『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編293日目
先日は職場へ向かう東京行きの新幹線が結構混んでいたので、何があったのかと思えば、国公立大2次試験の前期日程が今日から始まったそうです。今年はコロナの影響で集中して勉強できる環境ではなかった上、10日前には震度6強の地震が起こるなど、とんでもない逆風の中、試験を受けている受験生がいます。そんな受験生たちが存分に実力を発揮し、それぞれが満願成就を果たせるよう祈っています。
さて、今日お勧めする本は、少し狂気じみていながらも、様々な賞を受賞したミステリー短編集です。
本書は、表題作「満願」の他に「夜警」「死人宿」、「柘榴」、「万灯」、「関守」の全六篇からなるミステリー短編集です。
それぞれに、冷静な語り手と狂気を帯びた犯罪者が登場し、このギャップが作品全体を通したトーンを形成し、なんとも薄暗い作品世界が伝わってきます。
作品一つ一つの概要を説明したいところもあるのですが、ネタバレになると、作品の魅力が半減してしまうかもしれないので、ほどほどにしておきます。
まず、表題作「満願」では、語り手の藤井弁護士と殺人の罪で服役を終えた鵜川妙子の話。学生時代に妙子の家に下宿していた藤井は、その縁から妙子が犯した殺人死体遺棄の事件の弁護を担当する。しかし、有利と考えていた控訴審を間際で取り消し刑に服した妙子の判断に疑問点を抱いていた藤井は、出所した妙子が挨拶に訪れる連絡を受け、事件を回想する中で学生当時の思い出から、事件の重大な核心に気がつく。
また、「夜警」では、事件当時交番長だった語り手柳岡とその部下で殉職した新人警官川藤の話。小心者で小狡い川藤は警官に向かないと感じていた柳岡は、川藤の殉職した事件について、川藤の実兄に語り、兄から重要な証言を得ます。そうして、その事件を考え直した時、柳岡は事件に隠された重大な事実に気がつきます。
他の4篇も、それぞれ過去に起こった出来事を思い返す形で真相が知らされるという構成になっており、その真相が少し狂気じみていて怖いです。
ミステリーが好きだけど本書は未読という方は、ぜひご一読下さい。
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