2021年4月10日土曜日

V・S・ラマチャンドラン 脳のなかの幽霊 (角川文庫)


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編ラスト29日

 娘の自転車から補助輪を外しました。本人は怖がって、先延ばしにしていたのですが、半ば強引な決定です。いざ練習を開始してみると、不思議な方向へ倒れていき、バランスをとるなどという次元ではありません。感覚がつかめるようになるまで、だいぶ長いお付き合いになりそうです。しかし、『感覚をつかむ』という言葉もうまい表現ですね、脳の中のぼんやりした感じと技術を習得するはっきりした感じをうまく組み合わせているように思います。

 さて、今日お勧めする本は、脳という器官の不思議を一般の人に向けて伝える本です。

 本書では、脳の不思議を、著者が治療した患者の症例や、実験の結果などから紹介しています。例えば、幻肢と言って、事故や手術などで手足を切断した後も、失われた手足があるように感じている患者があるそうです。幻肢は時に耐え難い痛みを覚えることがあるそうなのですが、肝心の手足がないためその痛みに対する治療ができません。幻肢の治療として、鏡を使った錯覚を利用する方法などが紹介され、その中で知覚と脳の不思議な関係を知ることが出来ます。

 他にも、赤いものを赤いと感じたり、痛いものを痛いと感じたりする、主観的な生の感覚をクオリアと呼ぶそうなのですが、そのクオリアについてもさまざまな不思議な話がされています。

 脳の研究という非常に高次元な話を、多くの症例や実験の話題を通して興味深く身近な問題として捉えることのできる良書です。是非ご一読ください。


 

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