2021年1月11日月曜日

ロバート ウェストール 弟の戦争

  FBでは、雪のけの投稿ばかり、本当に皆さんお疲れ様でした。我が家もそんな三連休。最終日の今日は息子と二人で雪のけです。自分よりバリバリ力強く働く様子を見て、高校生となった息子の頼もしさに感動しました。成績が良いとかスポーツで活躍なども良いのでしょうが、私は子供が家族に支えられる立場から、支える立場になってくれた時の喜びが最高だと思いました。


 さて、今日お勧めする本は、劇場化していく戦争を身近な自分たちの恐怖として、取り戻すための児童文学の傑作です。


 舞台はイギリス、主人公のトムは、3つ下の弟アンディに頼れるやつという意味のフィギスというあだ名を付けています。二人はとても仲の良い兄弟です。フィギスは感受性と好奇心がとても強く、休暇に家族で訪れたスペインで、新聞にあった飢えに苦しむエチオピアの子供の写真にのめり込み、食べ物に手をつけなくなるなど、時々可哀想な他者とシンクロし、家族を巻き込んで大騒ぎになることがあります。12歳になったフィギスは、中東で湾岸戦争が始まったときに、イラク軍の少年兵ラティーフとシンクロしてしまいます。トムは、圧倒的な兵力のアメリカに苦戦するラティーフの姿をフィギスを通じ見て、テレビに映ることの無い戦争の現実を知ることになります。


 本書は小学生から読める児童書なのですが、ここまで中東で起きている戦争の恐怖や悲劇を身近に感じさせてくれる本は数少ないのではないかと思いました。どんどん戦争がその本質を隠され、ショーのようになっていく現状に、著者は憤っているのです。


 本書の重要な登場人物にラシード先生という中東系のフィギスの主治医がいます。そのラシード先生がトムに語りかける言葉が、それぞれ素晴らしいんです。一つ書き抜くと「この戦争は、何人殺したかをくちにするのがはばかられる初めての戦争だ。一般市民はテレビで小ぎれいな映像を見せられて、これが戦争だって信じてるんだろうか。みんな小さな子供みたいに、おとぎ話を信じてるって言うのか。それとも真実から目をそむけたいんだろうか」というものです。


 真実から目をそむけないための第一歩として、ぜひ、ご一読ください。



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