2021年2月23日火曜日

宮部 みゆき 火車 (新潮文庫)

 


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編291日目

 新聞など報道によると、2013から2015年に行われた生活保護費の減額は違法との判決が大阪地裁で下されたそうです。確かに、厚生労働省が引き下げの根拠とした説明は確かに、減額するための辻褄合わせに感じられるところはありますが、生活保護費と最低賃金や年金受給の逆転現象など考えると、裁量権の逸脱や乱用とまで断じるのは如何なものかと思います。

 さて、今日お勧めする本は、経済的に行き詰まり姿を消した謎の女性を追うミステリーで、著者の代表作とも言われる作品です。

 主人公は、公務で足に怪我を負い休職中の刑事である本間。本間は遠い親戚の和也から人探しの依頼を受けます。それは、失踪した彼の婚約者関根彰子です。ふとしたきっかけで、和也は彰子がクレジットカードによる借金で自己破産していたことを知ります。和也が自己破産について彰子に問いただした翌日、何の説明もなく彰子は姿を消してしまうのです。

 休職中とはいえ、刑事としての好奇心から捜索を引き受けます。しかし、調べ始めてすぐに、本間は彰子の過去が虚偽により隠されていることに気がつきます。そして、自己破産していた彰子と和也の婚約者である彰子が別人であるという仮説を立てるようになります。

 彰子の本当の過去と正体が、本間の捜索により次々に明らかになり、本間はとんでもない犯罪の可能性に気がつきます。

 著者によるミステリーは、謎が少しずつ明らかになっていく真相の見せ方がうまく、謎解きの過程を楽しませてくれる作家さんだと思います。本書も長い話ですが、どんどん物語に引き込まれ、最後まで一気読み必至の傑作です。ぜひご一読下さい。

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