2021年1月31日日曜日

三崎 亜記 となり町戦争 (集英社文庫)


 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編268日目

 今日の新潟日報の追想メモリアル欄に半藤一利さんが長岡に疎開していた事など、長岡に縁があることが載っていました。半藤さんは近現代史についての著作が多く、以前から興味があったため、1月12日の訃報を聞いてから図書館に本を予約し、昨日本を借りて来たばかりだったので、驚きました。今日までの月替わりセールにも半藤さんの昭和史が安売りされていたので、勢いで購入することにします。皆さんにお勧めできるように、頑張って読んでいきたいとおもいます。

 さて、今日お勧めする本は、市町村が事業として、となり町との戦争を行うという、とんでもない設定の小説です。

 主人公は、舞坂町からとなり町を通り会社に通っていたことから、舞坂町のとなり町戦争係から戦時特別偵察業務従事者への従事を依頼される北原修路。彼は積極的に戦争に加担したくはないと考えているが、突然始まった戦争が自分の見えないところで行われており、戦死者まで出ていることに衝撃を覚え、偵察という形で戦争を観察してみたいと感じ、戦時特別偵察業務従事者の辞令を受け偵察を始めます。

 重要人物として、舞坂町のとなり町戦争係主事の香西さんです。彼女は少ないとなり町戦争係の職員として予算の管理や戦争コンサルタントとの契約など事業として行われている戦争の事務処理で激務の中、冷静かつ事務的に北原にとなり町との戦争を教えて行きます。

 となり町との戦争が激化していき、となり町戦争係もとなり町戦争推進室と組織の変更が行われます。北原もとなり町戦争推進室分室勤務へと偵察業務の変更を命じられ、戦争推進室分室と名付けられた、となり町の役場近くのアパートへの潜入偵察が始まります。それも、香西さんと偽装結婚しての業務であり、そこから二人の奇妙な同棲生活も始まっていきます。そして、戦争は進み北原も肌で戦闘を感じる危機が起こります。

 正直に言って、このとんでもない設定が気になり、物語の所々でかなりの違和感を感じます。そんなこともあり、私は本書の物語に浸ることが出来なかったのですが、本書から受けたショックが半端ではなかったので、ご紹介するものです。

 平和な生活と並行して行われる戦争、事業として行われる戦争、市民が自然体で受け入れている戦争。どの切り口も、そんなバカなと感じます。この違和感が逆説的に戦争が起こるとどうなるのか考えさせられます。ぜひご一読ください。




2021年1月30日土曜日

上杉 隆 ジャーナリズム崩壊 (幻冬舎新書)

 


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編267日目

 今日の新潟日報によると県の20年度ふるさと納税が3億円に迫り過去最高額を更新したそうです。新潟県の財政難は危機的状況で、職員の給料も削減されているほどです。ふるさと納税三種の神器と言われる、米、肉、カニは、新潟県の得意な生産品ですし、もっともっと伸ばしていって欲しいものです。個人的には、楽天市場を利用した、楽天ふるさと納税の活用が良いのではないかと思います。都道府県としては、山形県、鳥取県、高知県、宮崎県など、少数ですが他県も楽天ふるさと納税に出店しているようですし、新潟県もぜひ出店して欲しいです。

 さて、今日お勧めする本は、ニューヨークタイムスなど海外と日本のジャーナリストを比較し、日本のジャーナリズムがどれだけガラパゴスな状態かを明らかにする本です。

 本書の主旨は、記者クラブで各社横並び、取材対象にベッタリ癒着している日本のマスコミはジャーナリズムではない、って事だと思います。

 ニューヨークタイムスの記者の後、フリーランスとなった著者は、日本よりも外国の目線で、記者クラブについて辛辣な批評を書き連ねています。それらからは、日本のジャーナリズムは、ジャーナリズムとはいえない代物のようです。

 そもそも、日本ではジャーナリズムと共同通信などの通信社との区別がついていない事。海外では、新聞記者と通信記者の役割がハッキリ分かれているそうです。また、匿名の記事が当たり前、メモを見せ合いライバル社と情報を共有している、情報元のクレジットを記さないなど、日本のジャーナリズムの特異性というより、ハッキリ劣っている点をいくつも挙げている。

 中でも、記者クラブについては多くの紙面を割いて批判している。記者クラブは、そこに属していないと記者会見などに参加できず、取材対象にアクセスすることもできない。記者クラブには、雑誌記者やフリーランスの記者は入ることが出来ない。出入り禁止になる事を恐れて記者クラブ内での横並びを保とうとするとのこと。確かにこれではまともな報道は出来ないと思いました。

 元々、かなりセンセーショナルな言動が信条の著者なので、話半分に聞いた方が良いのかもしれませんが、今日本のマスコミが海外のマスコミからどう見られているか、いろいろ参考になる本だと思います。ぜひご一読ください。


2021年1月29日金曜日

吉野 源三郎 君たちはどう生きるか (岩波文庫)


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編266日目

 新聞によると、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた関連法案の修正で、入院を拒否する人への刑事罰の導入を削除する事になったそうです。罰金などの行政罰は残るそうですから、厳しい法律になることはかわりませんが、まずは良いことだと思います。どこかの知事が罰則がないからダメだ!と声を上げたらハイハイと言って刑事罰をつけるなんてことは、まさに衆愚政治そのものですから、そんな言葉に振り回されず、しっかり自分の考えを持つ事が大事なのだと思います。

 さて、今日お勧めする本は、戦前に出版され最近リバイバルで大ブームになった倫理をテーマとした児童文学です。

 主要な登場人物はコペルくんと、そのあだ名をつけた叔父さんです。コペルくんのあだ名の由来は、コペルくんが銀座のデパートの屋上から下界を眺め、人間は分子のようなものではないかと思いついたことを讃え、天動説が当たり前の時代に地動説を唱えたコペルニクスにあやかりつけたものです。物語は、コペルくんが日常で気付いた事や考えを叔父さんとの交換日記のようにして、倫理的に深めていくものです。

 ハッキリ言って、コペルくんはお金持ちのおぼっちゃまですから、何か上から目線で嫌いという読者もいるそうです。実際、先の人間は分子ではないかと言う思いつきも、銀座のデパートの屋上から下の人を見下ろしての言葉ですから、好き嫌いの分かれるところでしょう。しかし、学校でいじめられている浦川君との、関わり方や友情からは、コペルくんは素直な良い子としか思えません。

 浦川くんの家は豆腐屋を営んでいます。借金の返済に駆けずり回っているお父さんの代わりに、幼い兄弟の面倒を見ながらお店を開かなくてはいけなくなり、学校に行く事ができなくなります。コペルくんは、そんな浦川くんの生活を見て、尊敬の念をもちいたく感動して、勉強を教えるなど浦川くんの力になろうとします。これを聞いた叔父さんは、コペルくんが自分を浦川君より一段高いところに置いているような、思い上がった風が少しもしない事に感心し、貧しい人たちの自尊心を傷つけることのないよう、慎みを忘れないように諭します。

 本書は日中戦争開戦の年に発表となった作品なので、現代の倫理とはかけ離れている点もあるように思いますが、それでも学ぶべき多くの気づきを得ることができる思います。ぜひご一読ください。


2021年1月28日木曜日

森 達也 A3 (集英社文庫)


  


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編265日目

 少し前の新聞になりますが、オウム真理教の後継3団体を対象とした、団体規制法に基づく観察処分の3年間の更新を認めると決定したそうです。地下鉄サリン事件が1995年、麻原の逮捕も同年、麻原を筆頭に13人への死刑判決 が確定したのが2011年、その死刑執行が2018年です。だいぶ時間が経ちましたが、警察はまだまだ油断できない存在と考えているようです。このままおとなしくしていて欲しいものです。

 さて、今日お勧めする本は、麻原彰晃を含む関係者への取材から、マスコミでは報じられることのない、異例づくしのオウム裁判の異様さを伝えるルポルタージュです。

 本書の主旨は、確かにオウムは犯罪集団であるが、今回の裁判を始め、世論に影響を受けて、差別や人権を無視した異例な事が起こっているよ、って事だと思います。

 まず著者は麻原彰晃の裁判を傍聴して、精神的な疾患がるようである麻原彰晃の裁判を刑事訴訟法の規定に基づき公判手続きを一旦停止し精神医療を受けさせ、治療した後に裁判を再開するべきと言っています。確かに、多くの紙面を割いている、麻原彰晃の異常な言動に関する関係者の証言などを読めば、この裁判の異様さが伝わって来ます。

 オウム事件は、起こした犯罪の数も、犠牲になった人の数も、容疑者の数も桁違いの事件ですから、通常の手続きを踏まずに進められた異例づくめの裁判でした。そして、世間の人達がオウムを成敗したいと言う正義の思いも強く、少しでもオウムの肩を持とうものなら袋叩きに合うような状況でした。そのため、麻原彰晃の子供達も住民票の移動を拒否されたり、大学入学を取り消されたりと、多くの差別を受けているそうです。

 オウムに対する冷静さを取り戻した今こそ、あの事件を振り返る良い機会だと思います。そして、コロナ禍で、同じようにマスコミに煽られてしまう世の中に気付く、きっかけにもなるかもしれません。ぜひご一読ください。

2021年1月27日水曜日

佐藤 優 調べる技術 書く技術 誰でも本物の教養が身につく知的アウトプットの極意 (SB新書) (日本語) 新書 – 2019/4/6 (著

 


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編264日目

 日経新聞によると、学校教育に大きな変化がありそうです。中央教育審議会の答申です。そもそも、4月から全ての小中学校で学習用端末を利用した授業が始まるとの事ですし、そのための、教員の指導力を向上するための制度改正などの答申に、算数や英語などの教科担任制を教員養成の体制見直しを進める事が含まれているそうです。小学校で教科担任制というのにも抵抗がありますが、それより、ICT(情報通信技術)を活用した学校教育と言うのも、先行き不透明で不安を感じます。子供達の教育にプラスになる改革となってほしいと思います。

 さて、今日お勧めする本は、現代の知の巨人とも言える著者による知的生産性を高めるための指南書です。

 本書の主旨は、情報過多な時代では、インプットする情報をきちんと選ぶよう気をつけましょうって事だと思います。

 著者は毎月平均2冊の本を執筆し、その他にも多数の連載を抱えています。ひと月に書く原稿は、1200ページに達し、そのために500冊の本に目を通すそうです。そんな著者が読者に問いかけるのは、スマホでSNSやネットニュースなど手軽にインプットした情報は、量は多いが本当に自分のためになっていますか?と言うことです。そして、知的生産の技法を磨き、コミュニケーション能力を高めることで、読者が人生そのものの充実度を高めていくと言うのが本書の目的だそうです。

 本書でなるほどと思ったことは、教養力アップの方法として、高校の教科書を学び直すこと。リアルタイムの情報は新聞で、過去の情報は本でインプットするのがはやいこと。ネットニュースではなく、NHK NEWS  Webを見ること。ジャパンナレッジなど、良質な情報に触れるためには有料のサービスも活用すること。スマホの独学アプリも役に立つこと。アウトプットは、手書きのノートの効率が良いこと。

 その他にも、知的生産性向上のためインフラ整備として、お金の使い方や、コミュニケーション、休息についても述べられています。

 かなり多岐にわたる内容ですが、一つ一つが短いので読みやすいです。ぜひご一読ください。

2021年1月26日火曜日

金子 哲雄 僕の死に方 エンディングダイアリー500日 (小学館文庫)

 


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編263日目


 日経新聞の電子版によりますと、新型コロナウイルスによる世界での死者数が高水準で推移しているそうです。1日あたりの死者数は、24日に1万4082人と過去最多となったとの事。その内訳では米国が圧倒的に多く、累計死者数でも世界で最も多く、41万人を超えているそうです。日本の状況と同じく、年末年始の移動や集まり、感染力が高い変異種の影響で感染者数が増加し、1月後半に入って亡くなる人が増えているそうなので、日本が特別失策により感染者数が増えているなんてことはありません。しかし、これだけコロナが蔓延して、死者数も多いのに順調な米国経済ってどうなっているのでしょうかね?まあ、これだけ死んでいるんですから医療崩壊はしているのでしょう。


 さて、今日お勧めする本は、平成24年10月に急逝した流通ジャーナリスト金子哲雄さんのエンディングダイアリーです。


 本書最大の衝撃は、肺カルチノイドという病気に罹り、余命宣告を受けた著者が、周囲にそれを隠して最後まで仕事を続けると決めて、それをやり遂げた事です。


 本書の前半は、著者のこれまでの振り返り。弟1章は学生時代から流通ジャーナリストとして名を成すまで、第2章は流通ジャーナリストとして活躍する日々です。どちらも学ぶところが多く、著者がどれだけ人の役に立とうとして頑張っていたか、それが実際、多くの人に役立っていたであろう事が伝わって来ます。


 後半は、病気を覚知してからの日々。弟3章では周囲に病気を隠しながら、治療、仕事、家庭生活のバランスを取るよう奮闘する姿が描かれています。そして第4章では、重くなる病状のため仕事を女性週刊誌の連載一本に絞り、葬儀の手配や相続のための遺言作成など、自分の死後への準備を進めていく。


 そして、直前まで仕事を続けながら、奇跡など微塵も起こらず著者は死を迎えます。


 兎に角、自分の死んだ後のお墓や葬儀を始めとする様々な準備を自ら整えて旅立っていった姿が胸を打ちます。そして、病気のことを伏せていた周囲に申し訳ないと思う人の良さや、自分の死の間際まで奥さんの手を握り、奥さんの事を守ると言い続けた愛情には涙が止まりません。生と死を目の前に突きつけられる感動の実話です。ぜひご一読ください。


2021年1月25日月曜日

辻 寛之 インソムニア

 


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編262日目

 新潟日報の一面によると、陸上自衛隊と米海兵隊が、沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブに、陸自の離島防衛部隊「水陸機動団」を常駐させることで二〇一五年、極秘に合意していたことが、日米両政府関係者の証言で分かったとの事です。ただでさえ、地元の合意が取れず苦労している辺野古移設に対して逆風になりそうなニュースです。背景には尖閣諸島への圧力を強める中国への牽制という目的があるようです。私は防衛のために必要であれば必要であると所用の手続きを取るべきだと思いますし、もし、自衛隊の体質が極力水面下で物事を進めようとする改善していくべきだと思います。

 さて、今日お勧めする本は、自衛隊とPKO派遣について、新たな視点を与えてくれる小説です。

 物語のあらすじは、防衛省でメンタルヘルス官として勤務 している神谷が、PKOの南ナイルランド派遣部隊で派遣中に殉職した三崎二曹の同僚や同じ派遣隊員たちのメンタルケアを担当する中で、南ナイルランドで起こった事件について、幾重にも重ねられた虚構の中から真相に迫っていくというものです。

 自衛隊とPKOというデリケートなテーマに取り組む社会派小説でありながら、南ナイルランドの現場で何があったのかという謎解きのエンターテイメント性が読者をどんどん物語に引き込んでいきます。

 各章ごとに変わる語り手のキャラクター作りも丁寧で、物語を立体的に浮かび上がらせています。

 私の好きなシーンは、神谷の上司である上村が、隊員よりも組織を守る事ため事実を隠蔽しようとする防衛省幹部を諭すシーンです。セリフの一部を書抜ます。『彼らは自衛官です。国民のために命をかけて奉仕しているかけがえのない存在なのです』 。このシーンから、どのような立場だとしても現場の人間に敬意を払うことが大事である事、そしてその言葉がどれほど力強いか思い知らされました。

テーマがテーマだけに、少し重めのお話ですが、小説としての面白さがちゃんと楽しめる作品だと思います。ぜひご一読ください。
 



2021年1月24日日曜日

関 満博 現場主義の人材育成法 (ちくま新書 (538))

 

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編261日目


 最近はワーケーションに関するイノベーションが活発になっているようです。今日の新潟日報には妙高市がダイハツなどと共同で、軽トラを活用したモバイルワークステーションの実証実験を行っているとの報道がありました。キャンピングカーの様な仕事場は凄く魅力的ですが、ワーケーションやテレワークのデメリットが気がかりです。コロナ禍で進むテレワークやワーケーションでは、オフィスの持つ人材育成の場としての機能がどうしても補完できない様に思います。人材育成という課題解決が必要だと思います。


 さて、今日お勧めする本は、地方や中小企業など、比較的逆境にある地域経済を支える人材を育てるケーススタディをまとめたものです。


 本書の主旨は、指導者が先端の現場に身を置き、相手に世の中の先端を実感させれば、相手にやる気が起きて育って行くよって事だと思います。


 一橋大学商学部で地域産業を教える著者は、自分のゼミナールで中国や地方都市の工場など、先端の現場で夏合宿を行い、知識だけでなく先輩たちの持つ熱気や情熱を学生達に感じさせるように指導をしています。


 本書では、著者の教え子達が中国の深圳テクノセンターにインターン留学した例があげられています。深圳テクノセンターは、生産業の集積地で激アツの場所だそうで、教え子達が見違えるように成長していく姿が描かれており、人材育成の成功例を追体験することが出来ます。


 他にも、岩手県での地域産業育成についても、現場でリーダーとなる人材を育てる梁山泊のような状態が伝わってきてワクワクします。


 本書で語られるケースは全て、先端の現場で頑張る先輩達と教え子達が触れ合う事で現場の熱量が人に伝わり、人材育成につながっていくことが記されています。ここから、人を育てるのはコミュニケーションが大事である事を改めて認識することが出来ました。


2021年1月23日土曜日

内田 樹 寝ながら学べる構造主義 (文春新書)



『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編260日目

 新型コロナウィルス特別措置法と感染症法の改正案が国会に提出されたそうです。私にはこの法律改正が手順前後の感がして仕方がありません。今必要なのは感染拡大防止を法律を改正してさらに徹底して行く事なのでしょうか?感染者を犯罪者のように国に従わせようとする罰則規定もあります。今回の法律改正は、感染拡大防止しか見ていない単一的な視点による政治では無いかと思います。感染症に罹った人をどう救うのか?コロナ対策を支えるための経済をどう立て直して行くのか?政府が急ぐべき政策は他に沢山あるはずです。

 さて、今日お勧めする本は、私たちの思考は自分の生きている環境からいかに影響を受けているかを考える、構造主義を分かりやすく伝える入門書です。

 本書によると、構造主義というのは、私たちのものの見方、感じ方、考え方を基本的なところで決定しているのは、私たちが属している社会集団、地域、時代という条件によるとする考え方です。

 さらに、私たちは自分では判断や行動は自分で決めていると信じているけれど、その自由や自律性はかなり限定的じゃないかという事を徹底的に掘り下げたところが構造主義という方法の功績だとのことです。

 相手の視点からものを見てみようというのは、今では当たり前の事のように感じますが、それも構造主義の思考方法が一般的になっていることであり、自明なものになってしまった今は、ポスト構造主義の時代と呼ばれているそうです。

 本書では、このような構造主義の概略説明から始まり、代表的な四人の思想家ソシュール、フーコー、バルト、ストロース、ラカンのそれぞれの功績を解説してくれます。

 若干、硬い内容の本ですが、市民講座のノートをもとに書かれた本ですから、テーマの割に分かりやすいのではないかと思います。私も理解しているわけではありませんが、ものの見方が変わった感じがしました。ぜひご一読ください。


2021年1月22日金曜日

百田 尚樹 夢を売る男 (幻冬舎文庫)

 


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編259日目

 ビットコインなど、暗号資産市場では、バイデン大統領就任の影響が早くも出ているようです。それというのも、次期財務長官に指名されたイエレン氏が、暗号資産がテロリスト等の資金の温床となる危険性があり、規制をかける意向を示したらしいのです。ビットコインは、20%を超えて暴落しています。まあ、私のように、長期的に10倍以上に上がると夢を見ている人にとっては、安くなって買い足すのに助かるって思っている人が多いのでしょうが。

 さて、今日お勧めする本は、慢性的な不況に陥っている出版業界を舞台として、それでも出版に夢をみる人々を描いた連作短編小説です。

 主人公は弱小出版社丸栄社の編集部長牛河原勘治。彼の顧客は良い本の出版を待つ読者ではなく、自分の書いた本を書店に並べたいと自尊心や虚栄心に取り憑かれた著者達です。

 丸栄社は本の著者に出版費用を負担させる、ジョイントプレスという方法で本を出版し、売れるか売れないかに関わらず出版すれば儲かるという商法を展開しています。

 その商法をうまくつかい、敏腕編集部長である牛河原は次々と癖のある著作者達を手玉にとり、一冊あたり数百万円という出版契約を次々に取っていきます。

 ある意味詐欺とも言える商法ですが、牛河原は本を出したい人間の夢を叶える仕事であると、自画自賛しますし、実際にそれに助けられる人がいると本書では描かれています。その反面、牛河原が丸栄社の顧客である著作者たちに聞かせられない本音を部下の荒木に諭すのですが、その一言一言が出版業界への批判であり提言となっており、どれもこれもなるほどと腑に落ちる言葉ばかりです。

 この作品の中でどれだけ出版業界が大変な思いをしているのか、そして本を書いてみたい人間がいかに出版業界の苦労を知らずして夢を見てしまうのか思い知らされます。

 自分の書いた本を世に送り出したいというのは、かなり普遍的な欲望なのかもしれません。

2021年1月21日木曜日

伊坂 幸太郎 魔王 (講談社文庫)

 


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編258日目

 泥仕合となってしまった大統領選挙も終わり、バイデン大統領が就任しました。これからどのようなアメリカになって行くか注目していきたいと思います。最後まで自分流を貫いたトランプ前大統領も、この後実はアメリカの好景気を支えた良い大統領だったと言われるのか、それとも独善的な支配者が去ることとなって良かったと言われるのか、政治に判決を下すのは歴史でしかありませんから、後のトランプ前大統領の評価が下るのも楽しみです。

 さて、今日お勧めする本は、強大な権力者に違和感を感じてしまった時に、どう立ち向かいますか?と問いかける小説です。

 主人公は安藤兄弟。本書は「魔王」と「呼吸」の2部に分かれていて、「魔王」では安藤兄が主人公。「呼吸」では弟の潤也が主人公となります。

 安藤兄は、昔から人が考える必要がないと思うようなことまで深く考えすぎるきらいがあり、潤也から、「兄貴は、世の中を小難しく考えることが生きがいなんだ」「マグロが泳いでねえと死んじゃうのと一緒で、兄貴は考えてねえと死んじゃうんだ」と言われています。

 そんな中、ある事をきっかけに、安藤兄は自分が念じたとおりに他人の言葉を操れる能力に気が付きます。そして、政治不信の世の中から国民を熱狂させることのできる政治家犬養が台頭していきます。人々が犬養に魅せられて行く中で、安藤兄は、まるで「注文の多い料理店」で愚かな紳士たちが誘導されて行くように、国民が犬養にファシズムに誘導されて行く恐怖を覚えます。

 安藤兄の不安が的中し、世の中がどんどん犬養に操られるように右傾化して行きます。安藤兄は、昔見たアメリカのテレビドラマの影響で口癖となった、「考えろ、考えろ、マクガイバー」という言葉を自分に言い聞かせ、自分のなすべき事を考えます。

 そして、自分の言葉を操れる能力一つで、犬養のファシズムを止めるべく、街頭演説をしている犬養に立ち向かって行くのです。

 著者ならではの、カテゴリーを超越したエンターテイメント作品です。ぜひ、ご一読ください。



2021年1月20日水曜日

海堂 尊 チーム・バチスタの栄光 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)



『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編257日目

 今日の新潟日報で、新型コロナワクチン接種が新潟県でも来月末から始まるそうです。2月下旬から医療従事者に接種を開始し、3月下旬から高齢者への接種が始まる予定とのことです。これまでかなりのハイリスクを背負ってお仕事されてきた医療従事者の皆さんや、高齢者の方々は大変怖い思いをしてきたと思いますが、もう少しで感染リスクがぐんと下がりますので、あと一息頑張って欲しいです。ワクチンに対するデマをSNSで拡散する人たちもいるようですが、まずは接種が淡々と進む事を祈ります。

 さて、今日お勧めする本は、医療行政をテーマに取り上げてベストセラーとなった小説です。

 本書は、舞台となる東城大学病院で、心臓移植の代替手術であるバチスタ手術を専門とする天才外科による、チームバチスタが抱える闇を、万年窓際講師である主人公と、厚生労働省の変人、ロジカルモンスター白鳥が暴いて行く爽快な物語です。

 本書の魅力は、なんと言っても際立ったキャラクターの強さです。主要な登場人物には必ずキャッチフレーズが付いています。例えば、主人公の田口は万年窓際講師、準主人公の白鳥はロジカルモンスター火喰い鳥、上司の高階病院長は小柄なロマンスグレーなどです。

 私は、特に白鳥のキャラが素晴らしいと思いました。東條大学病院の問題に取り組みつつ、日本の医療に関する問題点をしっかりと憂い解決策を持っているところが良いです。田口とのコンビネーションも最高でした。でも、敵役とも言えるチームバチスタのリーダー桐生先生のカッコよさも作品を引き立てていますね。



2021年1月19日火曜日

藤沢 晃治 「分かりやすい説明」の技術 最強のプレゼンテーション15のルール (ブルーバックス)

 

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編256日目


 先日は後輩のプレゼンのリハーサルがありました。私が就職した26年前は、パワーポイントなんて見たことも聞いたこともない状態でしたが、今の新人たちは、パワーポイントを使ったプレゼンが必須課題とされているのですから、時代を感じます。そのうち、YouTubeによる動画配信が研修の課題になる日も来るんですかね。


 さて、今日お勧めする本は、プレゼンの基礎体力とでもいうべき説明力を養うための本です。


 この本の主旨は、分かりやすい説明かどうかは、相手がどのように感じているかにどれくらい気付けるかにかかっているよって事だと思います。


 まず、最初の印象はこの本自体が分かりやすいという事でした。著者の言葉で「人に正確に意図を伝える説明技能は、仕事でも日常生活でも、私たちにとってますます欠かせない能力となってきています」と言っている通りで、本書はプレゼンテーションだけに限らず、様々な場面での説明に応用できる内容となっています。


 その中でも、「情報を聞き手の脳に理解させる(染み渡らせる)ことは、空のビール瓶に口から、ゆっくり少しずつ液体を流し込むようなイメージで行うこと」とか、「分かりやすい説明とは、聞き手側の労力を軽減してあげる代行サービスであるということ」など、非常にためになるコツを知ることができました。


 そして最後に、「分かりやすく説明することが本当にいいことなのか?」というところまで踏み込んでいるところが、逆説的で深く面白いと思います。


2021年1月18日月曜日

垣谷 美雨 女たちの避難所 (新潮文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編255日目


 昨日のことになりますが、阪神大震災から26年が経ったそうです。私が就職して初めての年に起こった出来事なのでよく覚えてます。あの地震では六千人を超える死者が出たとのことです。その後、耐震設計やら、様々な基準が見直され、今に至ります。その後も、中越地震、中越沖地震、東日本大震災、熊本地震など大きな地震を繰り返すたびに自助、共助、公助それぞれに防災意識の高まりが見られるように思います。これからも大地震の備えを忘れずに生きていこうと、思いました。


 さて、今日お勧めする本は、一難去ってまた一難、震災避難所で女性が受ける苦難についての小説です。


 主要な登場人物は福子、遠乃、渚の三人の女性です。三人はそれぞれ、地震津波の被害の末、避難所にたどり着きます。しかし、そこは彼女たちを心から安息させてくれるところではありませんでした。


 本書を読んでいると、女性の苦労に全く無神経な自分に気付きました。男はよほど気をつけていないとセクハラばかりしてしまう存在のようです。


 本書で一番印象的だったのが、避難所で一生懸命みんなのために働く避難所のリーダーが、みんなを困らせる存在になってしまう事です。リーダーは最初は頼りになる存在だったのですが、だんだん支配欲が出てくるのか、避難所が凄まじい管理社会になっていきます。正直に言って、弱者の方ばかりを向いていて、リーダーのように形だけでも、みんなのために働いている人の事を考えているのか、疑ってしまいます。


 それでも、声を出せない側の存在に気付き、寄り添う大切さを知る良い作品だと思いますので、ぜひご一読ください。



2021年1月17日日曜日

北条民雄 定本 北条民雄全集〈上〉 (創元ライブラリ)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編254日目


 昨日の新聞からですが、旧優生保護法下で不妊手術を強制されたのは憲法違反として、札幌市の小島喜久夫さんが国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、旧優生保護法下の不妊手術は憲法違反だということは認められたけど、訴えたのが遅いから訴えそのものは棄却されたとの事です。小島さんは精神疾患という理由で不妊手術されてしまいましたが、ハンセン病の患者もこの法律のもと不妊手術されたという悪法です。ただし、旧優生保護法制定の経緯も興味深く、この法律そのものは、ある立場の人を守るため議員立法で成立した法律とのことです。誰かを守るものが、誰かを傷つけるという、簡単な正悪では求められない一つのテーマだと思います。


 さて、今日お勧めする本は、訳あり天才作家による、魂の叫びというにふさわしい小説集です。


 著者の名は北条民雄。ハンセン病を患い、ハンセン病の療養所から川端康成に師事し、作品を発表した前代未聞の小説家です。ハンセン病がいかに恐ろしい病気かは、本書の作品群の一篇でも読めば伝わります。


 人間ではなく生命でしかない自分を初めて認めることとなる事を伝える作品が代表作「いのちの初夜」です。著者は、ハンセン病患者は人間ではなく、ただの生命でしかないと言います。どういうことかというと、人間としての存在を否定され、日々ただ生命を永らえていくだけの虚無な存在であるということです。こんなこと考えたことある人っているのでしょうか?人が生きながらにして人をやめざるを得ないという、想像を絶する世界を伝えてくれる唯一無二の作品です。


 他にも、ハンセン病である著者が切り取る命の描写はほかに見ることのできない峻烈さをもっています。特に「吹雪の産声」を強くお勧めします。死を目前にしたハンセン病患者が療養所で産まれる子供を思い、それまで自分自身が生きていくだけで精一杯だったところに、人が産まれいくという事実から、世の中や歴史そのものの存在に気がつくのです。そこでは、自分たちとは無縁な生命力そのものを授かる患者たちの奇妙な喜びが表現されています。


もっと、もっと、知られてほしい作家です。名作を超えています。



定本北条民雄全集 上/北條民雄/川端康成/川端香男里【1000円以上送料無料】

2021年1月16日土曜日

林 修 受験必要論 人生の基礎は受験で作り得る (集英社文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編253日目


 今日、明日と大学入学共通テストが行われます。先週末の豪雪と公共交通機関の混乱に、少し心配していましたが、雪もだいぶ溶け杞憂に終わりそうです。昨年まではセンター試験だったものが、紆余曲折の末試験方法が変更になったり、コロナ禍で勉強に集中できない状態だったり、今年の受験生は本当に大変だと思います。親御さんも心配が絶えないでしょうね。まずは、皆さんの御健闘をお祈りしています。


 さて、今日お勧めする本は、一番有名な予備校講師が語る受験論です。


 本書の主旨は、受験競争は必要。受験勉強をその後の人生に活かしていけるかどうかには、大きな個人差があるよって事だと思います。


 受験競争というと、私と同じようにマイナスのイメージが浮かぶ人が多いと思いますが、本書は「受験は特権的な事である。そもそも勉強できるということは贅沢なこと」という話から始まっていきます。


 なぜ、人は学歴を気にするのかという問いに、著者は、学歴はどの大学に入れたかを示す指標となっており、それはどの程度受験で頑張ったかを示している。受験競争を勝ち抜き、学歴を手に入れるということは、決められた事をどのくらいのレベルでやったかの証明になると、こたえています。


 このように肯定的に受験競争を捉えている著者ですが、私が一番印象に残った言葉は、受験競争のデメリットを尋ねられた時の言葉です。それは、社会が受験という一つの物差ししか用意していないことから、受験の勝者が全人的に優れているような錯覚をして、敗者を不当に低く評価する傾向が生じていること、だそうです。著者は、この歪みを正すため、社会が沢山の物差しを用意してそれぞれの能力で頑張れる世の中になるよう、改善を望んでいます。


 本書は編集者からのインタビュー形式で書かれた本です。結局何言っているか分からない、よくある雑誌のインタビュー記事とは違い、本書では著者の受け答えの論旨が明確で、まわりくどくなく、とてもわかりやすい本になっています。やはり予備校講師として、人に言葉を伝えてきた著者ならではの特徴だと思いました。


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2021年1月15日金曜日

北村 薫 スキップ (新潮文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編252日目


 新潟日報に載っていましたが、燕市の図書館で、著者や作品名がわからないように3冊の本を入れた福袋方式での貸し出しを行っているそうです。テーマとなっているキーワードだけを頼りに借りるそうです。普段読まないような著者の作品に触れる機会を作りたいとのことで始まった企画とのことです。インターネットでは出来ない、本との出会いを演出する、このサービスがもっと広がると良いですね。


 さて、今日お勧めする本は、17歳の女子高校生が42歳の自分にタイムスリップしてしまう物語です。


 主人公は真理子。物語の最初には17歳の女子高校生として登場します。真理子は大雨で運動会の後半が中止になった夕方、家に帰り、レコードを聴きながらうたた寝をします。目を覚ますと、見知らぬ部屋に、服も全く違うモノになっている事に気が付きます。なんと、自分がつい先程まで居た時から25年も経っていたのです。25年後の世界では、真理子は夫と17歳の娘がいる17歳高校の国語教師となっています。訳のわからないまま、自分だけ独りぼっちな25年後の世界を生きていく事を真理子は決意します。


 私は深読みし過ぎだとは思うのですが、この話を42歳の真理子が単に25年間の記憶を失った物語と解釈しました。確かに全体で語られる17歳の真理子が未来世界で前向きに孤軍奮闘している姿には本当に感動するものがあります。しかし、私がこの作品から、痛烈に感じた事は、私達の心が、いかに記憶に支配されているかという事です。25年間の記憶を失った真理子が、娘に17歳の心や純粋さを感じさせたのであったとしたら、私達の心も若さを取り戻せるのかもしれません。はなはだ勝手ですが、この先真理子が記憶を取り戻し、桜木家に更なる幸が訪れる事を祈っています。名作です。



2021年1月14日木曜日

道尾 秀介 カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編251日目


 サッポロビールとファミリーマートは、デザインの一部に誤表記があることを理由に発売中止するとしていた「サッポロ 開拓使麦酒仕立て」を販売することに決めたそうです。販売中止の理由が「LAGER」を間違えて「LAGAR」としていた事だそうですから、販売再開は当たり前だと思います。しかし、何かあるとネットで叩かれちゃう現代、企業はこんな小さなミスも許されないのでしょうか?もっとも、販売再開を決めたのも、ネットでの反発が原因ですから、言葉がありません。


 さて、今日お勧めする本は、詐欺師が主人公なのですけど、ハートフルなどんでん返しを味わえる物語です。


 前述の通り、主人公は詐欺師のタケ。もともとは真っ当なサラリーマンだったが、転落人生の先で詐欺師となってしまう。詐欺師のコンビを組むのはタケさん。二人の元に、スリの少女まひろと姉のやひろ、その恋人の貫太郎が同居をすることとなる。奇妙な共同生活の中で、タケの転落人生のキッカケとなったヒグチに復讐するための『アルバトロス作戦』が開始される。果たして五人は無事作戦を成功し、復習を果たすことができるのか?


 ミステリーとしてもエンタメ作品としても十二分に楽しめました。登場人物一人一人の過去が切なくて、何度も休憩を入れないと読み進められませんでしたが、最後はとても救われた気がしました。怖いイメージだったタイトルも物語の概要を過不足無く表現した秀逸なものだと驚かされました。すばらしい作品です!



2021年1月13日水曜日

ケン キージー カッコーの巣の上で  (白水Uブックス192/海外小説 永遠の本棚)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編250日目


 すごい寒波も抜けて、ようやく緩んできました。雨も降ってきて雪を溶かしてくれるのですが、屋根の雪が重くなるので、少し心配です。道路脇の雪は例年よりかなり多く積み上げられ、溶けるのに時間がかかりそうですから、車での移動もしばらく不便なままのようです。まあ、あと一月もすれば雪も消えますから、焦らず雪解けを待とうと思います。


 さて、今日お勧めする本は、精神疾患の患者を絶対的な管理下に置く病院を相手に自由を求める男の物語です。


 主人公はマックマーフィー、物語の語り手は、チーフというあだ名のネイティブアメリカンです。マックマーフィーは、刑務所の強制労働を逃れるために精神病を装い、精神病院へ収容されるような、ならず者です。


 そんなマックマーフィーがカッコいい! 刑務所に入れられるただのならず者ですから、絶対的な支配者である病院側の言うことを聞かないんです。むしろ何回怒られても立ち向かう。その姿が、精神病院内で家畜のように飼いならされている患者たちに対して、自分らしく生きる意欲を蘇らせ、病院の雰囲気を変えていきます。数あるエピソードの中でも、特に患者たちで船を借り、釣りに行った話がとても痛快でした。


 ロックな男の生き方をガッツリ教えてくれる小説だと思います。ぜひご一読ください。



2021年1月12日火曜日

橋本 紡 流れ星が消えないうちに (新潮文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編249日目


 今日は、1時間半遅れの始発に乗れたまでは良かったのですが、長岡駅に着いた頃には、豊栄駅から新発田駅間の終日運休が決まりました。このままでは、長岡泊まりになるところでしたが、新発田から通う上司の車に同乗させてもらい、無事帰ってくることが出来ました。幹線道路は問題ありませんが、少し小路に入ると、車のすれ違いができないなど、混乱は続いています。少し緩んで雨も降って来ましたが、早いところ回復して欲しいものです。


 さて、今日お勧めする本は、大切な人が逝き、残された者たちの喪失感について深く向き合う小説です。


 巧と奈緒子、加地くんの3人の物語。巧と加地君は親友、奈緒子と加地君は恋人でしたが、突然の事故で二人は加地くんを失います。加地君の死後1年経って、巧と奈緒子は付き合い始め、半年が過ぎた今を現在として物語は進みます。親友から彼女を奪った感覚が抜けない巧と、目の前の恋人ではなく加地君との思い出が抜けきれない奈緒子。加地君の死から動けなくなってしまった二人が、今はいない加地君と3人で手を繋いで、再び歩き始めるための物語です。


 最初は甘口の恋愛小説かと思ったのですが、決してそうではなく、生と死をとても丁寧に描いた真面目な小説でした。元恋人と元親友がそれぞれ想う故人の思い出が微笑ましくも切ないのです。思い出が鮮やかなほど、襲ってくる強烈な喪失感。そこからゆっくりと立ち直って行こうとする二人の姿にじ〜んときました。作中の加地君のセリフ「どうしたらいいかわからず悩んだ時、じっとして考えていないで、とにかく動いてみること、状況は変わらなくても見え方がかわる」そんな故人の言葉がみんなの救いとなる。


 この本は、私にとっても、亡くなった友達を思い出させてくれる本になってしまいました。なぜなら本書は、泣ける本を紹介して欲しいという亡き友達へ、最後に勧めた本だからです。合掌。



2021年1月11日月曜日

ロバート ウェストール 弟の戦争

  FBでは、雪のけの投稿ばかり、本当に皆さんお疲れ様でした。我が家もそんな三連休。最終日の今日は息子と二人で雪のけです。自分よりバリバリ力強く働く様子を見て、高校生となった息子の頼もしさに感動しました。成績が良いとかスポーツで活躍なども良いのでしょうが、私は子供が家族に支えられる立場から、支える立場になってくれた時の喜びが最高だと思いました。


 さて、今日お勧めする本は、劇場化していく戦争を身近な自分たちの恐怖として、取り戻すための児童文学の傑作です。


 舞台はイギリス、主人公のトムは、3つ下の弟アンディに頼れるやつという意味のフィギスというあだ名を付けています。二人はとても仲の良い兄弟です。フィギスは感受性と好奇心がとても強く、休暇に家族で訪れたスペインで、新聞にあった飢えに苦しむエチオピアの子供の写真にのめり込み、食べ物に手をつけなくなるなど、時々可哀想な他者とシンクロし、家族を巻き込んで大騒ぎになることがあります。12歳になったフィギスは、中東で湾岸戦争が始まったときに、イラク軍の少年兵ラティーフとシンクロしてしまいます。トムは、圧倒的な兵力のアメリカに苦戦するラティーフの姿をフィギスを通じ見て、テレビに映ることの無い戦争の現実を知ることになります。


 本書は小学生から読める児童書なのですが、ここまで中東で起きている戦争の恐怖や悲劇を身近に感じさせてくれる本は数少ないのではないかと思いました。どんどん戦争がその本質を隠され、ショーのようになっていく現状に、著者は憤っているのです。


 本書の重要な登場人物にラシード先生という中東系のフィギスの主治医がいます。そのラシード先生がトムに語りかける言葉が、それぞれ素晴らしいんです。一つ書き抜くと「この戦争は、何人殺したかをくちにするのがはばかられる初めての戦争だ。一般市民はテレビで小ぎれいな映像を見せられて、これが戦争だって信じてるんだろうか。みんな小さな子供みたいに、おとぎ話を信じてるって言うのか。それとも真実から目をそむけたいんだろうか」というものです。


 真実から目をそむけないための第一歩として、ぜひ、ご一読ください。



2021年1月10日日曜日

さだ まさし 解夏 (幻冬舎文庫)


 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編247日目


 今日は秋葉区にある菩提寺まで年始に行ってきました。毎年母が一人で行っていたのですが、大雪で車の運転が大変なため、私が運転手を務めてきました。秋葉区も35年ぶりに積雪が1mを超え、大変な事になっていました。しかし、雪はやんでいたので、美しい雪景色の中をドライブすることが出来ました。雪は不便でどうしようもありませんが、私はこの雪景色を見られるだけでも、ここに暮せて良かったと感じてしまいます。


 さて、今日お勧めする本は、さだまさしさんのマルチな才能に唸らされる小説集です。


 「解夏」「秋桜」「水底の村」「サクラサク」の4篇からなる小説集です。1話が100ページほどあり、割とボリュームがあります。元々作詞に定評のある著者ですが、本書の小説4篇からは、それぞれ違った角度で著者の小説家としての実力を証明する作品群と感じました。まず、本書全体から、言葉の選び方が丁寧で、一つ一つの物語がしっかりしていると感じました。


 その四つの作品それぞれで、味わいがちがいます。表題作「解夏」では、視力を失いゆく難病に罹った主人公が、教職をやめて故郷に戻ります。失明する前に故郷の風景を目に焼き付けようと、長崎の街を歩き回ります。その主人公の目を通し見る長崎の風景の描写力に圧倒されました。


 また、「秋桜」では、長野の田舎に嫁いで来たフィリピン妻の境遇に人間関係の奥深さを感じ、「水底の村」では、切ない恋愛を振り返り、「サクラサク」では、痴呆が進む父親の言葉に人生の教訓を得る事が出来ます。


 4篇それぞれ、どの作品にも涙腺を刺激する一文が含まれており、まいりました。ぜひご一読ください。




2021年1月9日土曜日

渋沢 栄一 論語と算盤 (角川ソフィア文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編246日目


 今日は雪で出かけるのも一苦労ですから、家でサッカー観戦です。第99回全国高等学校サッカー選手権大会では、昨年に引き続き新潟県代表帝京長岡高校が準決勝まで進んでいます。相手は山梨学院高校。前半早々に2点を取られ、勝負あったかと思いましたが、後半に2点を取り返し同点。その後も攻め続け、あと一歩というところまで行きましたが、後半も同点で終わりPK戦になりました。1年生GK佐藤くんが好セーブをみせましたが残念ながら敗れてしまいました。しかし、2年連続ベスト4は立派な事だと思います。帝京長岡のお陰で、我が県のサッカーもレベルが上がり、本当にありがたい事だと思います。


 さて、今日お勧めする本は、今年の大河ドラマ「青天を衝け」の主人公で、「日本資本主義の父」とも称される渋沢栄一の代表作です。


 タイトルにある、算盤は経済活動全般を指して使われています。このタイトルは、渋沢が道徳に則った経済活動が大切であると信念を持っている事からつけられているとのことです。


 渋沢は江戸時代の富農の生まれですが、論語などを学び、父親に同行して商いを学ぶなど、比較的教育環境に恵まれていた人です。そこが根本にあるのか、本書を通して渋沢が訴えるのは、教育の大切さです。とりわけ、江戸時代は学問は武士の特権で、商人、農民には不要とされていたとのことですが、渋沢はこれに異を唱えます。むしろ、商売には道徳が必要であり、論語を勉強することは息の長い繁盛をもたらすと説きます。


 本書では、豊臣秀吉や徳川家康など歴史上の人物を例に挙げ、その長所や努力について説明していきます。江戸時代の人が語る歴史上の人物評は何か生々しく思えて参考となります。


 とにかく、本書では勉強の大切さが何度も語られます。武士しか習うことができなかった道徳を明治になり一般市民が学べるようになったのに、学んでいないのは勿体無いと訴えています。


 渋沢の描く理想郷は、よく学び道徳を根本に据えた商売に励む国民による国家だと思われます。少し難しくて読みにくい本ではありますが、渋沢の願った未来になっているのか本書を読んで確かめてみると良いと思います。 



2021年1月8日金曜日

高橋 克彦 火怨 北の燿星アテルイ 上下巻(講談社文庫)

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編245日目


 アメリカでは、トランプ大統領の支持者が、バイデン氏の大統領選勝利を認定する手続きを阻止するため、連邦議会議事堂に多数乱入し、占拠したそうです。正直言って、これは民主主義国家のすることではありません。ただのテロ行為ですからね。トランプ大統領は、任期を待たず罷免される動きもあるそうです。いずれにせよ、歴史上類をみない汚点を残してしまいました。とても残念に思います。


 さて、今日お勧めする本は、日本史の常識である大和政権歴史観をひっくり返してくれる蝦夷主観の小説です。


 舞台は、平安時代の陸奥、今の宮城県北部です。多賀城まで進出してきた大和政権と隣接して、平和に暮らす蝦夷の民がいました。しかし、その平和も朝廷の大軍に踏み躙られようとします。蝦夷の誇りと自由を守るため若きリーダー阿弓流為は遊撃戦で迎え撃ちます。


 一度は朝廷の大軍を退けた蝦夷たちの前に、坂上田村麻呂を将とした朝廷の逆襲がはじまります。坂上田村麻呂の剛柔併せ持つ攻めと、長く続く戦いに疲れた蝦夷は崩壊の危機を迎えます。そして、リーダー阿弓流為は、民のため命を捨てる覚悟を決めます。


 この小説を読んで、完全に私の歴史観が変わってしまいました。歴史上の逆臣とされる蝦夷と現代に生きる私たちの長い時間や立場のミゾを埋めて、共感をもってその時代を追認していくような不思議な体験をさせてくれる小説です。鉄砲も存在しない戦い。刀と馬術さえ優れていれば、どんな大軍にも立ち向かっていける。そんな気分にさせてくれます。ラストはかなり切ないですが、名作です。 




 

2021年1月7日木曜日

高江洲 敦 事件現場清掃人が行く (幻冬舎アウトロー文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編244日目


 今日は大荒れの天候という事で、新潟県内JR全線は計画運休。午前中は晴れ間も見える良い天気でしたが、午後から予報どおりの大荒れ。西蒲区でトラックが横転するなど被害が出ているそうです。皆さまお気を付けてください。


 さて、今日お勧めする本は、ご遺体に関するお仕事ドキュメント、ちょっとクセが強いのでご注意です。


 本書の著者は、孤独死や、自殺、事件現場の後始末を生業とする、特殊清掃業のプロフェッショナルです。そのプロが、特殊清掃の現場で起こる様々な出来事を伝えてくれます。


 「孤独死」という言葉は最近よく聞くようになりました。しかし、孤独死の始末はどうなされているのかは、あまり知りたくないし、実際あまり語られることもなかったと思います。著者の語る死の現場は、正直気持ちのわるい話ばかりですが、そこに死のリアリティがあり、生の哲学があると感じます。


 著者が言うには、幸せを求めて一人で生きる人生を選び、その延長線上に孤独死があるのなら、それは不幸なことではない、しかし、遺された人の迷惑になる事があるのも事実だと。キモ奥深い話です。



2021年1月6日水曜日

藤沢 周平 密謀 上下巻(新潮文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編243日目


 年末に買ったブーツがすでに浸水し始めて、雪の中で履くには適さない状態となりました。やむなく、昨年まで履いていたおっさんブーツと同じ商品をネットでオーダーしました。この商品、見た目はイマイチですが、機能は抜群。次は3代目、もう10年くらいのお付き合い。この時期の履き物の必須条件は防水機能だと思うのですが、雪の降らない地方では、そこまで重視しないのでしょうか?改めて地域間での意識の差を感じます。


 さて、今日お勧めする本は、上杉景勝と直江兼続主従を描いた歴史小説。


 本書では、上杉景勝と直江兼続はもちろん、謙信から続く越後人の性格を、芯の強さとして表現しているところが印象的です。


 ただ、一つダメ出しするなら、五十公野城攻防戦の記述はちょっといただけません。なぜなら五十公野城には深い堀も石垣もありませんから。直江兼続陣の位置も違うし…。いくら小説とはいえ、もうちょっと調べてほしかったと思いました。


 下巻では、いよいよ関ヶ原へと時代は進んでいきます。本書では石田三成と兼続の関係描写が上手いと感じました。三成は兼続をたのみとしますが、兼続は冷静に三成との距離を保とうとします。なぜ家康を追撃しなかったのかと言う歴史上の謎とされているところの答えも、腑に落ちました。


 本書から、家康についてあらわした印象的なところを書き抜きます。

「天下を争え、と景勝には言ったが、家康との抗争の始まりはそれではない。おのれの欲望をむき出しに、義を踏みにじって恥じない人物に対する憤りが、兼続や石田を固く結びつけたのである。」

「天下人の座に坐るには、自身欲望に首までつかって恥じず、人の心に棲む欲望を自在に操ることに長けている家康のような人物こそふさわしい。」






2021年1月5日火曜日

今野 敏 初陣 隠蔽捜査3.5 (新潮文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編242日目


 コロナの勢いがおさまらず、緊急事態宣言が出される見通しとのこと。昨年暮れにヨーロッパ各国で非常事態宣言が出された国も多かったので、日本も出した方が良いんじゃないかと考えた人も多いと思いますが、そのような国は、人口あたりで言えば、10倍以上の感染者数を抱えている国です。日本では、ここからまた、緊急事態宣言から、ロックダウン、救済政策とするためのお金がないので、正直有効な手段を打つ余裕が無いと思っています。政府には頑張って検討していただきたいです。


 さて、今日お勧めする本は、警察小説の人気シリーズ隠蔽捜査のスピンオフ短編集です。


 本作は、シリーズ主人公竜崎伸也の幼馴染で同期のライバル伊丹が主人公の短編集となっています。シリーズでの設定(役職等)をそのまま使っているので、シリーズの読者としては読みやすい作品です。


 私大卒キャリアという、警察官僚としては反主流派である伊丹はそのコンプレックスを埋め合わせるため、刑事部長という地位にありながら、現場主義を標榜し懸命に仕事にあたっています。そんな日々、問題に行き詰ると伊丹は竜崎に意見を求め、それに対して竜崎は愛想のなく原理原則の言葉を返します。それを受け、伊丹が解決に至るという、このやり取りがとてもイイ。原理原則の破壊力がすごいとでも言おうか、スカッとします。


 この短編集だけ読んでも、面白い作品ですし、シリーズの世界に入って行くためのガイドとしても良いので、未読の方にもお勧めです。






2021年1月4日月曜日

山田 宗樹 百年法 (角川文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編241日目


 今日は仕事始めの方が多かったのではないでしょうか?しかし、新潟県内は雪でJRがまともに動いていません。私は早めに家を出て、30分遅れで到着した普段の2本前の電車に乗れたので、定時に職場に着きました。年明けからこの悪天候の中でも、定時運行の回復のため懸命に雪と戦うJRの方々に感謝です。


 さて、今日お勧めする本は、人類が不老不死を手に入れた世界を描く小説です。


 不老不死の技術を手に入れた国家の将来を守るため、その命に百年という制限を設ける法律、それが生存制限法(百年法)です。上巻では滅私奉公で百年法の成立を目指す官僚たちが描かれます。国民は国家のために自分の命を削る様な法律の成立を望むのか?壮大な物語が始まる上巻です。


 下巻では、百年法制定後の世界。不老不死の技術と共に必要な寿命を制限する法律、百年法はかろうじて制定され、日本消滅の危機は去ったものの、新たに百年法に従わない拒否者が発生し増加するという問題を抱えた日本。権力をめぐる争いの中、不治の病という脅威がまたも国家の存続を脅かしていきます。そのとき日本国民にせまられた決断とは? 


 現代社会は良くも悪くも生命に限りがあることが前提に成り立っているシステムであることを痛感した作品でした。かなり重いテーマでありながら、ここまで読み易く書き上げてくれた著者の努力に感謝です。ぜひ、ご一読をお勧めします。




2021年1月3日日曜日

司馬 遼太郎 峠 上中下巻(新潮文庫)

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編240日目


 昨年は全く雪の無かった異常な冬でしたが、今年はすでに十分すぎる雪が降ってくれました。年末年始の雪のけで早くも身体が悲鳴を上げています。除雪車も正月休み返上で、一日中働いてくれます。オペレーターを始め関係者の方々に感謝です。


 さて、今日お勧めする本は、司馬遼太郎が長岡藩家老河井継之助の奮闘を描いた長編小説です。


 物語は、冬支度に華やぐ長岡城下から始まります。長岡が雪国である事を憂えています。そして安政の大獄の行われている時期の江戸に行きたいと、長岡藩の家老に赦しを乞います。武家の世が終わる激動の時に長岡藩がどうするべきなのか考えたいからです。


 継之助は陽明学の徒で、自分の主題に命を燃やし、危機的状況にあっては自ら行動して、活路を切り開くという主義の人であり、常に狂人と例えられるほど、物事を考えているそうです。そのように継之助の強烈な個性が描かれていくのですが、その極みとして記されるのは、春を待つ事なく、大雪の中、命懸けで三国峠を越えていくエピソードです。


 序盤から継之助のキャラクターが強烈でどんどん物語に引き込まれていきます。その後、継之助の名を知らしめた戊辰戦争へと運命が流れていきますが、継之助から見た歴史が面白いです。


 映画化もされ、今年上映とのことなので、ぜひ原作も手に取ってみてください。

 




2021年1月2日土曜日

三浦 しをん 風が強く吹いている (新潮文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編239日目


 1月2日には、我が家では箱根駅伝を観ていますが、毎年様々なドラマがあり目が離せません。この競技最大の魅力は10人の総合力の争いも良いのですが、各区間の区間賞争いや、区間新記録への挑戦、ごぼう抜きで順位を上げていく様子など、ずっとテレビから離れられません。今年は5区で開志国際高出身の山本選手が大活躍してくれました。あいだにはさまれるCMも、黒ラベルの大人エレベーターシリーズで、私は好きなんです。もしかして、私の黒ラベル推しは箱根駅伝で毎年刷り込まれているかなのかもしれません。


 さて、今日お勧めする本は、この箱根駅伝を目指す大学生たちの青春を描いた青春小説です。


 物語は、新年度を控えた3月から始まります。4年生の灰二(ハイジ)は寛政大学の弱小陸上部で一人箱根駅伝に出場する夢を見ていますが、肝心のメンバーが揃いません。ハイジの住む竹青荘にはハイジを含め9人の住民が居ますが、ハイジ以外誰一人竹青荘が、寛政大学陸上競技部錬成所という正式名称を知らない素人集団なのです。


 そして、その3月のある夜、万引きをして走って逃げる天才ランナーの走(かける)と出会うのです。走を迎え、10人となった竹青荘住人に対し、ハイジは箱根駅伝出場を半ば強引に宣誓してしまいます。


 ニコチン中毒のニコチャン先輩や、クイズマニアのキング、漫画オタクの王子など、箱根駅伝はおろか、スポーツにも不適合なメンバーをなだめすかし、時には強権発動して、ハイジは箱根駅伝ヘの挑戦を諦めようとしません。


 物語全体で受ける感動は素晴らしいのですが、途中どこを切り取って読んでも、面白く感動的です。この10人の挑戦はどの様な結末を迎えるのか?ぜひ手に取ってお確かめください。


2021年1月1日金曜日

ひすいこたろう 他1名 前祝いの法則

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編238日目


 今年は、町内会の新年会も無く、あまりに何もないので真っ昼間から家族に隠れてビールを飲んでます。個人的には、コロナ撲滅達成の前祝いということにして、言い訳しながら過ごす新春です。


 さて、今日お勧めする本は、引き寄せの法則の指南書です。


 本書の主旨は、願い事や目標があったなら、先に叶った事にしてお祝いすると叶いますよって事です。


 本書では、武田鉄矢を例の一つに挙げ、まだ全く売れなかった時、夢を諦めようと母親に相談をしたところ、母親はその場で祝杯をあげ、まだ売れていない息子の成功を前祝いして、息子のヒットを願ったそうです。その後『母に捧げるバラード』が売れ、タレントとして成功したそうです。


 これだけでは、怪しい本のように感じるかもしれませんが、ただ純粋に夢を叶える事に前向きにさせてくれる本です。新年を迎え、夢が叶うことを信じてみるのも良いと思いますので、ご一読をお勧めします。



2020年に読んだ本のまとめ

2020年の読書メーター
読んだ本の数:124
読んだページ数:35005
ナイス数:1709

仕事が速い人はどんなメールを書いているのか仕事が速い人はどんなメールを書いているのか感想
◎メールへの理想的な対処法をメインとしながら、仕事全般のスピードアップに活用できる、仕事術を指南する本。仕事の速い人のメールは「目的」「ビジュアル」「返信しやすさ」「言葉」「処理時間の削減」の5つを気を付けている。仕事の速さは、「先まわり」の力が重要との事でした。
読了日:01月03日 著者:平野友朗
《増補改訂版2020》本好きのためのAmazon Kindle 読書術: 電子書籍の特性を活かして可処分時間を増やそう!《増補改訂版2020》本好きのためのAmazon Kindle 読書術: 電子書籍の特性を活かして可処分時間を増やそう!感想
◯kindleの利点だけに限らず、読書術や読後の活用法など、幅広く意見を述べた本。さまざまな書籍が紹介されており、それもためになる。【書き抜き】電子書籍よりも紙の本のほうが好きだからKindleは必要ないとか、Kindleがあるから紙の本は必要ないというような「ゼロ」か「イチ」かの発想ではなく、生活に電子書籍を取り入れることで、より豊かな読書ライフを送れるという発想が自然だと考えています。
読了日:01月05日 著者:和田稔
上に行く人が早くから徹底している仕事の習慣上に行く人が早くから徹底している仕事の習慣感想
○幅広にビジネスのいろはを指南する本。目新しいことは無いが、耳にいたいこともあった。【抜書】開始時間の5分、 10 分前に来て、普段顔を合わせない他部門のメンバーや社外の人たちと雑談がてら情報交換をしています。そのわずかな時間で会議案件とは別の案件に対して議論し、結論まで出してしまう人もいます。  せっかく人が集まる場なので、有効活用しようとする姿勢が見られます。
読了日:01月09日 著者:中尾 ゆうすけ
池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)感想

読了日:01月16日 著者:石田 衣良
下町ロケット ゴースト下町ロケット ゴースト感想

読了日:01月26日 著者:池井戸 潤
沈黙のパレード沈黙のパレード感想
◎どんでん返しの連続に、最後は何が本当なのか分からなくなる。自分のたてた仮説をあえて語らず捜査のヒントを与え続ける湯川は、とことん科学者的なスタンスを持ち続けていてすごい。
読了日:02月12日 著者:東野 圭吾
小さな習慣小さな習慣感想
◎ 書いてあることを実行しなければ、この本の伝えたい事は、伝わらないと思います。目標を笑ってしまうほどハードルを下げて、習慣化する。ずっと同じ事が書いてあるので、読み物としてはつまらない著書ですが、下手すると、自分の人生すら変えてしまうパワーがある著書でした。
読了日:02月20日 著者:スティーヴン・ガイズ
下町ロケット ヤタガラス下町ロケット ヤタガラス
読了日:02月22日 著者:池井戸 潤
自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書感想
◎人を育てるというのは、自ずから育っていくように仕向ける事との事。工業よりも農業に近い。  以下コピペ。 真の率先垂範とは、能力で部下と張り合うことではない。部下の能力発揮をどうやったら最大化できるかに意を砕くことである。
読了日:02月28日 著者:篠原 信
凡人を達人に変える77の心得凡人を達人に変える77の心得
読了日:03月07日 著者:野村克也
ルパンの娘 (講談社文庫)ルパンの娘 (講談社文庫)
読了日:03月08日 著者:横関 大
ルパンの帰還 (講談社文庫)ルパンの帰還 (講談社文庫)
読了日:03月18日 著者:横関 大
ホームズの娘 (講談社文庫)ホームズの娘 (講談社文庫)感想

読了日:03月22日 著者:横関 大
目からウロコのコーチング―なぜ、あの人には部下がついてくるのか? (PHP文庫 は 46-1)目からウロコのコーチング―なぜ、あの人には部下がついてくるのか? (PHP文庫 は 46-1)感想
◎答は相手の中にある。コーチングとは、会話によって、相手が自発的に行動することを促すコミュニケーションスキルとの事。人の育成には「アメ」も「ムチ」も使わないそうです。
読了日:03月29日 著者:播摩 早苗
ステップ (中公文庫)ステップ (中公文庫)感想
◎ 生と死と向かい合うための物語。 以下書き抜き、 悲しみや寂しさは、消し去ったり乗り越えたりするものではなく、付き合っていくものなのだと──誰かが、というのではなく、僕たちが生きてきた日々が、教えてくれた。
読了日:04月07日 著者:重松 清
鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋
読了日:04月10日 著者:鴻上 尚史
読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術感想

読了日:04月13日 著者:田中 泰延
自分の中に毒を持て<新装版> (青春文庫)自分の中に毒を持て<新装版> (青春文庫)感想
◯岡本さんは全力で様々な既定のものと戦ってきたのだと知ることができた。「芸術は爆発だ」と言う言葉はあまりに有名ですが、この言葉は一般の我々が持つイメージとは全く違う言葉のようです。以下、書き抜き。私の言う「爆発」はまったく違う。音もしない。物も飛び散らない。 全身全霊が宇宙に向かって無条件にパーッとひらくこと。それが「爆発」だ。人生は本来、瞬間瞬間に、無償、無目的に爆発しつづけるべきだ。いのちのほんとうの在り方だ。  
読了日:04月21日 著者:岡本 太郎
エンドレス・スリープエンドレス・スリープ感想
◎死は怖いもの。人は死とどう向き合うのかをテーマに考え抜かれた作品。以下書き抜き、病気の宣告を受けるまでは、もっと冷静に自分の死を考えることができた。だが体が弱り、自由が奪われていく中で、これまで考えてきた死生観が崩れてしまった。死というものをいかに他人事と考えていたのか痛感した。正直に言おう。俺は死ぬのが怖い。
読了日:04月25日 著者:辻 寛之
「空気」と「世間」 (講談社現代新書)「空気」と「世間」 (講談社現代新書)感想
◎空気を読めって言葉は使うけど、その空気って何?著者は、空気とは、日本人が歴史的に所属してきた、世間の一部が壊れて流動化したものと説明しています。空気、世間、社会などについて深く考察し、私たちが生きていくために必要な知恵を与えてくれる本だと思います。
読了日:05月01日 著者:鴻上尚史
果断 隠蔽捜査2 (新潮文庫)果断 隠蔽捜査2 (新潮文庫)感想
☆☆降格人事をくらっても、新しい職場でマイペースに仕事をこなす竜崎がかっこいい。どこにいてもベストを尽くす。結果は後からついてくる。
読了日:05月06日 著者:今野 敏
なかよし小鳩組 (集英社文庫)なかよし小鳩組 (集英社文庫)感想
☆ラスト5ページが最高。アル中でバツイチの主人公と、離れて暮らす娘の家族ドラマが感動的。最後のシーンに涙が止まらない。
読了日:05月08日 著者:荻原 浩
八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)感想
☆☆ブックカバーチャレンジがきっかけで再読。やはり面白い。31聯隊はもちろん、5聯隊も必死に頑張った。しかし、かくも違う結果となってしまう。自然も怖いが、人間も怖い。
読了日:05月10日 著者:新田 次郎
妻のトリセツ (講談社+α新書)妻のトリセツ (講談社+α新書)感想
☆女性は共感することにより、子供や自分を危険から守るリスクマネジメントをしているなど、男には全く気づけない知見を得られる。分かりやすく夫婦間のトラブルを回避する言葉選びを学ぶことが出来て、実践的に役立っています。
読了日:05月11日 著者:黒川 伊保子
林修の仕事原論 (青春新書インテリジェンス)林修の仕事原論 (青春新書インテリジェンス)感想
◎仕事に限らず、全てにおいて勝ち負けで考える林先生の物事の捉え方、アプローチの仕方を知ることができる。ハウトゥ本では無いので、物足りないと感じたが、タイトルにも原論とあるので、考え方が中心に語られているのは当然。戦略的な考え方を身につけるには、良いテキストと思う。
読了日:05月12日 著者:林 修
筋トレが最強のソリューションである マッチョ社長が教える究極の悩み解決法筋トレが最強のソリューションである マッチョ社長が教える究極の悩み解決法感想
◎筋トレは、肉体を良い状態に保つためだけでなく、様々な悩みを軽減したり、自己啓発などのモチベーションアップに効果的との事。以下書き抜き、筋トレをただの運動だと思ったら大間違いだ。運動というよりは座禅や礼拝に近い。宗教だ。ストレス過多や人生が辛い時には、筋トレをして悪い流れを断ち切る。
読了日:05月14日 著者:Testosterone(テストステロン)
超 筋トレが最強のソリューションである 筋肉が人生を変える超・科学的な理由超 筋トレが最強のソリューションである 筋肉が人生を変える超・科学的な理由感想
☆ 前作は、筋トレ賛美の語句だけ撒き散らされていたイメージだったが、本書は、スポーツ科学の研究者の共著となっている。筋トレで人生は必ず好転する。それはなぜか、ということを論理的に説明しているのが本書だ。
読了日:05月15日 著者:Testosterone,久保 孝史
夢をかなえるゾウ夢をかなえるゾウ感想
☆ 世の中には沢山の自己啓発本がありますが、どんなに、ありがたくためになる事が書いてある本でも、読んだだけでは、成長する事は無い。とにかく行動と体験が自分を成長させてくれると、実践することを徹底して勧めてくる本です。
読了日:05月15日 著者:水野 敬也
失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!感想
◯世界の偉人をその業績だけでなく、失敗を大きく取り上げて紹介した本。どのくらいの学年を対象にしているのかわからないが、取り上げている内容が深いので、児童書というより、中高生レベルで作り込んだ方が良かったように思います。
読了日:05月16日 著者:大野 正人
田中角栄 100の言葉 ~日本人に贈る人生と仕事の心得田中角栄 100の言葉 ~日本人に贈る人生と仕事の心得感想
☆☆田中角栄さん最高です。人についての考察が深い。しかし、哲学者ではない。なぜなら、事を為して人を幸せにしようと仕事をしているから。だからこそ、政治について、その果たすべき役割を真剣に考えてている。 以下書き抜き、「数億円のトンネルを作るなら最低何万人の利用者が必要と考えるのが官僚だ。利用者が150人でも欠かせないものは作る、それが政治だ。」
読了日:05月17日 著者:
グラハム・ベル空白の12日間の謎グラハム・ベル空白の12日間の謎感想
☆☆ベルの晩年は、自ら発明した電話から距離を取ろうとしているように感じる。これこそが疑惑の答えであり、決してベルが望んだ未来ではないように感じる。
読了日:05月23日 著者:セス・シュルマン
究極の科学的肉体改造メソッド タバタ式トレーニング究極の科学的肉体改造メソッド タバタ式トレーニング感想
◎タバタ式トレーニングの解説本。科学的で難しい内容になっているが、半分わかればOKと考え、読みきった。有酸素運動も無酸素運動もこれ一発で、良い様です。ただ、4分考間で、立ち上がれないほど追い込む必要があり、死ぬ程キツイらしい。
読了日:05月25日 著者:田畑 泉
ステップ (中公文庫)ステップ (中公文庫)感想
☆シングルファザーの子育て奮闘記。最終章では、涙腺崩壊します。
読了日:05月26日 著者:重松 清
ぼくは猟師になったぼくは猟師になった感想
☆☆猟師になるということは、獲物を取ることよりも、とった後の処理が大変なのだと思う。著者の生活は楽しそうですが、とても真似できるものではありません。
読了日:05月28日 著者:千松 信也
古筆学の創始者、小松茂美の闘い 満身これ学究古筆学の創始者、小松茂美の闘い 満身これ学究感想
☆☆ 夢をかなえるためには、どうすれば良いのか?多くの人は、努力することと答えるであろうが、それでは足りない。もう一つ大切なことは、人に頼ることです。  この本で語られる小松茂美は、がむしゃらに研究に突き進んでいく過程で、様々な著名人に手紙を書き、協力を依頼します。小松茂美の思いに応えた人々がさらに彼を夢に近づけてくれます。  全てを巻き込む覚悟や情熱が必要なのだと思います。  ぶっちゃけ、「古筆学」などわからなくても、小松茂美の頑張る姿や残した業績にエネルギーをもらえる本です。
読了日:05月31日 著者:吉村 克己
できる課長は「これ」をやらない!できる課長は「これ」をやらない!感想
△中間管理職は、何のために存在するのか?それは、上司の求める成果を上げるため、部下に指示して仕事を進める事。そして、部下を成長させること。近年、部下に寄り添うマネジメントがもてはやされているが、そのほとんどは、組織にとって悪影響を及ぼす事を指摘して、組織第一のマネジメントを勧めている。 その主張はもっともですが、意外性にこだわり過ぎのきらいがある。
読了日:06月01日 著者:安藤 広大
高村光太郎詩集 (新潮文庫)高村光太郎詩集 (新潮文庫)感想
◎猛獣篇の力強さと、智恵子抄の優しさがとても良かった。
読了日:06月04日 著者:高村 光太郎
日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で感想
☆言葉が、これほどまでに自分達の文化に貢献してきた事を知ることが出来ました。〈普遍語〉〈国語〉〈現地語〉〈母語〉〈話し言葉〉〈書き言葉〉〈図書館〉〈読まれるべき言葉〉〈叡智を求める人〉〈翻訳者〉〈テキスト〉〈テキストブック〉など、この本の中で意味づけられた言葉が多く、読み通すには苦労しました。
読了日:06月08日 著者:水村 美苗
やりたいことをやれやりたいことをやれ感想
○いろいろな社長がいても良い。本田宗一郎さんは、やはり徹底した技術者なのだと思った。まず、自分でなんでも作ってみるという行動主義。作った物にこそ、作った人の心が宿るという哲学。生まれながらの技術者だ。藤沢武夫さんとの出会いがやはりHONDAがここまで大きくなる条件だったのだろう。ただ結局、本田宗一郎さんが、人を信じる気持ちの大きさを持ち合わせていたから、素晴らしい人材が集まったのだと思う。
読了日:06月12日 著者:本田 宗一郎
自重筋トレ100の基本 (エイムック 2630)自重筋トレ100の基本 (エイムック 2630)感想
○自重筋トレのバリエーションが100も紹介されてて良い。ただ、筋トレは週二回がベストと言うからには、週間のメニュー例をもっとたくさん、レベルごとに紹介してもらいたい。
読了日:06月13日 著者:比嘉 一雄
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルーぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー感想
☆ 「人間は人をいじめるのが好きなんじゃないと思う。…罰するのが好きなんだ」著者の息子(中一)の言葉です。いじめ問題の根本を「罰したい欲求」と喝破するほど大人びた息子さんと著者の日々のやりとりや、イギリスの社会問題について語られる事の多いエッセイです。  コロナ禍で問題となった自粛警察や、SNSでの誹謗中傷など、「罰したい欲求」は様々な問題を引き起こします。差別やいじめなどの問題を考える機会として一読をお勧めします。
読了日:06月14日 著者:ブレイディ みかこ
AX アックス (角川文庫)AX アックス (角川文庫)感想
◎殺し屋兜の恐妻家ぶりが半端では無い。恐妻家というより、奥さんと息子への愛情を深く感じた。
読了日:06月16日 著者:伊坂 幸太郎
プリズナートレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレプリズナートレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ感想
◎筋トレ初心者の私としては、どんなメニューをどれくらいやれば良いのか教えてくれるテキストが何よりありがたい。それも、最初のひと月はゆるく、少しずつステップアップしていき、最終的には見かけだけでなく使える筋力が手に入るというからには、しばらく頑張ってみたいと思う。
読了日:06月18日 著者:ポール・ウェイド
感染症 増補版-広がり方と防ぎ方 (中公新書 1877)感染症 増補版-広がり方と防ぎ方 (中公新書 1877)感想
◎ウィルスについて、ほとんど知識の無い事にあらためて気付かされました。そもそも、ウィルスと細菌の違いをこの本を読むまで説明できなかったのですから。WITHコロナの時代には、ウィルス感染症に対する正しい知識が自分の身を守るのだと言うことを再認識しました。
読了日:06月24日 著者:井上 栄
完パケ!完パケ!感想
◎クリエイトする側にいる、切実さを作品に変えていく力を持った奴と、その切実さに圧倒されつつ、それを持っていない自分とのギャップに妙な劣等感を持つ自分。作者はきっと、切実さなんて境遇に関係なく、その時になれば宿るものと言いたいのだろう。以下書抜、東京中に、日本中に、世界中にいるのだ。こういう奴が。ままならない現実を生きながら、己の中に深い深い作品世界を構築する人間が。それを自分の手で形あるものに昇華させ、ぬるま湯に浸かってぼんやりと人生を楽しんでいる連中を圧倒する。僕のような人間を、打ちのめす。
読了日:06月30日 著者:額賀 澪
賛美せよ、と成功は言った (ノン・ノベル)賛美せよ、と成功は言った (ノン・ノベル)感想
◯会話の応酬を何かのゲームの様に解説しながら進む展開が面白い。ただし、本作のテーマである成功者と失敗者の階層化と言うのは腑に落ちません。成功者は新たな挑戦に踏み出すかもしれないし、失敗者はいつまでも失敗しているわけでは無いと思うからです。以下書抜、でも、成功していない人は、成功した人の近くに行かない方がいい。近くに行ってしまうと、成功が強要してくる。我を賛美せよと。
読了日:07月04日 著者:石持浅海
大富豪アニキの教え大富豪アニキの教え感想
☆☆再読。人を大切にすることを徹底して継続していく事が大事。「人は鏡」人にした事は全て自分に返ってくる。
読了日:07月05日 著者:兄貴(丸尾孝俊)
イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」感想
◎仕事の生産性を上げるには、まず、何を課題として取り組むかにこだわる事が必要。自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さを徹底的に検討する事が大事。
読了日:07月06日 著者:安宅和人
雨の日も、晴れ男 (文春文庫)雨の日も、晴れ男 (文春文庫)感想
◎前向きに生きることの素晴らしさと、難しさを教えてくれる小説。以下書抜、前向きに生きるっていうのは、いつも近くにいる誰かを楽しませ、笑わせ、喜ばせようとする姿勢そのものかもしれない。
読了日:07月07日 著者:水野 敬也
部活はそんなに悪者なのか! ? 脱ブラック部活!  現役教師の挑戦部活はそんなに悪者なのか! ? 脱ブラック部活! 現役教師の挑戦感想
◎ブラック部活など、部活動を一括りに悪者扱いする風潮に意義を唱えるため、書かれた本です。  この本から伝わってくるのは、ひたすら生徒の成長を思う先生の努力です。そこには、ただ部活動中心ではなく、子供達の成長のため、勉強だけでなく、部活動などの多面的な教育の必要性が説かれています。  30年を超える教師生活のなかで、ビジネス本にある業務改善手法など、様々取り入れて、失敗と成功を繰り返し、たどり着いた指導法の数々が書かれており、教育業界だけでなく、ビジネス的にも汎用性があり、参考になります。
読了日:07月08日 著者:猿橋善宏,大利実
老人と海 (光文社古典新訳文庫)老人と海 (光文社古典新訳文庫)感想
◎カジキ漁を生業として生きる老人の話。老人は小さな舟に乗り、遥沖合いで一人自然に立ち向かう。老人はどんな困難に対しても、自分ができるだけの事を淡々と続けている。どんな不幸にも負けず、常に前だけを向いて生きる老人の強さが良い。
読了日:07月10日 著者:アーネスト ヘミングウェイ
読書する人だけがたどり着ける場所 (SB新書)読書する人だけがたどり着ける場所 (SB新書)感想
◎インターネットやSNSに時間を取られ、本を読む人が減っている事に警鐘を鳴らす著者。最近は1日の読書時間がゼロ分と言う大学生が過半数とのこと。同じ文章を読む行為でも、インターネット上の情報を消費する行為と、本の中の物語を擬似体験できる読書では、人生の深みを作るという観点からは全く別物だそうだ。情報化社会の今だからこそ、読書から得られる恩恵を大切にしましょうと様々なジャンルの良書を紹介してもらえる。
読了日:07月12日 著者:齋藤 孝
ほどなく、お別れですほどなく、お別れです感想
◎セレモニーホールの視点から見た、お葬式にまつわる小説。作者の葬儀場でのアルバイト経験から、その業界の描写が細かく、あのお葬式の雰囲気が実に生々しく伝わってくる。途中、霊感と言う飛び道具が出てくるため、トンデモ話のように感じるが、生と死について考えさせられる良書と思う。
読了日:07月13日 著者:長月 天音
夏の庭―The Friends (新潮文庫)夏の庭―The Friends (新潮文庫)感想
◎小学校6年生の主人公とその友達3人組の物語。3人はふとした事から、人の死について興味を持ち、一人暮らしの老人が死んだところを発見するため、近所の何も手入れされていないような古い家に住む老人の観察を始める。老人は始めコンビニ弁当を買って食べるだけの生活をしていたが、主人公達との交流の中、生き生きとした生活に変わっていく。
読了日:07月14日 著者:湯本 香樹実
アンカー (集英社文庫)アンカー (集英社文庫)感想
◎報道側と刑事側で同時進行しながら、一つの事件を解決していく。謎が溶けていく過程が面白く、スピード感があるのでページをめくる手が止まらない。報道側のストーリーでは、型破りだけれど数々のスクープをものにしてきた記者である布施が少しずつメンバーの信頼を得ていき、チームとしてまとまっていく様子が面白い。
読了日:07月16日 著者:今野 敏
自望自棄~わたしがこうなった88の理由(わけ)自望自棄~わたしがこうなった88の理由(わけ)感想
◎本全体に他人と違ったらいけませんか?と言う天邪鬼なトーンで占められています。それでいて、優しい言葉をかけてくれたおばあさんの思い出や、多くの人から慕われつつ定年を迎えるおじさんの話、誕生日にバイト先で生き生き働く女の子など心温まるエピソードが多く、ほっとさせられました。遠藤麻理さんは、本当に周りの人をよく見て生きている方なんだなあと思い、私ももう少し他人に関心を持って見ようと考えた。
読了日:07月19日 著者:遠藤麻理
【第153回 芥川賞受賞作】火花【第153回 芥川賞受賞作】火花感想
◎お笑いってなんなのか、一生懸命考えましたと言う作品。主人公徳永の師匠神谷さんは根っからの芸人。神谷さんには、恋人と結婚するため芸人を辞めるなどといった選択肢もない。泣いている赤ちゃんをあやすのに、全力で自分のお笑いのネタを披露する。神谷さんにはいないばあと言う選択肢が無い。
読了日:07月21日 著者:又吉 直樹
ウイルス―図解雑学 (図解雑学-絵と文章でわかりやすい!-)ウイルス―図解雑学 (図解雑学-絵と文章でわかりやすい!-)感想
◎ 専門用語が多く、難しく思っていたウィルスの世界を図解する事でイメージしやすく学ぶことができた。 逆転写やタンパク質合成など遺伝子の話題にも詳しく触れているので、これから学ぶには良い入門書と思う。
読了日:07月23日 著者:児玉 浩憲
人類対新型ウイルス 私たちはこうしてコロナに勝つ (朝日新書)人類対新型ウイルス 私たちはこうしてコロナに勝つ (朝日新書)感想
◯日本語訳タイトルに騙されました。原題そのまま、インフルエンザの社会史を記したものであり、新型ウイルスという言葉から連想されるコロナウイルスなどについて語ったものではありません。しかしながら、スペイン風邪の被害の大きさや、鳥インフルエンザへ脅威について学ぶことができました。
読了日:07月25日 著者:トム・クイン,塚﨑朝子
ようこそ実力至上主義の教室へ (MF文庫J)ようこそ実力至上主義の教室へ (MF文庫J)感想
◎ラノベで大変な人気との事を聞き、読んでみる。この作品最大の特徴は、登場人物同士の議論だと思う。設定やストーリーは、やや手垢がついた感が否めないが、登場人物が議論しながら少しずつ自分達の置かれた立場、為さねばならぬ事を明らかにしていく展開は、ページをめくる手が止まらなくなる。シリーズ第1巻は入学式から最初の中間テストと、まずは設定の説明に終始している。
読了日:07月26日 著者:衣笠彰梧
ようこそ実力至上主義の教室へ2 (MF文庫J)ようこそ実力至上主義の教室へ2 (MF文庫J)感想
◯須藤の暴力をもととしたC組との直接対決。すでに主人公綾小路のチート力が威力を発揮し始める。新たにB組との共同戦線もあり、今後の展開が楽しみになってくる。佐倉の事情が明らかになっていくところがもう一つのストーリーとなっている。
読了日:07月26日 著者:衣笠彰梧
新しいウイルス入門 (ブルーバックス)新しいウイルス入門 (ブルーバックス)感想
◎ウイルスの構造や感染の各段階についての説明がわかりやすい本です。ウイルスや真核生物が生まれた過程に対する仮説が非常に面白かった。
読了日:07月30日 著者:武村 政春
ようこそ実力至上主義の教室へ3 (MF文庫J)ようこそ実力至上主義の教室へ3 (MF文庫J)感想
◯無人島での一週間サバイバルが課題の試験。ABCDそれぞれのクラスが、それぞれの戦略で課題に挑む。まずは、クラスの団体行動をどの様に進めていくか?あらためてDクラスは団結力のなさが際立ちます。その中で、こっそり高得点を狙う主人公綾小路のチート力が半端ではない。平田の闇も少し見えて面白くなってきた。
読了日:07月31日 著者:衣笠彰梧
ようこそ実力至上主義の教室へ4 (MF文庫J)ようこそ実力至上主義の教室へ4 (MF文庫J)感想
◯無人島サバイバルの試験が終わり、クルーズ船内で特別試験の後半戦が行われる。試験は『シンキング』を問うもの。干支になぞらえた12のグループに分け、それぞれのグループに割り振られた優待者を当てるもの。今回は、軽井沢と平田の過去が明かされ、新たな関係が築かれていく中で主人公綾小路は、さらに闇の濃いキャラクターになっていく。高円寺、龍園、一ノ瀬の能力の高さに圧倒される。
読了日:08月05日 著者:衣笠彰梧
ウイルスがわかる―遺伝子から読み解くその正体 (ブルーバックス)ウイルスがわかる―遺伝子から読み解くその正体 (ブルーバックス)感想
◯著者自身のvero細胞を使ったウイルス研究について語られている箇所は非常にドラマチックで、研究現場の臨場感が伝わって来た。まるで、大学の講義のように、ウイルスについての説明が続くが、内容が広く専門的で、素人にはついていけないレベルでした。しかし、専門用語などの予備知識を持った上で読めば、ウイルス研究の有用性はもちろん、奥深さと可能性が伝わってくる良いテキストだと思います。
読了日:08月12日 著者:清水 文七
ようこそ実力至上主義の教室へ4.5 (MF文庫J)ようこそ実力至上主義の教室へ4.5 (MF文庫J)感想
◯夏休み後半の出来事が並ぶスピンオフ短編集。本編同様、謎解きの要素もあり、単なる短編ではないように工夫がある。須藤の良いところが見られるところと、葛城の弱い側面が見られたところが良かった。綾小路については、チートな所は良いが、掴みどころがなく、あまり好きになれない主人公である所は相変わらず。
読了日:08月12日 著者:衣笠彰梧
ロスジェネの逆襲 (文春文庫)ロスジェネの逆襲 (文春文庫)感想
☆人は何のために働くか、問われる作品だったと思う。瀬名の父は借金返済の為に働き生命保険で返済すべく命を絶った。主人公半沢は、自分を必要とされる場所にいてそこで活躍する事が一番幸せという。そして、よくある世代論についても、ロスジェネ世代の不満に理解を示しつつ、その問題意識から得た答えで、世の中を変えていけと説く。働く人全てに力を与えてくれる作品。
読了日:08月14日 著者:池井戸 潤
銀翼のイカロス (文春文庫)銀翼のイカロス (文春文庫)感想
◎帝国航空の再建という仕事が、頭取のリクエストにより旧T派閥の審査部から半沢にふられてくる。行内の派閥の争いもある中、帝国航空の再建計画に修正を加え、再建の道筋は出来たかのように見えた。しかし、その緒についたところで、政界では野党が政権をとり、せっかくまとめた修正再建計画を反故にし、国土交通大臣の私設機関タスクフォースが帝国航空再建のため各銀行に大規模な債権放棄を要求してくる。半沢は金融機関のスタンスを堅持し、政治家からの無茶な要求に一歩も引かず、対峙していく。半沢のシンプルかつ強い仕事感に感動を覚える。
読了日:08月14日 著者:池井戸 潤
反応しない練習  あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」感想
◎仏教の奥義を説く本と言っても良いのでは?ブッダの元々の教えにてらして、実用的で、合理的な現代にも使える考え方を説いた本。主に、心の反応を見ること、合理的に考えることにより、「心のムダな反応を止めることで、いっさいの悩み・苦しみを抜ける方法」を丁寧解説している。言葉は優しいが深い内容なので、何度か読み返す必要を感じる。
読了日:08月16日 著者:草薙龍瞬
自業自毒 平成とわた史自業自毒 平成とわた史感想
◯ラジオパーソナリティ遠藤麻理さんの2冊目のエッセイ。雑誌連載記事とラジオで語ったコラム、平成各年を振り返る書き下ろしの三部構成。平成各年を振り返る平成とわた史では、紆余曲折の末にモーニングゲートのパーソナリティとなった麻理さんのやりたい事に向かっていく様子が伝わって来て、とても良かったです。
読了日:08月19日 著者:遠藤麻理
ぼくが正観さんから教わったことぼくが正観さんから教わったこと感想
◯小林正観さんの教えである、『不平不満、愚痴、泣き言、悪口、文句を言わないこと』『目の前の現象を「うれしい、たのしい、しあわせ」と受け取る』『日々起きる出来事に対して「ありがとう」と感謝する』その実践から、人に喜んでもらえるようになる事が大切。などの紹介と、正観さんの生き方そのものを、知ることが出来る。正観さんの書籍は、多々あるが、第三者が語る事により、その教えが真実味を増しているように感じる。
読了日:08月22日 著者:高島 亮
会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ (マイコミ新書)会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ (マイコミ新書)感想
☆ ある仕事の過程で、マグロ漁船に同行する事になったサラリーマンの書いた本で、マグロ漁についての紹介と、漁師達との会話から得た著者の気付きが記されている。中でも、漁師達との会話が良い。方言丸出しでユーモラスな漁師達の言葉には、地に足のついた、説得力のある教訓が含まれている。以下書抜、つまりの、おいどーらは、おいどーらにできることをすべてやったんど。それから後のマグロが捕れるかどうかなんて、海が決めることど。齋藤ら陸の人たちは、人間ではどうにもならんことまで、なんとかしようとしちょる。それが疲るる原因よ
読了日:08月24日 著者:齊藤 正明
多動力 (NewsPicks Book)多動力 (NewsPicks Book)感想
△ホリエモンが自分のライフスタイルについて、言い訳を並べているだけに過ぎない本。すぐに読みきれる内容なので、刺激が欲しい時に読んでみるのが良いのかもしれない。多角的な視野を求めるのであれば、一読の価値は多分ある。
読了日:08月25日 著者:堀江 貴文
方丈記 (光文社古典新訳文庫)方丈記 (光文社古典新訳文庫)感想
◯方丈記の現代語訳と原文。鴨長明の詠んだ歌、発心集の貧男、差図を好む事がおさめられている。「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。」で始まる方丈記は、現代語訳ではあの名調子が残らないものの、わかりやすくとても良かったです。大災害に見舞われ、この境地に至ったのかと思うと、なお説得力が増して感じました。
読了日:08月26日 著者:鴨 長明
棲月―隠蔽捜査7― (新潮文庫)棲月―隠蔽捜査7― (新潮文庫)感想
◎シリーズ7まで来て、主人公竜崎に微妙な変化が訪れる。降格人事として大森署長となったはずが、異動の噂の中で今の職場に愛着を感じ、これまで合理的一辺倒で済ませてきた自分自身の変化に戸惑う。貝沼副署長はそれを竜崎の視野が広くなったと称し、妻は大森署が竜崎を成長させたと言う。ますます人間的魅力が増してきた竜崎を確認できる一冊。
読了日:08月27日 著者:今野 敏
反応しない練習  あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」感想
☆ 過酷な競争から成り立つ現代に生きながら、苦しみから逃れる方法をブッダの教えからわかりやすく説く書。全ての苦しみは自分の外側にある事象に反応して、自分の中に負の感情や妄想をいだくことから始まっているとの事。自分の呼吸など五感に意識を向け、苦しみの元となる外側への反応をやめる事が大事だそうです。幸せのためには、慈悲喜捨という、相手を思いやり共感し、自分の執着を捨てて、最高の納得を目指して生きる事によるそうです。
読了日:09月02日 著者:草薙龍瞬
そうか! 「会議」はこうすればよかったんだ (マイナビ新書)そうか! 「会議」はこうすればよかったんだ (マイナビ新書)感想
◎会議をレベルアップさせるヒントに満ちた実用書。会議のキモは、意見を出し合うブレストと、意見を絞り込んでいく議論を分ける事が一番大事。そして、うまくいく会議に必要な三要素は、前述のブレストと絞り込みの分離の他、会議の目的(スローガン)、会議の目標(ゴール)との事。そこに、会議のコンサルタントで得たちょっとしたコツなどもあり、この本の実践で会議の上級者を目指すことが出来る。
読了日:09月04日 著者:齊藤 正明
清明: 隠蔽捜査8清明: 隠蔽捜査8感想
◎主人公竜崎が神奈川県警刑事部長就任時の物語。着任早々、殺人事件が東京と神奈川の境界で起こり、警視庁刑事部長の伊丹と合同で指揮を執っていく。神奈川県ならではの、中華街との関係が鍵を握り、警視庁と神奈川県警のライバル関係も取り上げられる。中でも県警OB滝口とのやりとりが面白い。原理原則を貫き続ける竜崎の影響が、神奈川県警にどんな変化をもたらしていくのか、今後も期待が持てる。
読了日:09月05日 著者:今野 敏
放射線医が語る被ばくと発がんの真実 (ベスト新書)放射線医が語る被ばくと発がんの真実 (ベスト新書)感想
☆放射線をもっと知るべきだと思う。福島原発事故では放射線による死亡者はいませんし、放射線を原因とする癌は発生しないとの事です。むしろ、避難による生活環境の変化が悪影響となり、癌が増える可能性を示唆しています。チェルノブイリや、広島、長崎の原爆からのデータをもとに、科学的に放射線が与える人体への影響を説いてくれる本です。曰く、「100ミリシーベルト以下という、科学的なデータによる裏付けもない領域についても、「危険」と強調しつづけ、ストレスを抱えて生活習慣が悪化すると、かえって発がんのリスクを高めかねない」
読了日:09月08日 著者:中川 恵一
筋トレビジネスエリートがやっている最強の食べ方筋トレビジネスエリートがやっている最強の食べ方感想
◎巷に広がるインチキダイエットに踊らされないための正しい食事法として、マクロ管理法を紹介し、解説する本。マクロ管理法とは、基礎代謝をもとに、1日に必要なカロリーを求め、それをタンパク質、脂質、炭水化物の3つの栄養素に分け、それぞれ食べるグラム数を算出し、その制限を守って食事をするもの。最初は計算が面倒くさいが、続ける事で楽に管理できるようになると言う。最初の1週間は結果を気にせず始める事が大事らしい。
読了日:09月09日 著者:Testosterone
これは経費で落ちません! ~経理部の森若さん~ 1 (集英社オレンジ文庫)これは経費で落ちません! ~経理部の森若さん~ 1 (集英社オレンジ文庫)感想
◯天天コーポレーション経理部でそつなく仕事をこなし、過不足ない生活を送る地味美人、沙名子が主人公の連作短編集。優しく、湿った人間関係が苦手な沙名子が、営業部のエース太陽にせまられ、自分のペースを見失っていく。特に女性のキャラクターが、服やメイクの特徴まで描かれて、女性の作者らしい視点を感じた。
読了日:09月13日 著者:青木 祐子
LOVE理論LOVE理論感想
◎夢をかなえるゾウの作者、水野敬也さんの書いた恋愛指南本。モテない男達をスパルタ的に恋愛達人に鍛え上げようという上から目線の文章が、腹が立つどころか非常に面白い。一つのエンターテインメントとなっている。作者の主張は、モテない男は、自分の主観から抜け出せないだけ、相手の視点で考える勇気を持って、少しずつ経験を積み重ねれば、高嶺の花に見える女性と付き合うのも楽勝との事。私がなるほどと思ったのは、うわっつらkindness理論です。女性が求める男の優しさは、表面上の優しさであるとし、レディファーストを徹底する。
読了日:09月14日 著者:水野敬也
半沢直樹 アルルカンと道化師半沢直樹 アルルカンと道化師感想
◎人はあまりにも大きな影響を及ぼす真実にふれた時にどう対処するのかを問われる小説だと思いました。もちろん、半沢直樹シリーズの勧善懲悪のストーリーがとても気持ち良い読後感につながっています。性善説の半沢直樹ならではの、善意ある人々の決断も感動につながっています。
読了日:09月18日 著者:池井戸 潤
自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋 (宝島社新書)自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋 (宝島社新書)感想
◯何も考える事も疑う事もなく、多数派の言う事に従うのはやめましょうと言う本。日本が世界の工場としてGDP世界二位の立場にあったのは昔の話。今は日本は韓国にも地位を脅かされるところまで来ている。しっかり現状を把握しましょうとも語っている。
読了日:09月18日 著者:池田 清彦
糸 (幻冬舎文庫 は 36-1)糸 (幻冬舎文庫 は 36-1)感想
△イマイチでした。それと言うのも、作者が何を書きたいのかが、全くわからないのです。含まれているテーマは沢山あります。人に優しい存在である事。運命には逆らえない事。成功も失敗も長続きしない事。地に足を付けて生きる事。それぞれが、各キャラクター毎の短編小説の様に綴られているのですが、一つ一つのパンチが効いてきません。ただ、香さんと結ちゃんのくだりは、ウルッと涙腺を刺激されました。
読了日:09月21日 著者:林 民夫
角栄に花束を  1 (1) (ヤングチャンピオンコミックス)角栄に花束を 1 (1) (ヤングチャンピオンコミックス)感想
◎田中角栄を語る多くの本では、政治家になってからのエピソードが多いのですが、この作品の様に若い頃のエピソードを伝えてくれるのはありがたいです。  漫画ですので、誇張やら笑いやら、かなり創作もあるのでしょうが、田中角栄ならではの3つの長所がしっかり描かれていて良いです。それは、バイタリティ、面倒見の良さ、努力が人並み外れているところだと思います。  漫画と言う媒体で若い人に少しでも興味を持ってもらいたいと思います。
読了日:09月21日 著者:大和田秀樹
リーダーの教養書 (News Picks Book) (幻冬舎文庫)リーダーの教養書 (News Picks Book) (幻冬舎文庫)感想
◎骨太のブックガイド。リーダーに求められるのは実績や経験であることは、自明であるが、先が見えない未来に向けての決断にこそ、本から得られる教養が物をいうとの事。特に歴史や古典には、普遍的価値が高い叡智が含まれている。紹介されている本は、割と有名な本が多いが難しそうで手にとって来なかったので、再度チャレンジしてみようと思う。
読了日:09月24日 著者:出口 治明,楠木 建,大竹 文雄,岡島 悦子,猪瀬 直樹,長谷川 眞理子,中島 聡,大室 正志,岡本 裕一朗,上田 紀行
時生 (講談社文庫)時生 (講談社文庫)感想
☆ 本作は、不治の病で瀕死の息子トキオの意識が20年の時を遡り、どうしようもないろくでなしの頃の父拓実の前に現れ、その拓実を助けて、ある困難を乗り越えると言う小説です。  作品の中にあるテーマは、生きているだけで丸儲け、生きている一瞬一瞬に未来はある。過去に囚われず、その時を幸せに過ごせたなら、どんなに短い人生でも納得する事ができる。と言うことだと思います。  とにかく出鱈目な若い頃の拓実の若気の至りには辟易しますが、短い人生を必死に生きるトキオ君の健気さに涙が止まりません。傑作です。
読了日:09月27日 著者:東野 圭吾
チルドレン (講談社文庫)チルドレン (講談社文庫)感想
☆☆型破りな家庭裁判所調査官の陣内がそんなもの大したことじゃないと喝破する連作短編小説。この作品の魅力は、なんといっても主人公の陣内。出鱈目の様で、いつも真剣勝負。「駄目な少年は駄目なんだろ。あんたたちはそう言った。絶対に更生しないってな。地球の自転が止まることがあっても、癌の特効薬ができることがあっても、スティーブン・セガールが悪役に負けることがあっても、非行少年が更生することはない。そう断言した」 「俺たちは奇跡をやってみせるってわけだ。ところで、あんたたちの仕事では、奇跡は起こせるのか?」
読了日:09月28日 著者:伊坂 幸太郎
奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録 (幻冬舎文庫)奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録 (幻冬舎文庫)感想
☆ 青森津軽で無農薬無施肥によるリンゴ栽培を確立した木村秋則さんの半生記。この本の主旨は、不可能と言われる事を成し遂げるには、思い付きだけでは無く、狂った様にのめり込み、それを何年も続ける必要がある。と言う事だと思います。自殺まで考え彷徨っている中にヒントを見つけ、さらなる研究努力により、ようやく方法を確立すると言う件は、読んでいるこちらまで、ほっとさせてもらいました。また、それを支えた家族も凄いです。何年も収穫ゼロのリンゴ畑で、害虫駆除を手伝う気持ちってどんなでしょう。奇跡を生む努力の実話です。
読了日:09月30日 著者:石川 拓治
ソクラテスの弁明 (光文社古典新訳文庫)ソクラテスの弁明 (光文社古典新訳文庫)感想
◯ソクラテスの弁明の訳と、その解説、プラトンの著作とその概要の紹介からなる本。ソクラテスの弁明は、これまで多く語られて来ただけあり、面白い。ソクラテスの主な主張は3点。一つは、人は全知ではないが、知っているつもりになっている、自分は知らないと思うだけ知恵がある事。次に、その事を人と議論したのは神の思し召しであり、悪い事では無く、裁判を受ける事になったのは、人の中傷や妬みからである事。最後に、死んでどうなるかは、誰も知らない事であり、恐れる事は哲学的でなく、故に恐れる事は無い。という事です。
読了日:10月01日 著者:プラトン
森は知っている (幻冬舎文庫)森は知っている (幻冬舎文庫)感想
◯児童虐待のサバイバー鷹野一彦が、スパイ組織の訓練を受け、産業スパイとして水道民営化に関する案件に関わっていく物語。冷酷なスパイ組織に生かされている鷹野に関わる人々は皆、影があるが暖かい。そんな中出会った言葉が素晴らしい。「一日だけなら生きられる。先のことなんか考えなくていい。たったの一日だけ。それを毎日続ければいい」
読了日:10月02日 著者:吉田 修一
ジョーカー・ゲーム (角川文庫)ジョーカー・ゲーム (角川文庫)感想
◎日本陸軍の情報勤務要員養成所、D機関で訓練されたスパイ達が暗躍する連作短編小説です。この作品の魅力は、D機関を率いる結城中佐と教え子達の超人的な能力です。チラッと見ただけの文章を暗記するやら、暗闇でも歩き回るやら、自白剤でも喋って良い事悪い事を使い分けるとか、すごいんです。事件が解決してから、真相の解説が始まるのですが、これが結構長いんです。そこでも二転三転するのでこの作品は、その種明かしのところを楽しむ作品だと思います。過酷なスパイの世界で生きるのは、自分には無理ですが、小説だけなら楽しめました。
読了日:10月06日 著者:柳 広司
ダブル・ジョーカー (角川文庫)ダブル・ジョーカー (角川文庫)感想
◎ジョーカーゲームの第二弾。前回はD機関メンバーの能力についての話が主だったが、今回は第三者が主人公のサイドストーリーの中にD機関がこっそり絡んでくる話が多く、まさにスパイが影で暗躍している感じが味わえる。連作短編となっており、インドシナ侵攻や、真珠湾攻撃へと歴史が進んでいく。
読了日:10月08日 著者:柳 広司
夢をかなえるゾウ3 文庫版夢をかなえるゾウ3 文庫版感想
◎ 夢ゾウ3作目、本作の主旨は、夢をかなえるためには、努力を継続できる事が重要。と言う事だと思います。本作ではガネーシャから出された課題を主人公がこなして行く中で、商売の対決をすることになり、商売についての教えが多い様に感じました。曰く、お客様を喜ばせる事が商売の秘訣。人を騙してでも儲けようとしても長続きしません。人に優越したいと言う気持ちが、少しでも得をしたいと言う行動となり、結果、人から喜ばれると言う商売の本質から外れてしまうそうです。サービスの本質は『他人に負ける事』との事。
読了日:10月10日 著者:水野敬也
パラダイス・ロスト (角川文庫)パラダイス・ロスト (角川文庫)感想
◯ジョーカーシリーズの第三弾。今回のテーマは、想定外についてと感じました。1話目の誤算では、D機関の島野が記憶を失うと言うアクシデントからの任務遂行。2話目の失楽園では、D機関ではご法度の殺人事件を利用しての任務遂行。3話目の誤算では、相手を想定外の手法で無力化。4、5話目の暗号名ケルベロスでは、任務中に想定外の事件が起こり、その対応を行うもの。いずれも、D機関の無敵ぶりでクリアしてしまうお話でした。
読了日:10月12日 著者:柳 広司
メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)感想
◎メモのノウハウを教える本ではなく、メモにより抽象化能力を鍛えましょう、と言う本。著者によると、メモには二種類あり、「記録のためのメモ」と「知的生産のためのメモ」だそうです。知的生産のためのメモの取り方は、まず見開きで使い、左のページは事実、右ページの左半分にそれを抽象化する言葉、右半分にそれを転用したアイデア。つまり、事実、抽象、転用をメモる事で自分の知的生産性を高めることが出来るそうです。また、自分を深掘りして自分のコアに行き着くにもメモは最適のツールで、最終的に自分の夢を叶える事にも繋がるとの事。
読了日:10月16日 著者:前田 裕二
元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち (光文社新書)元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち (光文社新書)感想
◎東大で量子化学を学び、医師でタレントの著者が、周期表から元素の特徴や、今の世界に果たす役割を解説してくれる一冊。なるほどと思ったのは、人間が生きていくために必要な元素は、地球に沢山ある元素が占めるとか、ヘリウムはなぜ安全な気体として活用されているのかなど、具体例をあげてわかりやすく伝えてくれるところが、良いです。
読了日:10月23日 著者:吉田 たかよし
ドラフト外: 這い上がった十一人の栄光 (河出文庫)ドラフト外: 這い上がった十一人の栄光 (河出文庫)感想
☆ドラフト外と言う、ハンデを背負った上で、プロ野球界に名を残すかどうかは、チャンスを掴む能力にかかっている。チャンスを掴む能力とは、常に前向きな気持ちを持ち、成功のための作戦を練り、自分を磨き成長し続ける事が出来る能力なのだと、本書に登場した11人のエピソードに教えられました。
読了日:10月30日 著者:澤宮 優
投資家が「お金」よりも大切にしていること (星海社新書)投資家が「お金」よりも大切にしていること (星海社新書)感想
◎本書の主旨は、資本主義社会では、投資に限らず、私たちの小さな消費活動も世界を形作っているんだ、という事だと思います。本書では、日本人はケチなくせに金儲けを嫌悪する文化があると喝破します。お金はサービスや価値への対価ですから、お金を儲けると言う事は、より多くのサービスや価値を提供するという事と同義です。経済の語源であるエコノミクスのさらに語源は、共同体のあり方という意味であり、経済学とは、どのように生きたらみんなが幸せになれるかを考えるのが本質。ブラック企業がブラックである事も、価格重視の消費活動の帰結。
読了日:11月03日 著者:藤野 英人
ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)感想
☆アメリカの資本主義は、主に共和党政権が推し進めた新自由主義政策により、経済的な格差が社会に広がり、様々な社会問題を生み出しているそうです。本書では、自由主義経済で現れた問題として、サブプライムローンの他に台風カトリーナの災害対応、医療保険の不備により病気で貧困層に転落する問題、教育の格差から貧困層を抜け出せない若者など、をレポートしています。近年では、日本の格差も広がり問題となっていますが、そんなレベルではありません。むしろ、アメリカの状態に行きつかない様に、さまざまな選択をしていく必要性を感じました。
読了日:11月04日 著者:堤 未果
ここがおかしい、外国人参政権 (文春新書)ここがおかしい、外国人参政権 (文春新書)感想
☆本書で著者は、国民主権原理の日本国憲法下では、外国人参政権は明確にNGと言っています。そもそも、外国人参政権推進派は、平成7年の最高裁判決を拠り所としています。しかし、その判決は、外国人参政権について、憲法の国民主権原理に反するというのが、結論です。つまり、推進派は、判決のいいとこ取りをして、曲解する結果を生んでいると著者は言っています。また、平成7年の最高裁判決の様に誤解を生む蛇足判決が多数存在する事についても多くのページを割いて、非難しています。選挙権の大切さや政治哲学を学ぶによい本だと思います。
読了日:11月05日 著者:井上 薫
望み (角川文庫)望み (角川文庫)感想
◎建築士の父親、一登とフリーの校正の仕事を持つ母親、貴代美の視点から語られる4人家族の物語です。連休の土曜日に息子の規士が出かけて、帰って来なくなります。そんな中息子の友達が少年犯罪の被害者として遺体が見つかりました。息子の規士の関与が疑われ、ネットやマスコミから犯罪者の家族としてバッシングを受けますが、規士が加害者であるかも、被害者であるかも、全く家族である一登たちには知らされません。そんな過酷な状況で、一登は被害者であったとしても息子の無実を信じ、貴代美は加害者であったとしても息子の生存を望みます。
読了日:11月11日 著者:雫井 脩介
できる男は超少食―空腹こそ活力の源 !できる男は超少食―空腹こそ活力の源 !感想
△1日1食の生活が身体に良いと、勧める本。1日3食は医療業界が作った思い込み。飢餓状態になると長寿遺伝子が目覚め最強の身体になる。肉、牛乳は、身体に悪い。断食は、病気を治すなど、数々の主張にはインパクトがありますが、説得力に欠けます。引用されるデータは、怪しい物が多く、その解釈もいい加減に見えますが、読みやすい本である事は、とても良いです。
読了日:11月12日 著者:船瀬 俊介
「空腹」が人を健康にする「空腹」が人を健康にする感想
◎「空腹」「寒さ」「睡眠」が人間の「生命力遺伝子」にスイッチを入れて、健康な状態を保ってくれるとの事。1日1食や、三度の食事を腹6分目にするなど、飢餓状態を人為的に作る生活習慣が良い。栄養が心配だが、栄養については、卵や小魚、葉ごと皮ごとの野菜、玄米等、全粒の穀物といった、自然界の命を丸ごと食べる「丸ごと食」により「完全栄養」が摂れ、栄養バランスが良くなる。本書の生活習慣で目指す目標は、ただ痩せるのでは無く、長寿はもちろん、若く美しくある事。そのために「空腹」「完全栄養」「睡眠」の三つが有効。
読了日:11月13日 著者:南雲吉則
株のしくみ (図解雑学)株のしくみ (図解雑学)感想
◯株式についての基礎知識を学ぶことができる。図解雑学シリーズにしては、図解がイマイチ。チャートの読み方と経済新聞の読み方が良くわかりました。
読了日:11月13日 著者:寺尾 淳
投資なんか、おやめなさい (新潮新書)投資なんか、おやめなさい (新潮新書)感想
× 2017年の本ですが、ネット証券全盛の今に至っては、本書の内容は古い。わざとインターネットを使わない世代に向け書いているのかも知れない。投資はやめろと言うが、ではどうするのかについての言及がなく、何の参考にもならない。
読了日:11月14日 著者:荻原 博子
その健康法では「早死に」する!その健康法では「早死に」する!感想
◎1日1食や、ファスティングによる健康法のアンチテーゼとして書かれた本。前者は、エビデンスに乏しい書籍が多いが、本書は医学的なエビデンスを重視して反論している。主な主張は以下の通り、空腹長生き理論のサーチュイン遺伝子は間違い。痩せは万病のもと、小太り体型が一番長生き。禁酒は死亡率を高める。コーヒーは最高の健康飲料。
読了日:11月16日 著者:高須 克弥
「空腹の時間」が健康を決める「空腹の時間」が健康を決める感想
◎1日1食健康法関連の書籍ですが、著者が重要視しているのは血流です。毛細血管のコンディションを保ち、血流の良い身体であることが健康にとって大事だそうです。血液をドロドロにしない、血管の状態を良くする手法として、朝食抜きのプチ断食や1日1食などが触れられている程度。無理をしない事が大事な様です。
読了日:11月17日 著者:石原 新菜
夢をかなえるゾウ4 ガネーシャと死神夢をかなえるゾウ4 ガネーシャと死神感想
◎夢をかなえるゾウというタイトルでありながら、夢を追う事のデメリットについて述べられた本です。主人公は余命3ヶ月と告げられたサラリーマン。残された時間の短さに絶望しながらも、ガネーシャの課題をこなし、残される家族のために人生を全うしようと奮闘します。死を目前に、かなわぬ夢を持つ事の良し悪しに悩む主人公に、ガネーシャは説きます。夢をかなえる事が『良い』とされればされるほど、夢をかなえて無い事は『悪い』ことになる。今、世の中の人達が感じている苦しみの多くは、『夢』が生み出していると。
読了日:11月19日 著者:水野敬也
流星の絆流星の絆感想
☆この作品の魅力は、犯罪に手を染めながらも寄り添って生きる、兄弟3人、功一、泰輔、静奈のお互いをいたわり合う兄弟愛だと思います。もう一つの作品の魅力として、私は、騙されるターゲットである戸神行成が、自身の持つ誠実さや優しさだけで、3人の計画を狂わせていくところが凄く面白いと思いました。
読了日:11月22日 著者:東野 圭吾
「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)感想
☆ この本の主旨は、特権階級もなく自由主義経済が一般的になった今の時代では、世界征服はウマミが無いよって事だと思います。世界征服は目的ではなく、手段でなければならない。そのため、悪役達には世界征服した後、何をしたいのか、明確な理念を持つ必要があるとの事。結局、世界征服を可能にするためには、圧倒的な、人手と資金と手間が必要。それを果たしたところで、自由主義経済の生み出す価値やサービス、つまりお金で買えるものに、叶わない恩恵しか得ることが出来ないのであれば、本末転倒。フィクションの世界で語る政治哲学。  
読了日:11月23日 著者:岡田 斗司夫
1日10分であらゆる問題がスッキリする「ひとり会議」の教科書 (Sanctuary books)1日10分であらゆる問題がスッキリする「ひとり会議」の教科書 (Sanctuary books)感想
◎やるべきことが多すぎて混乱しちゃう時は、一人で会議するように状況を整理していくと、解決に向かいますよとの事。一人会議とは、ただ漠然と考えるのではない。直面する問題に会議形式で、どうしたいのか?そのためにはどうするか?という問いをたて、それぞれに自分なりの答えを出し、スケジュール帳にその答えを書き出す。このステップを毎日10分でも良いので行う習慣をつけるのが大事。問題解決のコツは、良い質問を立てること。長々考えてもわからない質問は、良い質問では無いので、どんどん答えが出そうな質問に変えていくことが大事。
読了日:11月24日 著者:山崎 拓巳
架空通貨 (講談社文庫)架空通貨 (講談社文庫)感想
☆主人公の辛島は元商社マンで、企業の信用調査をしていたが退職し、今は高校で社会科を教えています。ある晩、教え子の黒沢麻紀が父親の経営する会社、黒沢金属工業の事で相談に来ます。黒沢金属工業を倒産から救うため、辛島は田神町にある田神亜鉛という会社を訪ね、黒沢金属工業を救うための交渉をします。田神町は、田神亜鉛の企業城下町で、田神札という通貨が流通していました。辛島は次第に田神札などのあやしいからくりに気がつきます。最後は田神亜鉛の経営者、安房正純が大きな仕掛けをしますが、その影響で田神町は大混乱に陥ります。
読了日:11月28日 著者:池井戸 潤
本当の自由を手に入れるお金の大学本当の自由を手に入れるお金の大学感想
◎お金にまつわる五つの力、支出を減らす力、収入を増やす力、資産を増やす力、資産を減らさない力、人生を豊かにする事にお金を使う力を教授する本。特に、支出を減らす力がためになった。著者曰く、日本の健康保険は世界一との事。そのため、CMなどに煽られて加入しているガン保険や医療保険は一切不要だそうです。保険は低リスク、大ダメージに備える事を基本に考え、掛け捨て生命保険、火災保険、対人対物無制限の自動車保険の三つで十分との事。医療保険に入る代わりに、貯蓄を最優先すると良いとの事。目から鱗でした。
読了日:12月02日 著者:両@リベ大学長
震える牛 (小学館文庫)震える牛 (小学館文庫)感想
☆主人公は、警視庁で迷宮入り濃厚な未解決事件を担当する田川。ある日、捜査一課長から特命で、ある事件の捜査を依頼されます。田川は、愛用の肥後守と言うナイフで鉛筆を削り、事細かに関係者の証言をメモしながら事件の真相に迫る、地取り捜査を得意とする刑事。捜査開始直後、この事件の初動捜査が杜撰であった事に気付きます。本書は、事件を捜査する刑事、会社を守るためグレーゾーンな仕事にも手を染める組織人、社会的正義を貫こうとするジャーナリストの三者の視点から、一つの真実に辿り着くように物語が進んでいきます。
読了日:12月05日 著者:相場 英雄
漫画 バビロン大富豪の教え 「お金」と「幸せ」を生み出す五つの黄金法則漫画 バビロン大富豪の教え 「お金」と「幸せ」を生み出す五つの黄金法則感想
◎バビロンの大富豪を漫画化したもの。短編の原作を強引にバンシルを主人公に据えた物語としているので、逆に話がわからなくなっている。ただし、原作にある教えは忠実に掲載されているので、この本だけでもバビロンの大富豪の教えを知るには十分であると思う。
読了日:12月06日 著者:ジョージ・S・クレイソン
バビロンの大富豪 「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのかバビロンの大富豪 「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか感想
◎バビロンの教えとして九つの寓話が載せられている。一つ一つは短編であり登場人物は異なるが、複数の物語に出ている人物もいる。教えは大きく三つ。一つは収入の十分の一を貯金し、残りで生活を成り立たせる事。次に、うまい儲け話に安易にのらず、信用のおける人の言う事に耳を傾ける事。最後に、働くことが一番の幸福と心得る事。
読了日:12月07日 著者:ジョージ・S・クレイソン
あした死ぬかもよ?あした死ぬかもよ?感想
◯明日死んでしまうかもしれないと言う事は、誰も否定できない事。それでも、死を遠ざける事により、人はのほほんと生きる事ができる。のほほんと生きた結果、死を前にして後悔する事の無いように、著者は27の質問を投げかけてくる。自分のお墓に言葉を刻むとしたら、なんて入れる?と、あなたが両親を選んで生まれてきたのだとしたら、その理由はなんだろう?の二つの質問が良かったです。
読了日:12月09日 著者:ひすいこたろう
火星に住むつもりかい? (光文社文庫)火星に住むつもりかい? (光文社文庫)感想
◎平和警察は、無実の人を危険人物として、拷問し、公開処刑を行うイカれた組織です。そんな魔女狩りの成果か、犯罪率も下がり、人々も平和警察を容認していきます。ある日、平和警察に捕らえられた無実の危険人物を助けるライダースーツの男が現れ、その男と平和警察の対決に物語が進みます。しかし、ライダースーツの男もたまたま知り合いを助けただけで正義のために戦っているわけではありません。警察が魔女狩りの様に恐怖政治を行うという、ハチャメチャなストーリーの中で、正義、偽善、生と死など、問いかけられた命題は重いと感じました。
読了日:12月12日 著者:伊坂 幸太郎
さよなら、田中さんさよなら、田中さん感想
☆花ちゃんは、友達とDランドに行きたいのですが、フリーパスは6千円もします。お小遣いもお年玉の貯金も無い花ちゃんは、有り余る時間を使って自動販売機の釣り銭拾いを始めます。一週間かけて180円しか得ることの出来ない花ちゃん最後の決断が素晴らしい。私の大好きなキャラ、花ちゃんのお母さんは、女手一つで花ちゃんを育てています。真っ黒に日焼けして、土木作業員として働いています。肉体労働からか、犬のようにご飯に食らい付き、たくさん食べても痩せています。好きな言葉は「元が取れる」「買えば高い」「一山当てる」。
読了日:12月13日 著者:鈴木 るりか
「空腹」こそ最強のクスリ「空腹」こそ最強のクスリ感想
◯健康のために一日16時間、空腹の時間を作るのが良いとの事。朝でも夜でもどちらでもやりやすい方で良いらしい。1日1食では無いところが、とっつきやすくて良いと思います。空腹本はたくさんあるが、その中でも読みやすい本だと思う。目新しい情報は無かった。
読了日:12月14日 著者:青木 厚
「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書)「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書)感想
◎日本はゼロリスクという幻想に囚われる「リスク過敏症」に罹っており、それが長引く日本の不況の一因ではないかと言うのが、本書の主旨。なぜ、リスクに過敏に反応してしまうかと言うと、リスクの定量的評価ではなく、定性的な評価で判断をしているから。つまり、「君子危うきに近寄らず」が金科玉条として取り扱われているから。目先のリスクに惑わされてゼロリスクの幻を追うのではなく、ある程度のリスクを受け入れること。本能的判断も重要ではあるけれど、リスクを定量的に捉えて広い視野で判断してゆくことも同じように重要との事。
読了日:12月22日 著者:佐藤 健太郎
生涯投資家 (文春文庫)生涯投資家 (文春文庫)感想
◎村上ファンドといえば、金のためなら何でもやるという悪役のイメージしかありませんでした。しかし、本書を通じて著者から伝わってくるのは、適正なお金の流れができるように変えないと、日本はダメになるよ!という憂国の叫びでした。それは昔も今も変わりありません。コーポレート・ガバナンスを大切にして、株主重視の企業経営を徹底することが日本の未来に絶対必要と言う事です。株価が上がればファンドも儲かる一石二鳥と著者が考えるのは当然ですが、自分の儲けという片方だけ伝わったため、強烈なバッシングと誤解を受けることとなりました
読了日:12月30日 著者:村上 世彰

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