『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編ラスト10日
娘が自転車を漕いで乗れるようになりました。ほんの数十メートルですが。きっと、この日を忘れないのでしょうね。私は今でも父親と一緒に自転車の練習をして初めて乗れた日のことはよく覚えています。娘もこれから様々な身につけるべきことがありますが、きっと前向きにのりこえていけるのでしょう。自転車に乗れるようになる事は、努力で自分の世界を変える劇的な成功体験だと思うのです。
さて今日お勧めする本は、虚栄心など、人目を気にする自分と向き合う小説です。
主人公の歩は、小さな頃からルックスが良く、優れたバランス感覚によって、上手に周りの期待に応えることのできる子供でした。歩の家は父と母、そして姉の4人家族です。しかし、あることがきっかけで、両親が離婚してしまいますが。歩の最大の悩みであり、コンプレックスは、姉の貴子がその場所で一番のマイノリティであろうとすることに全力を注いでいるような超個性的な人間であったことでした。
本書は、歩が生まれてから40手前になるまでの自叙伝として書かれています。前半は輝かしく、家庭に不和が訪れても、自身のバランス感覚と逃げる能力で、明るい日常を過ごす歩が描かれています。唯一の悩みは、変わり者の姉貴子の存在ぐらいです。そんな歩が、後半では打って変わり、ひたすらに落ちぶれていきます。本書の中の表現で、「奈落の底にも段がある。僕は数センチに満たない高さの段をひとつ上り、なんとか澄江を下に見ようとした。」とあります。歩は相対評価など、他人と比べてしか自分の価値を実感できないのです。
そんな、いつも誰が上で誰が下かということばかりにこだわりすぎて、自分を見失ってしまう歩を救うのは、それまでとことん毛嫌いした姉の貴子でした。
タイトルであるサラバという言葉の意味や、歩のたどり着いた境地については、本書を読んで、ご自身で味わって欲しいと思います。是非ご一読ください。
0 件のコメント:
コメントを投稿