2020年12月29日火曜日

石持 浅海 カード・ウォッチャー (ハルキ文庫 い 18-1)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編235日目


 年末年始の休み初日は、年賀状を書いています。キチンとした人はクリスマス位には出しているのでしょうが、ズボラな私は毎年このタイミングです。最近は出さない人も増えて来ているようですが、私は親戚や恩人、友人に向き合えるこの習慣に豊かさを感じて、やめられません。


 さて、今日お勧めする本は、事件の解決が目的では無い、ちょっと変わったミステリーです。


 本作の探偵役は、労働基準監督署の北川。物語の舞台は塚原ゴムという会社の研究所です。そこは、少ない職員で業務をこなすため、恒常的にサービス残業が行われている部署です。


 ある日、そこで職員が座る椅子が壊れ、怪我をします。労働基準監督署で問題視され、臨検のため職員が派遣されます。それが北川。


 臨検に備える最中に、塚原ゴムの職員八尾が研究所の倉庫で死んでいることが見つかります。


 そこに臨検で訪れた労働基準監督署の北川が、名探偵のように謎を解いていきます。その登場人物たちの発言から真実を見抜いていく謎解きの様子が実に軽妙で楽しめました。


 ミステリーとして、十分面白いのですが、そもそも労災とはどういう事か?会社のためにと思って当たり前にやっている事は実は労働基準法違反じゃあないのか?など、労働基準法の基本がよくわかる、いわゆるタメになる小説です。


 舞台となった塚原ゴムのようにサービス残業を強いられても必死に働いているサラリーマンが現実にたくさんいるだけに、このような小説はもっと読んでもらってもいいと思います。


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