2021年3月26日金曜日

東野 圭吾 さまよう刃 (角川文庫)


 『7日間ブックカバーチャレンジ』番外編ラスト44日

 来年の4月から民法改正により、成人年齢が18歳に引き下げられます。では、少年法の取り扱いはどうなるかというと、同じく4月から少年法が改正されて、18歳、19歳は「特定少年」と言う新しいカテゴリーになり、相変わらず少年法の対象となるそうです。しかし、検察に逆送致される案件が、強盗や強制性交、放火など、法定刑の下限が1年以上の罪が追加されており、さらに起訴されると実名報道も可となることから、実質的な厳罰化という改正内容となります。まあ、法改正があってもなくても、少年犯罪が減ってくれると良いのですが。

 さて、今日お勧めする本は、少年法もそうですが、そもそも法律は何の為にあるのかを問いかける、かなり辛い小説です。

 主人公は長峰重樹。一人娘の娘の絵摩は、友達と花火を見に行った帰りに、未成年の不良達にさらわれ、殺されてしまいます。長峰は、謎の密告電話を受け、犯人の少年たちが自分の娘に犯した鬼畜な行いを知り、遭遇した犯人の一人を殺し、もう一人の犯人であるスガノカイジに復讐すべく身を潜めます。

 長峰は、腕っぷしが強かったり、暴力的な人間ではありませんが、被害者やその遺族をないがしろにした裁判制度では、娘の無念は晴らせないと考え、自分が復讐するしかないと考えるに至ったのです。

 いくら一人娘を失った遺族とはいえ、犯人の一人を殺した長峰は、自分自身が殺人事件の容疑者として警察に追われる身となります。その長峰を捜索する警察も、絵摩を襲ったスガノカイジたちのひどい行いを知るだけに、口には出せませんが、長峰に復讐を遂げさせたいと思う捜査員も出てきます。一方、スガノカイジは絵摩の事件の犯人として警察にも追われています。長峰の復讐はどのような結末を迎えるのか?

 少年法では、少年が犯す犯罪は過ちではあるが罪ではないというスタンスのようです。だから罰するのではなく、更生させることを目的としています。じゃあその被害者はどうするの?と問いかけるのが本作のテーマだと思います。私は、本書を通じて読者を正義と悪の迷路に放り込んでしまうことが、作者の意図のように感じて仕方がありません。私ももう少しその迷路をさまよいそうです。是非ご一読ください。

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