本書は、頼み事という切り口で人間関係について考えさせられる良いテキストだと思います。三部構成からなる本書の第一部では、人に頼み事をするときに誰もが抱く抵抗感とその誤解について。第二部は、相手の自律心に任せ、決してコントロールされているように感じさない頼み方について。第三部では、有意義な人生を過ごしたいという思いを尊重し、誰もが有意義に人生を送るためのアプローチについて、学ぶことができました。
本書の中で印象深い箇所は、自分たちの行動が現実世界に影響を及ぼしているという手応えを感じる事は、私たちの本能的な欲求として存在するという事です。つまり誰しも、この世に生きた証を刻みつけたいと思っているのです。それは、少しでもバズらせたいという多くの人からの投稿により、SNSやYouTubeが大盛況であることが裏付けていると思います。
そして、それは自分が犠牲を払ってでも叶えたいという強い欲求だそうです。人は快楽ではなく、周りへの影響力をより欲することが往々にしてあるということです。逆に、やっている事が無意味だと思ったり、手応えを感じられない事は、人のやる気や生きる気力そのものを減じさせる原因になるのだそうです。例えば、賽の河原で積んだ石が鬼に崩され続ける事も手応えのない無意味な苦役だと思います。これが永久に続けさせられるのですから、まさに地獄なのでしょう。また、賽の河原の逆の事をすれば、天国にいるような幸せを感じるのかもしれません。昔からの言い伝えは、社会心理学の叡智に匹敵するようです。
話が逸れてしまいましたが、本書では、人が持つ影響力への欲求を満たすためにも頼み事は有効だそうです。良い人でいたいという、自然な人の本能を信じ、決して相手をコントロールすることなく頼み、応えてもらえたらどれだけ有用だったのか示すことが、相手を幸せにすることにつながるとのことです。
人は親切でありたいのです。頼み事をしあう事は、その気もちを満たし、人生を豊かにする方法の一つだそうです。
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