ブックカバーチャレンジで、再読していたのですが、ようやく読み終わりました。かなり遠い未来の日本を舞台にした物語「新世界より」です。この作品は、呪力と呼ばれる念動力をつかいこなす人間の社会を描く事によって、今の社会を鏡に写すように表現しているようです。
ブックカバーチャレンジでも紹介しましたが、今回は本作品で描かれている差別について、触れたいと思います。
私がこの作品で一番好きなところは、差別に対する嫌悪感を強烈に感じさせてくれる事です。前述の通り、主人公たちは、呪力を使いこなす人間しか存在しない世界で暮らしています。人口も少なく、生産性に乏しい主人公たち人間はバケネズミという、人間の子供くらいの大きさで知能を持った動物を奴隷のように使います。
バケネズミは、哺乳類でありながら、蟻や蜂のように、女王を中心とするコロニーで生活する生き物です。知能はどれくらいかというと、コロニーの上位のものは日本語も喋れるほど頭がいいのです。猿やイルカなんてものではありません、はるかに優秀な知能を持っているのです。
ですが、バケネズミは、呪力を持った人間には逆らえません。刃向かったら、呪力で殺されてしまうからです。作品中では、頭を飛ばされたり、首の骨を折られたり、身体中を発火させられたり、バケネズミが殺されるシーンが満載です。主人公達も子供の頃から、バケネズミを躊躇なく殺しています。
まあ、バケネズミが殺されるのは、人に危害を加えたとか、命令に逆らったとか、一応の理由はあるのですが、理不尽なまま殺されていくのです。とにかく倫理などあってないようなもので、主人公たち人間に不道徳を感じ、不快な気持ちで満たされます。
差別なんです、呪力を持っている人間は、日本語を話せる知性を持つバケネズミを差別しているんです。種族の違う獣だから仕方がないのかもしれません。しかし、バケネズミの命とか存在とか価値を認める事なく、分かり合おうとする事なく、がっつり差別しているんです。
そして、とうとうバケネズミ達が人間たちに復讐する日がやってきます。今度は逆に人間たちがバタバタ殺されていきます。呪力なんかあっても、バケネズミたちの巧妙な作戦によって次々に犠牲が増えていきます。
何故、バケネズミたちは反乱を起こしたのでしょうか?主人公は、絶体絶命のピンチをどうやって切り抜けたのでしょうか?物語の最後にたどり着く答えには、きっとゾッとすると思います。
この作者は本当に怖い話を書かせたら天下一品ですね。
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