2021年4月8日木曜日

重松 清 流星ワゴン (講談社文庫)


 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編ラスト31日

 新学期が始まり、息子が先日、部活で使うスパイクをメルカリで買っていました。息子曰く、あと2ヶ月しか使わないんだから、新品買うの勿体ないでしょ。っと、すでに引退を意識した物言いです。じゃあ、2ヶ月後すぐに売れば、買った時と近い値段で売れるねと言ったら、「最後のスパイク何だから、もっと大事に持っておきたいよ」おっしゃる通り。本当に一生懸命取り組んできたことの伝わる言葉でした。息子はすでに自分にとって何が最適かを決断できるまで成長している様です。

 さて、今日お勧めする本は、父親と息子という関係をこれでもかと掘り下げた感動小説です。

 主人公の永田一雄は、妻から離婚を迫られ、息子は中学受験に失敗し引きこもりとなり、自分は会社からリストラされるという、人生のどん底にいます。そして、癌で闘病中の父を見舞いその帰りです。一雄は、父とは不仲ですが、田舎に見舞いに帰ると父が用意してくれるお車代の五万円をあてにして、見舞いに通っているのです。

 そんな、見舞い帰りの一雄が、つい死んでしまいたいという思いに落ち込んでいきます。その時、目の前のワインカラーのオデッセイに誘われ乗り込み、不思議な時間の旅に出ます。運転手は橋本さん。5年前に家族旅行で交通事故を起こし、息子と共に即死した人です。助手席に乗っているのは健太くん。橋本さんと一緒に即死した息子さんです。

 すでに死んだ人間である橋本親子と旅する先は、最低な現実に至るターニングポイントとなった大事な時間を追体験し、やり直しをする旅のようです。そして、その旅では、現実世界では不仲であった父親も自分と同い年まで若返り、チュウさんという朋輩として同行します。この不思議な四人の傷を癒す旅です。

 とにかく、泣けます。一雄とチュウさん、一雄とその息子、そして橋本親子。それぞれの父と息子という関係が徹底的に描かれています。不思議な世界で出会った一雄と同い年の父親チュウさんのやりとりがとても良いのです。子供の頃は理解できなかったチュウさんの事もいつのまにか受け入れられるようになっていることに一雄は気が付いていくのです。

 息子との関係に悩みがある人にはもちろん、悩みのない人にも癒し効果のある本だと思います。是非ご一読ください。

0 件のコメント:

コメントを投稿