2021年1月28日木曜日

森 達也 A3 (集英社文庫)


  


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編265日目

 少し前の新聞になりますが、オウム真理教の後継3団体を対象とした、団体規制法に基づく観察処分の3年間の更新を認めると決定したそうです。地下鉄サリン事件が1995年、麻原の逮捕も同年、麻原を筆頭に13人への死刑判決 が確定したのが2011年、その死刑執行が2018年です。だいぶ時間が経ちましたが、警察はまだまだ油断できない存在と考えているようです。このままおとなしくしていて欲しいものです。

 さて、今日お勧めする本は、麻原彰晃を含む関係者への取材から、マスコミでは報じられることのない、異例づくしのオウム裁判の異様さを伝えるルポルタージュです。

 本書の主旨は、確かにオウムは犯罪集団であるが、今回の裁判を始め、世論に影響を受けて、差別や人権を無視した異例な事が起こっているよ、って事だと思います。

 まず著者は麻原彰晃の裁判を傍聴して、精神的な疾患がるようである麻原彰晃の裁判を刑事訴訟法の規定に基づき公判手続きを一旦停止し精神医療を受けさせ、治療した後に裁判を再開するべきと言っています。確かに、多くの紙面を割いている、麻原彰晃の異常な言動に関する関係者の証言などを読めば、この裁判の異様さが伝わって来ます。

 オウム事件は、起こした犯罪の数も、犠牲になった人の数も、容疑者の数も桁違いの事件ですから、通常の手続きを踏まずに進められた異例づくめの裁判でした。そして、世間の人達がオウムを成敗したいと言う正義の思いも強く、少しでもオウムの肩を持とうものなら袋叩きに合うような状況でした。そのため、麻原彰晃の子供達も住民票の移動を拒否されたり、大学入学を取り消されたりと、多くの差別を受けているそうです。

 オウムに対する冷静さを取り戻した今こそ、あの事件を振り返る良い機会だと思います。そして、コロナ禍で、同じようにマスコミに煽られてしまう世の中に気付く、きっかけにもなるかもしれません。ぜひご一読ください。

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