2020年12月5日土曜日

相場 英雄 震える牛 (小学館文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編211日目


 今朝Amazonに頼んであった黒ラベルの24本入りが届いた。ネットショッピングは、安くて便利だけど、みんながそれをしてしまうと、リアル店舗が崩壊してしまうから、出来るだけ避けてきた。しかし、また安くて便利な仕組みに流れてしまった。コストと聞くと、少ない方が良いと思うが、コストが人件費である限り、誰かのお財布に入る大事な支援金だ。貧しい時はコストを節約した方が良いのだろうが、地域のためには、コストをかけてでも地域にお金を回せば良いのだろうし、とても難しいです。


 さて、今日お勧めする本は、三条市出身の作家、相場英雄さんの出世作です。


 本書の魅力は、ミステリー小説という体裁で、主題は自由市場主義へのアンチテーゼであるところ。コストカット競争の勝者は世の中に幸せをもたらしてくれるのだろうか?ここが最大のテーマです。プロローグとエピローグで刻まれる、言葉が良い。「極限まで推し進められた自由市場主義はおそろしく偏狭で、近視眼的で、破壊的だ」


 本作の主人公は、警視庁で迷宮入り濃厚な未解決事件を担当する田川。ある日、捜査一課長から特命で、ある事件の捜査を依頼されます。


 田川は、愛用の肥後守と言うナイフで鉛筆を削り、事細かに関係者の証言をメモしながら事件の真相に迫る、地取り捜査を得意とする刑事。早速取り掛かった捜査で、この事件の初動捜査が杜撰であった事に気付きます。


 事件の捜査と並行して、精肉店から大規模ショッピングセンターの全国展開にまで発展したオックスマートの経営陣が描かれる。取締役経営企画室長の滝沢が、マスコミなどから組織を守るための奮闘が本書のもう一つのストーリーとなっている。


 そしてもう一人、オックスマートが業績を拡大するために行った数々の不正を暴く事ために取材を続けるマスコミの鶴田。彼女は、ある情報提供者から、オックスマートが行っている食品偽装というネタに行き着きます。


 本書は、事件を捜査する刑事、会社を守るためグレーゾーンな仕事にも手を染める組織人、社会的正義を貫こうとするジャーナリストの三者の視点から、一つの真実に辿り着くように物語が進んでいきます。


 作中、新潟や三条が出てくるのですが、郊外のショッピングセンターにボロボロにされた、画一的な地方都市として描かれています。すこし寂しい反面、著者の視点で見る故郷は、また違ったところに見えて、興味深く感じました。


 ミステリーとしてはもちろん、社会派サスペンスとしても楽しめますので、ぜひ、ご一読ください。


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