2021年1月21日木曜日

伊坂 幸太郎 魔王 (講談社文庫)

 


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編258日目

 泥仕合となってしまった大統領選挙も終わり、バイデン大統領が就任しました。これからどのようなアメリカになって行くか注目していきたいと思います。最後まで自分流を貫いたトランプ前大統領も、この後実はアメリカの好景気を支えた良い大統領だったと言われるのか、それとも独善的な支配者が去ることとなって良かったと言われるのか、政治に判決を下すのは歴史でしかありませんから、後のトランプ前大統領の評価が下るのも楽しみです。

 さて、今日お勧めする本は、強大な権力者に違和感を感じてしまった時に、どう立ち向かいますか?と問いかける小説です。

 主人公は安藤兄弟。本書は「魔王」と「呼吸」の2部に分かれていて、「魔王」では安藤兄が主人公。「呼吸」では弟の潤也が主人公となります。

 安藤兄は、昔から人が考える必要がないと思うようなことまで深く考えすぎるきらいがあり、潤也から、「兄貴は、世の中を小難しく考えることが生きがいなんだ」「マグロが泳いでねえと死んじゃうのと一緒で、兄貴は考えてねえと死んじゃうんだ」と言われています。

 そんな中、ある事をきっかけに、安藤兄は自分が念じたとおりに他人の言葉を操れる能力に気が付きます。そして、政治不信の世の中から国民を熱狂させることのできる政治家犬養が台頭していきます。人々が犬養に魅せられて行く中で、安藤兄は、まるで「注文の多い料理店」で愚かな紳士たちが誘導されて行くように、国民が犬養にファシズムに誘導されて行く恐怖を覚えます。

 安藤兄の不安が的中し、世の中がどんどん犬養に操られるように右傾化して行きます。安藤兄は、昔見たアメリカのテレビドラマの影響で口癖となった、「考えろ、考えろ、マクガイバー」という言葉を自分に言い聞かせ、自分のなすべき事を考えます。

 そして、自分の言葉を操れる能力一つで、犬養のファシズムを止めるべく、街頭演説をしている犬養に立ち向かって行くのです。

 著者ならではの、カテゴリーを超越したエンターテイメント作品です。ぜひ、ご一読ください。



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