2021年2月15日月曜日

有川 浩 阪急電車 (幻冬舎文庫)

 


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編283日目

 2月も半ばになると好天が続き、家の周りの雪もだいぶ消えてきました。天気予報では、今日の雨が明日以降、雪に変わるそうです。また雪が降って無駄になることは分かっているのですが、やはり、何とか早く解けてもらいたいと思い、運動不足解消など理由をつけて雪いじり。雪国では春は待つものではなく、労働の対価として得るものという感じがします。明日から、また電車の遅延等に注意しなければいけません。

 さて、今日お勧めする本は、8駅片道15分と言うローカル線を舞台に繰り広げられる連作短編小説です。

 その舞台は阪急今津線、宝塚駅から西宮北口駅までの8駅の片道15分のローカル線です。一駅一駅のタイトルで、物語が編まれています。そうして、往復16話の物語が語られます。登場人物はそれぞれの駅で乗り降りしてくる乗客たち。電車に乗るまでか、電車の中で各々の人生におけるターニングポイントを迎えます。

 例えば、電車の中で初めて言葉を交わして知り合うカップル。婚約者を寝取られながら、復讐のために出席した結婚式帰りの女性。DVな彼氏との別れるきっかけを掴んだ女性。おばさんグループに馴染めないストレスに苦しんでいたがグループからの離別を決める主婦などです。

 本書の魅力は、電車が駅に停まるたびに、次々入れ替わる登場人物たちの繋がりが、陸上のリレーを見ているように、受け継がれていく様子です。受け継がれるバトンは、登場人物を通じて世の中をホッコリ温めてくれる優しさです。

 著者の描く登場人物は、世間の常識や客観的な視点を共有しあえる稀有な存在です。そうでなければ、白いドレスを着た結婚式帰りと思わしき女性に「討ち入りは成功したの?」なんて老婦人が声をかけることなんてありえないことです。

 周りの人々に慮る人に囲まれる擬似体験を味わえる有川ワールド全開の本書は、かなり世間の荒波を和らげてくれる効果があると思います。ぜひ、ご一読下さい。

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