2021年1月8日金曜日

高橋 克彦 火怨 北の燿星アテルイ 上下巻(講談社文庫)

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編245日目


 アメリカでは、トランプ大統領の支持者が、バイデン氏の大統領選勝利を認定する手続きを阻止するため、連邦議会議事堂に多数乱入し、占拠したそうです。正直言って、これは民主主義国家のすることではありません。ただのテロ行為ですからね。トランプ大統領は、任期を待たず罷免される動きもあるそうです。いずれにせよ、歴史上類をみない汚点を残してしまいました。とても残念に思います。


 さて、今日お勧めする本は、日本史の常識である大和政権歴史観をひっくり返してくれる蝦夷主観の小説です。


 舞台は、平安時代の陸奥、今の宮城県北部です。多賀城まで進出してきた大和政権と隣接して、平和に暮らす蝦夷の民がいました。しかし、その平和も朝廷の大軍に踏み躙られようとします。蝦夷の誇りと自由を守るため若きリーダー阿弓流為は遊撃戦で迎え撃ちます。


 一度は朝廷の大軍を退けた蝦夷たちの前に、坂上田村麻呂を将とした朝廷の逆襲がはじまります。坂上田村麻呂の剛柔併せ持つ攻めと、長く続く戦いに疲れた蝦夷は崩壊の危機を迎えます。そして、リーダー阿弓流為は、民のため命を捨てる覚悟を決めます。


 この小説を読んで、完全に私の歴史観が変わってしまいました。歴史上の逆臣とされる蝦夷と現代に生きる私たちの長い時間や立場のミゾを埋めて、共感をもってその時代を追認していくような不思議な体験をさせてくれる小説です。鉄砲も存在しない戦い。刀と馬術さえ優れていれば、どんな大軍にも立ち向かっていける。そんな気分にさせてくれます。ラストはかなり切ないですが、名作です。 




 

0 件のコメント:

コメントを投稿