『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編ラスト41日
電車通勤も4月で12年目に突入です。その間に変わったことと言えば、漫画雑誌を読んでいる人がほぼ絶滅したこと。10年前は、少数ですがまだいましたが、最近の新潟近辺では絶滅危惧種ですね。活字派はまだ生き残っていますが、ほとんどの乗客はスマホです。それもゲームが多いようです。昔、ゲームは暇つぶしのアイテムだったように思うのですが、今では、アイデンティティとか、人生の一部となっている人がかなりの数いそうです。
さて、今日お勧めする本は、本を読むことが許されない世界を描いSF小説です。
本書の最大の魅力は、世界の大半の人が本を読まなくなった世界を予見し、その世界を便利だけど非文明的に皮肉って描いているところです。
主人公はモンターグ。彼は、その世界で禁じられている本を焼き払う焚書官という仕事をしています。ホースから水ではなく石油を撒き、本に火をつけるという、現実世界の消防士の逆をいく職業です。そんな作業が可能となったのも、建物が燃えない建築物が普及したことによるようです。作中で、登場人物同士で、昔は火を消す消防士がいたという話を伝説のように会話する様子が非常におもしろかったです。
モンターグの妻ミルドレッドを始め、一般の人達は、四六時中ヘッドホンを付けて、ラジオのようなものを聴いていたり、部屋の四方の壁がテレビのテレビ室でテレビ電話のように話していたりと、情報の量は現代社会よりも多いようですが、どうも内容が薄く、あまり文化的には思えない様に描かれています。そのミルドレッドは睡眠薬の飲み過ぎて、医者を呼ぶような事態も起こります。そんな家庭の事情もあり、モンターグは禁じられているはずの本を手に入れ、本が伝える活字の中の世界にのめり込んでいき、ついには異端者として追われる側になってしまうのです。モンターグの命がけの逃走が始まります。
本書を読んだのですが、詩的描写や比喩、引用が多く、ちょっと私には難しい小説でした。しかし、60年前に書かれた小説とは思えないほどに現代社会を予見していて面白いんです。
本を読むことは禁じられ、見つかれば焼かれ、ラジオやテレビで流される大量の情報により人々が考える力を失ってしまった本作の世界。曰く、情報がひっきりなしに入ってくる時代には、その情報にとらわれず、自身で考える閑暇を持つことが大事とのことです。これは、スマホや携帯を所構わずいじってばかりいて本を読まない今の私たちを予見しているのか、さらに行き着く先を示しているのか?今の私たちは既に文明を失いかけているのかもしれないと恐怖を感じます。是非ご一読ください。
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