『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編219日目
以前紹介した、『ミッドナイト・バス』の映画が、29日にBSNで放送されるそうです。小説も良かったのですが、映画も県内ロケでいろいろなところが映っていて、すごく良かったので、テレビ放送も楽しみにしています。
さて、今日お勧めする本は、中学生で作家デビューした鈴木るりかさんの小説です。
この小説の魅力は、母子家庭でもビンボーでも幸せに生きる主人公花ちゃんのお母さんのセリフが前向きで、優しさと強さが伝わってくるところです。
本作は、作者が「12歳の文学賞」を受賞した作品を改稿、書き足したものです。主人公花ちゃんとお母さんの母子家庭を中心とする連作短編となっています。
花ちゃんは、「Dランドは遠い」(作者の初めての作品)で見せた健気さが素晴らしい。友達に誘われたDランドに行きたいのですが、フリーパスは6千円もします。花ちゃんにはお小遣いもお年玉の貯金もありません。そこで、友達と違い塾に行っていない花ちゃんは、有り余る時間を使って自動販売機の釣り銭拾いを始めます。一週間かけて180円しか得ることの出来ない花ちゃんの結論が素晴らしい。
お母さんは、女手一つで花ちゃんを育てています。真っ黒に日焼けして、土木作業員として働いています。肉体労働からか、犬のようにご飯に食らい付き、たくさん食べても痩せています。そして、学歴はいまさらつかないけど、教養は後からでも身につくと、新聞をよく読み、新聞に書いてあることを絶対的に信じています。好きな言葉は「元が取れる」「買えば高い」「一山当てる」。
一番のお勧め、最終話「さよなら、田中さん」では、そのお母さんと花ちゃんが、花ちゃんの同級生三上君が橋の上で思い詰めていたところを晩餐に誘います。スーパー激安堂で半額になっていたお惣菜で、ささやかなパーティーです。その時のお母さんのセリフが良かった。「悲しい時、腹が減っていると、余計に悲しくなる。辛くなる。そんな時はメシを食え。そして一食食ったら、その一食分だけ生きてみろ。それでまた腹が減ったら、一食食べてその一食分生きるんだ。そうやってなんとかしのいで命をつないでいくんだよ」
何度も、涙腺を刺激される素晴らしい作品ですので、ぜひ、ご一読ください。
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