2021年3月8日月曜日

夏井睦 傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編ラスト62日

 先月の話ですが、娘の手荒れがひどいため、皮膚科で診てもらいました。特別な検査もなく、コロナ禍でいろんなところに置いてある、手の消毒による手荒れとの診断でした。。皮膚が丈夫な人はあまり気にならないのかもしれませんが、感染予防の消毒は、皮膚にはかなりダメージになるようです。私も手荒れがひどいので、極力消毒しないように気を付けていたので、今年はいつもより荒れるということはありませんでした。

 さて、今日お勧めする本は、今はスタンダードになった治療法である、ケガの湿潤療法を紹介するために書かれた本です。

 私が初めて本書を読んだ10年前はまだまだ、本書に書かれた治療法は一般的ではなく、治療に用いるプラスモイストなどはあまり流通していなかったように覚えていますが、現在は本書の治療方法もすっかり市民権を得ているようです。

 本書の主旨は、傷や火傷など皮膚の疾患を治療するには、皮膚本来の自然治癒力を活用することが一番良いって事だと思います。

 そのために必要な措置は、患部を乾燥させず湿潤状態に保つこと、消毒をしないことの2点が重要です。

 そもそも、傷の治療については、専門とする診療科が存在しないそうです。そのため、著者がこの治療法を発見するまでは確たる治療法が確立していなかったそうです。

 私自身、子供の怪我に、すぐオキシドールで消毒をしていましたが、それは却って回復の妨げになる行為だったようです。そもそも、よほどの怪我でない限り、傷口からバイ菌が入って悪さをする前に、皮膚に住んでいる常在菌が退治してくれるようなので、消毒は不要だそうです。

 治療法の紹介や解説も面白いのですが、本書はとりわけ、著者が湿潤療法を発見していく過程を振り返る章が非常に面白いと思いました。まさに医学上の発見に立ち会う気分を味わえました。

 今ではすっかり市民権を得た治療法ですが、開発当時のロックな感じを味わえる本です。是非ご一読ください。

 

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