2021年6月3日木曜日

結局、綾波レイと言うことらしい。

 

 読み終わりました。「庵野秀明 スキゾ・エヴァンゲリオン」庵野監督へのインタビューや、作品に関わったアニメーター等による座談会をまとめたものです。一方的に作り手目線で語られるため、内輪受けする内容を越えられないのですが、どのようにして、あの作品が作られていったのか、作品の生まれる現場が垣間見えるところに価値を感じます。一言で言えば、アニメ放映が始まった瞬間に時間との戦いが始まっていた作品だそうです。

 読んでいて一番感じることは、エヴァンゲリオンを観ている人にとっても、作っている人にとっても、あの作品は綾波レイについてが最大の関心事項なのだと言うことです。何せ、綾波レイとは?と言う質問や発言が多いのです。確かに、綾波レイの不思議さや魅力は、本作品をろくに見ていない私にも十分伝わるものがあります。作り手側の意図はしっかり結果を残している様です。

 それでも私は、本作品の哲学的な意味も感じていて、そう言う視点で本作品を分析すると、テーマは一言で言えば「自分の存在」だと思います。それを過去に何があったのか?という振り返りの手法で、考えを進めて行くように物語が進むと感じました。とにかく、とことん過去にこだわりまくります。アドラー心理学では否定されがちな、トラウマが満載です。しかし、最終的に私には、各キャラクター達が、トラウマに囚われる自分を乗り越えて行く物語の様に感じ、そこに希望を持ちました。

 以下に庵野監督自身の言葉を抜き書きします。

「『エヴァ』の面白いところって、あの作品を見た感想というのが、その人の本質的な部分なんですよ。その人が持っているいちばん強い部分が『エヴァ』の評価で出てくる。カッコよさだけが、って言う人は、自分がそういう人間だってことなんです。心理学的にその人の本質が見えてくる。」

 しかし、アニメーターが作品を見る目というのは本当に面白いものだと思いました。絵を動かすことに本当に拘っているし、作品をかなり冷静に扱っている様子が伝わってきました。


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