2021年1月25日月曜日

辻 寛之 インソムニア

 


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編262日目

 新潟日報の一面によると、陸上自衛隊と米海兵隊が、沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブに、陸自の離島防衛部隊「水陸機動団」を常駐させることで二〇一五年、極秘に合意していたことが、日米両政府関係者の証言で分かったとの事です。ただでさえ、地元の合意が取れず苦労している辺野古移設に対して逆風になりそうなニュースです。背景には尖閣諸島への圧力を強める中国への牽制という目的があるようです。私は防衛のために必要であれば必要であると所用の手続きを取るべきだと思いますし、もし、自衛隊の体質が極力水面下で物事を進めようとする改善していくべきだと思います。

 さて、今日お勧めする本は、自衛隊とPKO派遣について、新たな視点を与えてくれる小説です。

 物語のあらすじは、防衛省でメンタルヘルス官として勤務 している神谷が、PKOの南ナイルランド派遣部隊で派遣中に殉職した三崎二曹の同僚や同じ派遣隊員たちのメンタルケアを担当する中で、南ナイルランドで起こった事件について、幾重にも重ねられた虚構の中から真相に迫っていくというものです。

 自衛隊とPKOというデリケートなテーマに取り組む社会派小説でありながら、南ナイルランドの現場で何があったのかという謎解きのエンターテイメント性が読者をどんどん物語に引き込んでいきます。

 各章ごとに変わる語り手のキャラクター作りも丁寧で、物語を立体的に浮かび上がらせています。

 私の好きなシーンは、神谷の上司である上村が、隊員よりも組織を守る事ため事実を隠蔽しようとする防衛省幹部を諭すシーンです。セリフの一部を書抜ます。『彼らは自衛官です。国民のために命をかけて奉仕しているかけがえのない存在なのです』 。このシーンから、どのような立場だとしても現場の人間に敬意を払うことが大事である事、そしてその言葉がどれほど力強いか思い知らされました。

テーマがテーマだけに、少し重めのお話ですが、小説としての面白さがちゃんと楽しめる作品だと思います。ぜひご一読ください。
 



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