2021年2月22日月曜日

養老 孟司 バカの壁 (新潮新書)


 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編290日目

 東京都での新型コロナ新規感染者数が200人を下回り178人の感染が確認されたそうです。私には第3波もようやく終息したというニュースと受け取ったのですが、ネットでの口コミは千差万別です。むしろ、まだまだ怖いと言うのが多数派のようです。コロナ騒動ほど数字に対する受け止め方の個人差が大きいことを実証した事案はこれまで無かったように思います。これからは、ワクチンにより終息に向かっていくと思われますので、個人的にはかなり安心しています。

 さて今日お勧めする本は、認知能力などの違いがもたらすコミュニケーションの不具合について論じるエッセイです。

 本書の最大の功績は、人それぞれの認知の境界を「バカの壁」と言う強烈なキーワードで括ってみせたことです。

 本書のタイトルを目にした人は、「バカの壁」とはいったい何を示しているのか興味を持つと思います。しかし、「バカの壁」とは、わかる人にはわかるが、わからない人にはわからないと言う境界線を表現したものでしかありません。ですので、「バカの壁」が大事なのではなくて、「バカの壁」がもたらすコミュニケーションのギャップがさまざまな場面で問題をもたらすということです。

 認知の違いとは、同じ場面を見たり、同じ情報に触れても、理解したり受け取る情報は人それぞれで、その人の能力はもちろん、経験や環境などが大きく影響して、情報が受け取られるそうです。

 昔から「話せばわかる」と言う言葉もありますが、認知の違いが有れば、いくら頑張って話したところで、相手は自分の言葉を100%受け取ることができず、話してもわからないことが、世の中に溢れているそうです。それは、常識という世の中のあたりまえであることも人それぞれで異なるということです。それは人それぞれの正義の違いにも言えることであり、世の中の争い事は、人それぞれのわかる範囲の違いで起こると言っても過言ではないことを本書では示唆しています。

 正直言って、本書は著者の話言葉を口述して書かれた本なので、言葉の意図にたどり着くにはかなりの読み込みが必要と思います。私もこの本は何回か読んでようやく分かりかけてきたところです。それだけ奥が深く面白い本ですので、ぜひご一読下さい。

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