2021年3月21日日曜日

山田 宗樹 ギフテッド (幻冬舎文庫)


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編ラスト49日

 残念ながら、東京五輪・パラリンピックで海外からの一般観客受け入れを断念する事が決まったようです。中止よりはマシと思い、新たな思いで大会開催に向けた準備が進められていく事になります。細かいことを言えば、一般客はダメでも、選手や関係者の多くが来日するわけですから、あたたかく迎える日本の姿勢は崩さないようにしていきたいと思います。

 さて、今日お勧めする本は、特別な才能に対して社会がどう向き合うのか示した、SF小説です。

 本書の設定で大事なことは、未知の臓器を持つ子供達の存在が確認されて、その臓器を持つ子供達がギフテッドと名付けられ、人類の飛躍的進化を示す存在としてもてはやされたこと。そして、その熱が冷め、その反動としてギフテッド達はバッシングを受ける世の中になっていると言う状況です。

 登場人物は、超常現象を起こすことのできる「奇跡のギフテッド」と呼ばれつつも、ギフテッドと普通の人類との共存を望む達川颯斗。子供時代、ギフテッドであるが故に、これまで過ごした土地でトラブルとなり、ギフテッドだけが通う中高一貫校に小学校から編入する友達。ギフテッドではない颯斗の幼馴染である佐藤あずさ。

 あらすじとしては、ギフテッドは何かのブームのように、持ち上げられた後、一般の人類との優位的な能力差が発見されず。逆に差別を受けるようになっていきます。そこで、颯斗の仲間であったギフテッドの「村やん」こと村山直美が、アイデンディティを失い超能力開発の修行をするギフテッド達と共に、大事件を起こして失踪します。ギフテッドと人類の対立がどんどん深刻化していくなか、同じように超能力に覚醒した颯斗とその幼馴染で一般人の佐藤あずさが、一般人代表として事件に立ち向かいます。非ギフテッドである人類は、ギフテッドを受け入れられるのか?どうしたらギフテッドと非ギフテッドは共存できるのか?物語は問いかけます。

 本書最大の魅力は、大多数の一般人がギフテッドと言う異能の存在にどう向き合うか?と言う、社会的な圧力や差別、多数派の暴力的な圧力です。そして、ギフテッド達が超人的な能力を持ちながら被差別者として不当な差別とどう向き合うか?このようにサイキックエンターテイメントなSFを通して描かれる、現実世界に存在する差別に対する問題提起がエグいと感じました。是非ご一読ください。

 

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