2020年11月23日月曜日

岡田 斗司夫 「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編199日目


 先日の大相撲千秋楽は、大関貴景勝と小結照ノ富士の優勝争いが実に面白かったです。本割では照ノ富士の力強さに圧倒されていた貴景勝が、優勝決定戦で見せた鋭い立ち合いと迷いのない突き押し。まさに心技体が揃った会心の一番でした。来場所以降も活躍に期待しています。


 さて、今日お勧めする本は、フィクションの世界で悪役の旗印となる世界征服について、真面目に検討した本です。


 この本の主旨は、特権階級もなく自由主義経済が一般的になった今の時代では、世界征服はウマミが無いよって事だと思います。


 アニメ制作に関わっていた著者は、なぜ悪役が世界征服をしたいのかという、疑問にぶち当たります。


 そこから著者による、悪役の持つ願望と世界征服についての、考察が始まります。著者に言わせると、世界征服は目的ではなく、手段でなければならない。そのため、悪役達には世界征服した後、何をしたいのか、明確な理念を持つ必要があるとの事です。


 著者が挙げる悪役の中で一番論理的に筋が通っているのは、宇宙戦艦ヤマトの悪役、ガミラス星人です。ガミラス星人は、人類を絶滅させ、地球を放射能で汚染する事で、自分たちの居住環境に近づけて、移住する事を目的としているからです。


 逆に北斗の拳に出てくるサウザーは、子供にピラミッドを作らせるという、明らかに非効率な事を圧倒的な支配力を無駄遣いして行っているのですから、わけがわかりません。


 結局、世界征服を可能にするためには、圧倒的な、人手と資金と手間が必要であることがわかります。そして、それを果たしたところで、自由主義経済の生み出す価値やサービス、つまりお金で買えるものに、叶わない恩恵しか得ることが出来ないのであれば、本末転倒である。という結論を導き出した挙句、今の価値観を否定する最新の世界征服を提案して終わります。


 ドラゴンボールや北斗の拳などフィクションの世界をたくさん引用しながら語る、政治哲学といっても良い本だと思います。ぜひご一読ください。



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