2021年4月13日火曜日

司馬 遼太郎 項羽と劉邦 上中下巻 (新潮文庫)

  


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編ラスト26日

 最近の暴飲暴食がたたり、ついに1kg半以上のリバウンドをしてしまいました。まあ、昼間から休みをとって餃子の王将で飲んだり、七輪パーティーで飲み食いしたり、山菜の天ぷらをお腹いっぱい食べたり、まあわかりやすい暴飲暴食だったのですが、見事なリバウンドです。どうも人間の体は、好きなだけ食べると太る様にできている様です。しかし、いつも腹ペコいる事にも疲れてしまいます。目の前の料理に箸をつけずに捨ててしまう事も出来ません。しばらくは、酒を減らして様子を見ようと考えています。

 さて、今日お勧めする本は、中国の歴史、秦の末期から漢の成立までの、項羽と劉邦の覇権争いを描く歴史小説です。

 本書の最大の魅力は、リーダーとはどうあるべきなのかを考えさせられる点だと思います。

 上巻では、漢をひらいた劉邦と項羽の戦いを描くこの作品は、秦の時代から物語を始めています。始皇帝はまだしも2代皇帝胡亥と宦官趙高の酷い様子が描かれています。秦の法家思想を逆手に取り、法を利用して国を私物化していくのです。そして、項羽と劉邦の出自について詳しく描かれています。貴族としての項羽と、農民の出で若い頃はゴロツキとしか言えない暮らしをしていた劉邦。出だしから、世界史の授業では学べなかったリアルで重厚な中国史が学べます。

 中巻では、秦への反乱軍として同僚だった項羽と劉邦は、秦を滅ぼした後、全面的に対立して行きます。武将として満点のカリスマ性を持つ項羽と、人の話をよく聞く事以外はまるで取り柄もない劉邦。項羽に負け続ける劉邦には蕭何、張良、韓信をはじめ、様々な才能を持つ優秀な人間が集まり、臆病で戦下手で身動きが鈍くろくに文字も知らない劉邦を助けていきます。とにかく負けまくりの劉邦に何故か人が集まってくると言う巻でした。

 下巻では、劉邦は負けては逃げ、負けては逃げを繰り返しつつも、別働隊により楚軍の補給を絶ち、飢えと疲労により逆に項羽を追い詰めていきます。いざ決戦となれば必勝を信じて疑わない項羽は、軍の柔軟な運用を行えず、劣勢となり、敗走の果てに味方のはずの同郷人にとり囲まれます。四面楚歌という言葉の元となったこの窮地に項羽は負けを悟ります。不世出の軍神項羽と、凡人劉邦を適材適所で支える部下という対立の構図は、リーダーシップとフォロワーシップの比較とも言えて面白いです。そして勝負を分けたのは、劉邦軍の卑しいまでの食料へのこだわりであったところも、深いと感じました。

 政治倫理としてはもちろん、組織論としても、リーダー論としても、非常に多くの気づきを得ることが出来る作品だと思います。是非ご一読ください。

0 件のコメント:

コメントを投稿