2021年2月6日土曜日

三浦 しをん 舟を編む (光文社文庫)

 


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編274日目

 今日の昼間は良く晴れて、雪いじりに最適な1日でした。路肩の雪もだいぶ消すことが出来ました。しかし、雪いじりもそうですが、除雪をあらわす、雪かき、雪ほり、雪のけ、など雪に関する言葉はいろいろありますが、いずれもローカル色が強く方言っぽいですよね。私のよく使う雪のけは下越地方に使う人が多く、上越では使う人はいないようです。逆に下越では雪ほりという人はほとんどいないようです。ちなみに、辞書に載っているメジャーな言葉は雪かきのようです。

 さて、今日お勧めする本は、辞書の編纂というニッチな世界を舞台としたお仕事小説です。

 主人公は、玄武書房という出版社に勤める馬締光也。馬締は、辞書づくりひとすじ三十七年勤めてきた荒木に認められ、辞書編集部に引き抜かれます。馬締は、トンチンカンなところがあるものの、言葉に対する鋭い感覚と律儀さという、辞書編纂のために必要な素養を認められたのです。

 荒木は定年退職し、馬締に新たな辞書作りが託されます。新たな辞書『大渡海』は『広辞苑』や『大辞林』と同程度の規模の、中型国語辞典。名前の由来はひとが言葉を使って思いを伝えることを、舟に乗り海を渡る行為に例え、その舟となる辞書を編むという思いを込めて名付けられたそうです。

 ヒロインの香具矢と奥手の馬締のラブストーリーも十分面白いのですが、これでもかというほどこだわった辞書作りの過程がとにかく面白いのです。私が一番好きなのは、馬締が『大渡海』に使う紙の試作品を手にした時、ぬめり感が無いため作り直しを依頼するシーンです。辞書は言葉だけではなく、ページを捲りやすいようにハードとしても細心の注意を払って作るものだという思いが伝わってきました。

 辞書編集という小難しい作業をテーマにしながら圧倒的な読みやすさで、ぐいぐい物語に引き込まれてしまいました。登場するキャラクターも実に魅力的で、欠点も見当たらず本屋大賞受賞も当然とも言える作品です。ぜひ、ご一読下さい。

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