2021年5月5日水曜日

荻原 浩 なかよし小鳩組 (集英社文庫)


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編ラスト4日

 NHK総合で「赤ちゃん本部長」なるアニメを目にしました。47歳の武田本部長がある日突然赤ちゃんの姿になってしまったと言う物語。赤ちゃんだけど声も思考力も47歳のまま、体の機能が赤ちゃん並みになってしまったもの。赤ちゃんの声がまさしくおじさんのものであるギャップが見ていて楽しい。一本5分と言うテンポの良さも時間を取られずに良い。NHKプラスで見逃し配信をやっていたので、早速全部観ました。テーマは助け合いの世の中についてだと感じました。続きが楽しみです。

 さて、今日お勧めする本は、倒産寸前の零細代理店のダメサラリーマン達を描いたユーモア小説です。

 本書について、今回取り上げたいのは、アル中でバツイチのコピーライターである主人公杉山と、その娘早苗の別れの物語が切なくて泣けるところです。

 本書のストーリーは、零細広告代理店であるユニバーサル広告社が、ヤクザである小鳩組のイメージアップ戦略という仕事をする中で、別居中の娘である早苗が杉山の部屋に転がり込むと言うお話です。

 この作品では、早苗のキャラクターが明るくて楽しくて魅力的です。そして、お昼の奥さま劇場『愛のシュラ』のセリフを真似て口にするのですが、ハッとさせられる鋭いセリフが良いです。例えば、杉山達が別れた理由を聞いて、「幸せは比べるものじゃないわ」「不幸は比べることから始まるのよ」と、『愛のシュラ』のセリフを口にして、杉山を驚かせます。

 早苗は新しい父親と上手くいっておらず、何かと杉山を頼ってくるのですが、新しい父親から早苗と距離を置いてほしいと杉山は頼まれます。そして杉山は早苗と二度と会わないことを決心するのです。

 メインストーリーのヤクザとのやりとりなども面白いのですが、新しい家庭に生きる早苗との物語が切なくて、読み応えがあると思います。是非ご一読ください。
 

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