2020年11月28日土曜日

池井戸 潤 架空通貨 (講談社文庫)

 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編204日目


 ビットコインはこの一週間で、20%の幅で増減しています。今のところ、どこにも使う事のできない通貨ですが、今後ビットコインで決済が可能になるという情報もあり、投機目的で購入する人が増えています。世界中で取り引きされているコインですから、紙屑になる事は無いでしょうが、大暴落も何回か起こっているそうなので、資産として持つのは危険です。お小遣いの範囲で持って置いて、10倍、20倍になる日を楽しみに待ちたいと思っています。


 さて、今日お勧めする本は、池井戸潤の初期作で、お金にまつわるサスペンス小説です。


 主人公の辛島は元商社マンで、企業の信用調査をしていたのですが退職し、今は高校で社会科を教えています。ある晩、教え子の黒沢麻紀が父親の経営する会社、黒沢金属工業の事で相談しに来ます。


 黒沢金属工業を倒産の危機から救うため、辛島は東京から400kmも離れた田神町にある田神亜鉛という会社を訪ねます。田神町は、田神亜鉛とその関連企業で成り立つ、企業城下町で、田神札と呼ばれる独自の通貨が流通していました。


 辛島は黒沢金属工業を救うための交渉を田神亜鉛に持ちかけますが、次第に田神札などのあやしいからくりに気がつきます。


 最後は田神亜鉛の経営者、安房正純が大きな仕掛けをしますが、その被害者で田神町は大混乱に陥ります。


 辛島は黒沢金属工業を救うことができるのか?田神町はどうなるのか?400ページを超える長編ですが、一気に読めてしまいます。


 勧善懲悪が気持ちの良い半沢直樹の池井戸潤とは一味違う本格的な良さがあります。お金や資本主義の危うさや真理を、やや極端な話にはなっていますが、しっかりと描きこんでいます。特に田神亜鉛という中堅企業が支配する企業城下町田神町とそこに訪れる危機の描写に迫力があってとても面白かったです。


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