2021年3月10日水曜日

北村 森 途中下車 ---パニック障害になって。息子との旅と、再生の記録

 


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編ラスト60日

 最近、らくらくトレイン村上に乗ろうとすると、やたらと電光掲示板の写真を撮っている人たちを見かけます。気になって調べてみると、らくらくトレイン村上は、3月13日のダイヤ改正で姿を消す電車だそうです。今日を含めてあと3回しか乗るチャンスはありません。昔何度か酔い潰れて寝てしまって私を、新発田を通り過ぎ、そおっと村上まで連れて行ってくれたこの電車とも、これでお別れです。

 さて、今日お勧めする本は、エリートサラリーマンがパニック障害に罹り会社を退職し、息子との二人旅によるリハビリで回復していくまでを記録したドキュメントです。

 本書の著者は、東京で家庭をかえりみず、人気雑誌の編集長として働いていましたが、働き盛りの40歳の時に体の異常を感じます。それは、これまで当たり前に乗っていた地下鉄などの乗り物に乗れなくなったのです。潜在的な罹患者を含めると百人に一人は罹患者となるような病です。著者はパニック障害の中で仕事を続ける事は出来ないと判断し、会社を退職します。

 本書の魅力は、パニック障害を患った著者が、症状が悪化していく様子、少しずつ回復していく様子を、事細かに赤裸々に記していることから、症状の出る描写に切迫感があり、読者が追体験することができる事です。その追体験を通じてあまり馴染みのない、パニック障害という病を自分ごととして身近に感じる事ができる事だと思います。

 本書を読んで私は、これまで遠かった保育園児の息子と著者の距離感が近くなっていく過程に感動しました。他にも、退職するという人生の岐路で寿司屋の親方からもらった言葉を二人で振り返る場面が良かったです。以下引用。「霜が降りた景色を見て、これからのつらい季節を気に病むのか、それとも天からの贈り物と感じて美しい景色を愛でるのか、これはまあ、人次第ということだ」

0 件のコメント:

コメントを投稿