分、IT全盛の今の時代にも活かせる知恵だと思いますので、漫画でも活字でも、どちらでも良いので、ご一読ください。

 ちなみに私のお勧めは、漫画バージョンを読んで全体像を掴んでから活字バージョンも読むという両方読むバージョンです。

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2020年12月5日土曜日

相場 英雄 震える牛 (小学館文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編211日目


 今朝Amazonに頼んであった黒ラベルの24本入りが届いた。ネットショッピングは、安くて便利だけど、みんながそれをしてしまうと、リアル店舗が崩壊してしまうから、出来るだけ避けてきた。しかし、また安くて便利な仕組みに流れてしまった。コストと聞くと、少ない方が良いと思うが、コストが人件費である限り、誰かのお財布に入る大事な支援金だ。貧しい時はコストを節約した方が良いのだろうが、地域のためには、コストをかけてでも地域にお金を回せば良いのだろうし、とても難しいです。


 さて、今日お勧めする本は、三条市出身の作家、相場英雄さんの出世作です。


 本書の魅力は、ミステリー小説という体裁で、主題は自由市場主義へのアンチテーゼであるところ。コストカット競争の勝者は世の中に幸せをもたらしてくれるのだろうか?ここが最大のテーマです。プロローグとエピローグで刻まれる、言葉が良い。「極限まで推し進められた自由市場主義はおそろしく偏狭で、近視眼的で、破壊的だ」


 本作の主人公は、警視庁で迷宮入り濃厚な未解決事件を担当する田川。ある日、捜査一課長から特命で、ある事件の捜査を依頼されます。


 田川は、愛用の肥後守と言うナイフで鉛筆を削り、事細かに関係者の証言をメモしながら事件の真相に迫る、地取り捜査を得意とする刑事。早速取り掛かった捜査で、この事件の初動捜査が杜撰であった事に気付きます。


 事件の捜査と並行して、精肉店から大規模ショッピングセンターの全国展開にまで発展したオックスマートの経営陣が描かれる。取締役経営企画室長の滝沢が、マスコミなどから組織を守るための奮闘が本書のもう一つのストーリーとなっている。


 そしてもう一人、オックスマートが業績を拡大するために行った数々の不正を暴く事ために取材を続けるマスコミの鶴田。彼女は、ある情報提供者から、オックスマートが行っている食品偽装というネタに行き着きます。


 本書は、事件を捜査する刑事、会社を守るためグレーゾーンな仕事にも手を染める組織人、社会的正義を貫こうとするジャーナリストの三者の視点から、一つの真実に辿り着くように物語が進んでいきます。


 作中、新潟や三条が出てくるのですが、郊外のショッピングセンターにボロボロにされた、画一的な地方都市として描かれています。すこし寂しい反面、著者の視点で見る故郷は、また違ったところに見えて、興味深く感じました。


 ミステリーとしてはもちろん、社会派サスペンスとしても楽しめますので、ぜひ、ご一読ください。


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2020年12月4日金曜日

佐藤 芳之 歩き続ければ、大丈夫。---アフリカで25万人の生活を変えた日本人起業家からの手紙

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編210日目


 アフガニスタンで約30年にわたり医療活動や砂漠緑化に取り組んだ中村哲が武装集団に殺害されてから1年となります。国を渡りここまで功績残された故人はやはりすごい人だったのだと思います。あらためて、ご冥福をお祈りします。


 さて、今日お勧めする本は、今から50年以上も前にアフリカに渡り、現地で多くの人の生活を支える事業を起こした著者による半生記です。


 この本の主旨は、とにかくやってみる事、それを続けられたら大丈夫、と言う事だと思います。


「人生に無限の可能性なんてないのだけれど、最初の一歩を踏み出せば、今は想像もつかないほど遠くまで行けるかもしれない。」本書の中で最も好きな言葉です。


 PDCAサイクルで言えば、Dから始めろという、超前のめりな著者の思考法は、何事も始める前からグズグズしている私にとってとても刺激になるものでした。


 成功しても失敗しても、常に新しいことに挑戦し続ける著者。その、いつも一歩前を行く大先輩の言葉に大変勇気づけられる一冊です。やりたい事があっても何か躊躇してしまう事がある方に、お勧めします。


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2020年12月3日木曜日

両@リベ大学長 本当の自由を手に入れるお金の大学

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編209日目


 世界中が待っていた吉報です。アメリカ、イギリスで来週から、ファイザー社製新型コロナワクチンの接種が開始されるそうです。これで直ちにコロナが無くなるわけではありませんし、輸送などの課題は山積みですが、少なくとも危機は乗り越えたと言っても過言ではない思います。アメリカの株価も好調、投資も順調です♪


 さて、今日お勧めする本は、人気YouTuberが書いた、お金について学ぶ本です。


 この本の主旨は、豊かに楽しく生きていくために必須であるお金の知識を持たない人が多過ぎるよ、って事だと思います。

 

 この本では、お金にまつわる力を、支出を減らす力、収入を増やす力、資産を増やす力、資産を減らさない力、人生を豊かにする事にお金を使う力の五つに分けて、教授しています。


 特に、支出を減らす力を重点的に書いてあり、私もそこが一番刺さりました。


 著者曰く、日本の健康保険は世界一との事。そのため、CMなどに煽られて加入しているガン保険や医療保険は一切不要だそうです。保険は低確率、大損害に備える事を基本に考えます。それは、死亡、火災、事故です。そのため、掛け捨て生命保険、火災保険、対人対物無制限の自動車保険の三つで十分との事。


 それ以外の、ガンや病気、年金、介護に備える保険は全てボッタクリ商品との事です。例えば、医療保険に入る代わりに、貯蓄を最優先し必死に貯めると良いとの事。保険屋さんには申し訳ないけど、目から鱗でした。


 世の中に蔓延するうまい話を一刀両断してくれるところも良いので、この本を読んで怪しい儲け話から身を守る手段を身につける事も大切だと思います。


 私もこの本を読んで、早速20年続けたガン保険などを解約しました。今日が人生で一番若い日です。皆さんもこれから頑張りましょう!


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2020年12月2日水曜日

松本 清張 点と線 (新潮文庫)

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編208日目


 ジャイアント馬場さんのキャデラックが三条市に寄付されるそうです。ジャイアント馬場といえば超人気プロレスラーでしたが、息子達の世代にとっては全くわからない偉人なんでしょうね。さてはともあれ、三条市の宝として活用されたら良いですね。


 さて、今日お勧めする本は、昔一世を風靡したミステリー作家、松本清張さんの代表作です。


 この作品の魅力は、刑事達が必死の捜査により犯人のトリックを暴いていく過程だと思います。


 私は、この作品で初めて著者の作品を読んだのですが、あらためて松本清張ってすごい人だったのだと思いました。とにかく面白かったです。


 夜行列車や電報など、テレビでたまに見かける白黒の昭和の風景が描写されており、その時代の気分を味わえます。


 そのように、出てくる道具などに、今の時代とギャップを感じるところは多々ありますが、ミステリー小説としての面白さは全く色褪せていないと思います。


 なんといっても、主人公の刑事たちが、事件の真相に迫って行く捜査のシーンに引き込まれてしまいました。


 それほど長い作品ではなく、さらっと読めますので、ミステリー小説の古典として、ぜひご一読をお勧めします。



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2020年12月1日火曜日

齋藤 孝 読書力 (岩波新書)

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編207日目


 今朝のニュースで見たのですが、鬼滅の刃ブームにのって、小説版の鬼滅の刃もヒットしているそうです。読書をお勧めしている私にはとても嬉しいニュースです。対象年齢は小学上級から中学生との事です。私は読書にのめり込んだのは、30代後半です。もっと若い時から読んでいたらとよく思います。ぜひお子さんへのプレゼントでもどうぞ。


 さて、すでに鬼滅の刃を勧めておいて恐縮ですが、今日お勧めする本は、日本で一番読書を進めている齋藤 孝先生による読書の勧めです。


 この本の主旨は、とにかく自分が大事なら読書をしよう、って事だと思います。

 


 本書で語られる読書と効果は、自分をつくるために、自己形成としての読書、自分を鍛えるための、スポーツとしての読書、自分を広げるための、コミュニケーション力の基礎となる読書、の三つです。


 これだけ熱く読書の良さを語ってくれる著者に感謝です。確かに読書は自分に与える影響が半端ではないと思います。今の自分に必要な本を教えてくれる、読書トレーナーという提案がありましたが、私も欲しいと思っていました。少なくとも読書仲間は居ると本当に励みになりますよね。お互い本を紹介し合うのはとても楽しいことです。 


 この本を読んだのを機会として、娯楽のための読書ではなく、体育会系の読書にも頑張ってみようと思い、頑張ってます。当書にはお勧めの文庫百選がありますので、ブックガイドとして購入されても良いですね。


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