2021年3月16日火曜日

内田樹 日本辺境論(新潮新書)


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編ラスト54日

 コロナの新規感染者数が下げ止まったと、最近はしつこいくらいに報道されている。尾身新型コロナウイルス感染症対策分科会長は、国民の自粛疲れやクラスターの多様化が感染者数減少を妨げているように発言していましたが、どこまで行っても国民の責任を問う姿勢はいかがなものかと思います。今年も送別会など節目の行事はほとんど中止されています。しかし、中止するかどうか決める際にも、リスクの検討ではなく、なぜならそう言う空気だからという、言い訳がほとんどを占めているようです。

 さて、今日お勧めする本は、日本人らしさを先人達が繰り返し説明してきた書籍を元に大ざっぱに説明する本です。

 本書で語られる、日本人らしさとは「和を以て貴しと為す」という言葉が示すように、真理の探究ではなく、自身の幸福の追求ではなく、常に他者との関係性により担保されているため、常に他者との位置付けにしか存在し得ない物です。そのため、常に他との比較や順位付でしか自分らしさやアイデンティティを持ち続ける事ができないそうなのです。ですから、日本人は常に他国の動向を気にしてキョロキョロしているそうです。

 この事は、意思決定のプロセスを曖昧にしてしまいがちな性格に繋がり、よく聞く、「あの空気では逆らえないよ」とか「そうなっていたので
仕方がなかった」など、他律的な意思決定をむしろ好んで志向するような国民性があるようです。

 昔は中国、今ではヨーロッパやアメリカを文化の中心として崇め、その中心からの距離でしか自分を規定できない日本人。若干難しく読み辛かったのですが、得るものは多いです。その中の一つ。「学ぶ力」とは、「これを学ぶとこれを得る」と言う報酬の約束に形作られるものではなく、具体的な効果や理屈が無くても、自分にとって死活的に重要であると確信できる力であり、日本人が民族的に持つ力との事。日本人は盲目的に学ぶと言う、学ぶことについて世界でもっとも効率のいい装置を開発した国民だそうです。逆に、「先生それを勉強して何の役に立つのですか?」という問いは、学ぶ側として残念な状態を示す言葉であるとのことでした。是非ご一読ください。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿