『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編ラスト18日
予備知識なしで、映画を見に行き、その作品の良し悪しを確かめるという、バカな挑戦の2回目としてシンエヴァンゲリオン劇場版に挑戦してみました。その結果は、「全くわからない」でした。途中参加はまったく許されない、閉鎖的な作品と感じました。一番印象的なのは、映画のあらすじを簡潔にまとめることが出来ない作品である事です。よく言えば、言語化できない壮大な内容の作品でした。たぶん、エヴァンゲリオンという世界に終止符を打つためだけに目的を絞って作られた作品だと思います。
さて、今日お勧めする本は、リコール隠しという、企業の闇を切って捨てる痛快なエンタメ小説です。
本書の魅力は、企業は顧客の利益を無視しては絶対に存続できないことをわかりやすく伝えていることだともいます。取り上げたモチーフの内容からも、社会派的な作品に仕上がっており、ベストセラーの多いこの著者の作品群でも、最高傑作と言っても良い作品だと思います。
主人公は、赤松徳郎。90人の社員を抱える運送会社の社長です。彼の会社のトレーラーが運送中に、そのタイヤが脱輪し、そのタイヤに轢かれた33歳の若い主婦の命を奪ったことから物語が始まります。
世間の目は、赤松の会社の整備不良による事故と考え、風評被害を恐れた荷主が仕事を断ってきたり、主要銀行が融資の申し入れを断ったり、赤松の会社、赤松運送は大ピンチに陥ります。
赤松は、事故の原因が自分の会社の整備不良ではないと思い、その証明のために必死に取り組みます。しかし、トレーラーのメーカーである、ホープ自動車は赤松運送の整備不良と一方的に断定し、その証拠も示さず事故原因を探るために必要となる、トレーラーの部品の回収にも応じてくれません。
そこには、財閥系大企業であるホープ自動車の、組織内での事情が深く絡んできます。本作では、沢田というクレーマー対応の課長が、ホープ自動車内のストーリーの語り手として、いかに組織の腐敗が進んでいるか、個人の倫理と組織人であることのバランスをどうとっていくのかという、難しい問題を提示しています。
著者の作品ですから、もちろん勧善懲悪の痛快な小説になっているのですが、主人公赤松の苦労が半端ではなく、読んでいくのが辛くなることが多いです。それでも、自分の信じる道を真っ直ぐに進む赤松の姿に感動します。
さらに、私が感銘を受けるのが、本作の冒頭が、亡くなった主婦の夫の想いから始まっていることです。あまりにも深い絶望と喪失感で始まることにより、本作は、単なる犯人探しの物語ではなく、責任と贖罪の物語であることを強く訴えています。
社会で生きる一員として大切な顧客第一主義、県職員で言えば県民第一主義を深く再認識させてくれる作品です。是非ご一読ください。
0 件のコメント:
コメントを投稿