2021年3月13日土曜日

鬼塚 忠 花戦さ (角川文庫)


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編ラスト57日

今日は雪で折れた庭木の処理に、軽トラに枝木を積んで新発田市のゴミ処理センターに行ってきました。昨年も大掃除で出たゴミを出しに何度も通った場所ですが、今年はうちと同じように、枝木を積んだ軽トラが何台も受付に並んでいます。職員の方曰く、「今年は処分量が多く、ゴミを出すのをしばらく待ってください」と、言われるほどゴミが多いようです。大雪の影響がここにも出ているようです。

 さて、今日お勧めする本は、華道家元の池坊専好が華道に懸命にはげむ様子や、その立てた花を見事に活字で表現した小説です。

 主人公は初代池坊専好。六角堂と呼ばれる寺の住職で、代々花の名手として知られた家の当主です。池坊専好は庶民から専好さんと呼ばれ親しまれています。彼の立てる花は、人々にとって芸術であり娯楽でした。

 専好さんに対するものとして描かれるのは豊臣秀吉です。秀吉は明智光秀を討ち、主君の敵討ちを行い、信長に変わる天下人として大きな権力を握ります。昔百姓から成り上がってきたことを忘れ、次第に自分を認めないものの命を奪うほどの増長ぶりとなってしまいます。

 本書では、専好さんの美の探究におけるライバルであり、親友として千利休が登場します。専好さんと利休さんは同じ美の道を極めようとするライバルではありますが、専好さんにとって自分の美意識を唯一の理解者であり、無二の存在です。

 その利休が、秀吉と袂を分ち遂には切腹を命じられてしまいます。専好さんは、なんとか利休の仇を打ちたいと、前田利家に頼み、秀吉に自分の立てた生花を見てもらえれように、依頼します。

 天下人秀吉の機嫌を損なってしまっては、生命も守ることは叶いません。そんな秀吉に専好さんは命がけで花を見せ、秀吉の改心を迫ります。

 華道の世界を小説で表すという、他には見られないテーマを実に見事に描き切った名作です。是非ご一読ください。

 

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