2021年2月1日月曜日

田村 秀 暴走する地方自治 (ちくま新書)


『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編269日目

 新型コロナの緊急事態宣言が出されてから、もうすぐ一か月が経とうとしている中、解除に向けての綱引きが続いているようです。現在の状況は実行再生産数は0.77と感染拡大が収まって来ているように見えます。緊急事態宣言の効果検証も行われているそうです。マスコミ受けを狙った知事のパフォーマンスになりがちですが、しっかり効果を検証して、第四波、第五波に備えていって欲しいと思います。

 さて、今日お勧めする本は、研究者から見た地方行政と改革派首長の政策を批判する本です。

 本書の主旨は、住民に身近な地方自治は地道な政策が大事、改革派首長がマスコミに取り上げられて、大衆受けする政治はやがて財政的な支えを失い国を滅ぼすことになるよって事だと思います。

 著者は 新潟大学で教授を務めていてこともあり、新潟県に縁のある行政学者です。

 本書は、10年前に書かれている事から、既に廃案になった大阪都構想と、そこから派生する、中京都、新潟州構想などを痛烈に批判しています。各地で改革派首長が求められているのは、国政の行き詰まり感が根底にあるとの事。そして、改革派首長の共通項として、既存の抵抗勢力を明確にし、危機感を煽ってマスコミ受け良く取り上げられる事を指摘する。このような大衆受けする政治が地方と国を滅ぼすと警鐘を鳴らしています。

 少し読みづらいところもありましたが、我が意を得たりと思う箇所が多いと感じました。特に「不易流行」(変えない事も、変える事も同じ様に大事)という言葉は全く同感です。本書の指摘の通り、本来、改革は手段であり目的では無いはずだと思います。目的とすべきはより良い住民サービスのはずなのですが、ポピュリズムの中で、最近は改革が目的化していると思います。

 地域主権を唱える首長と、それを支持する有権者の期待する事は、必ずしも一致していないかもしれないところを、丁寧に説明してくれる良書だと思います。ぜひご一読ください。



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