『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編ラスト64日
NHKで、WHOのテドロス事務局長が、新型コロナウイルスのワクチンの知的財産権の保護を一時的に停止すべきと主張したとのニュースを見て、自分の新型コロナに対する認識を改める必要を感じました。これまで新型コロナはインフルエンザみたいなヤバい風邪くらいに感じていました。しかし、これは日本が高度な医療技術と行き届いた医療インフラ、キチンと自粛に応じる従順な国民性に恵まれて来た結果によるイメージでした。実際日本だけで見れば、一人当たり感染者数や死者数がかなり抑え込まれており、個人的には緊急事態宣言なんて全く意味不明に感じています。しかし、世界に目を向けるとこの病気で亡くなる人は後を立たず、すでに死者数は250万人を超えています。早く終息することを祈っています。
さて、今日お勧めする本は、十万人を超える市民を抱える都市に感染症が発生し、その災禍との戦いを強いられる市民を描く小説です。
舞台はフランス領アルジェリアの都市オラン。主人公は医師リウー。主な登場人物に、旅行者でありながらペストで苦しむ市民のためボランティアで働くタルー、小説家を夢見る市役所の臨時職員のおじさんグラン、犯罪者でペストのどさくさに紛れ逃亡中のコタール、仕事で滞在中の新聞記者でパリの恋人の元に帰りたい一心のランベール。
物語は4月に鼠の大量死が発生し、謎の熱病が流行り死者が増えたことでペストの可能性にリウーが気が付きます。その後も見えない敵に襲われるように死者が増え、ペストの感染拡大防止のためオランのロックダウンが決定されます。
登場人物は否応なくこの災厄により、これまでの日常を失い、患者の看病などペストとの戦いに巻き込まれて行きます。そして、ペストとの戦いの疲れと、ロックダウンの閉塞感により、リウーを含め登場人物たちは限界まで疲弊して行きます。ようやく、ペストに対する血清の製作に成功するかというところで、突然状況は改善して、ペストは沈静化して行きます。
新型コロナの感染拡大による今の状況が、本書で語られる状況に似ていると話題で、本書もかなりブームになっているようです。確かに、当初ペストの脅威に向き合えず、手を打とうとしない県知事の姿や、ロックダウンにより観光をはじめとする経済がダメージを受けていくところなどは、現在と酷似しています。
しかし、本書のテーマは、オランという一都市がペストの災難に遭うという不条理に、巻き込まれる様々な人物を描くことであり、そこから逃げ出そうとするランベールや、そこに居心地良く暮らすコタールなどが存在しているのです。そこは決して今の新型コロナの状況とは違う話なので、なんの参考にもなりません。
しかし、この災禍に立ち向かう人々の姿には今に通じる人間の強さや崇高さを感じました。若干言葉遣いが古臭く読みづらい本だと感じましたが、是非ご一読ください。
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