2021年2月20日土曜日

司馬 遼太郎 新装版 翔ぶが如く 全10巻(文春文庫)

 


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編288日目

 今から144年前に、西南戦争が勃発しました。2月20日は薩軍が熊本城にたどり着いた日です。熊本城を守っていた鎮台兵が薩軍に発砲し、ここから7ヶ月間にわたる長い戦いが始まったのです。

 ということで、今日お勧めする本は、サムライの時代から今に続く新しい時代に変わる決定的な転換点となった西南戦争を記録した小説です。

 本書から伝わる三つのポイントは、薩軍は男らしさに頼りすぎて勝つための議論ができない組織であったこと。西郷隆盛は西南戦争ではシンボルになることに徹して指揮を取らなかったこと。明治政府は元侍である士族たちにいつでも倒せる政府だとなめられていたことです。

 まず、本書で語られる明治政府は人材も少なくかなり不安定な組織であったと言うことです。圧倒的な実力者は大久保利通と西郷隆盛なのですが、後は佐賀の乱で死んだ江藤新平や、板垣退助など、実力者が次々に政府を離れていきます。各地で反乱が起こるなど、

 そして、西郷も政府を離れるのですが、それまでとはうって変わって、猟にばかり出かける世捨て人のような暮らしをしています。それは維新で活躍した偉人には見えない様子であったそうです。この西郷を慕って鹿児島に結集する士族たちは西郷を暗殺しようとする政府に一言口上を述べようと東京へ向けて兵をあげるのです。しかし、西郷は最後まで薩軍の指揮を取ろうとせず、明治政府に敗れることに使命を果たそうとしているように見えます。

 私にとって本書は、明治政府に対するイメージをガラリと変えてくれる本でした。ぜひ、ご一読下さい。

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