2021年4月30日金曜日

貴志 祐介 新世界より上中下巻 (講談社文庫)

『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編ラスト9日

 テレビで、90年代に大流行したたまごっちのお葬式についての昔の映像が流れました。これをみて、お葬式はあくまでも生きている自分達の気持ちのためだけに必要なイベントなのだとあらためて思いました。なぜなら、仮想空間で存在していたたまごっちのお葬式には、そのゲームの持ち主の気持ちを慰めたり、ケジメをつけたりする効果しかないわけですから。仮想の世界は思っている以上に私たちの日常を乗っ取ってしまっているようです。

 さて、今日お勧めする本は、超能力(念動力)のある世界をモチーフにした、SF小説です。

 本書の魅力は、超能力(念動力)のある世界をモチーフにすることにより、人種差別や格差社会などについて考えさせられるところです。

 主人公は渡辺早季。彼女は、約1000年後の日本、神栖66町に生まれ、学校に通っています。その学校は、呪力と呼ばれる、超能力の習得を訓練するための学校で、呪力の発現前は、現代の小学校のような学校に通い、呪力に目覚めてからは、全人学級という超能力の訓練を徹底して行う学校に通います。

 早希の住んでいる神栖66町は、八丁標という結界で囲われた平安な土地ですが、一歩八丁標の外に出ると、危険な世界が広がっています。その一つが、バケネズミです。人間は自分たちより遥かに多く存在するバケネズミを支配し、奴隷のように使役させています。しかし、あることがきっかけとなり、バケネズミの大反乱が起こってしまうのです。

 本書を読んだ時に私は、まず、壮大なスケールで描かれた世界観に感動し、その世界の格差や差別の描写に深く考えさせられました。SF作品ならではの異世界を楽しめる作品です。是非ご一読ください。

 

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